スリラーバーク編inウタPart3

スリラーバーク編inウタPart3


フランキーとロビンが空から降ってきたブルックによりタラランの脅威から救われていた最中、攫われたルフィは何とか脱出しようと藻掻き既に意識を失って倒れていたウタを起こそうとしたが敵わず、集まった三怪人のアブサロム・ペローナ・ホグバックと影の支配者ゲッコー・モリアの手によって影を切り取られウタと同様に意識を失ってしまう。

そこに至るまでのやり取りの中でモリアは随分と名を連ねて返せと叫んだルフィに対して捕らえたのはまだお前で4人目だと言う。"海賊狩りのゾロ"に"海賊歌姫ウタ"と手配書にはなかった金髪の男。ルフィ達の中で金髪の男はサンジしかいないため、屋敷の中で消えた後に今のルフィ達のように影を切り取られたのだろう。

そして今、既にその場にいないゾロやサンジと同じようにルフィとウタが船へ捨てられようとしたその時、彼らを捕らえた張本人達であるスパイダーマウスが報告を入れる。


「つい先程"スパイダーモンキー"タララン隊長がやられました!!」

「やられた?…何も影を抜かれたわけでもあるまい…」

「影を抜かれたんですーっ!!!」

「アブサロム…そういうマネができる男はアイツしか…!!」


ホグバックの想像したあの男とは剣侠"鼻唄"…ブルックのことである。また厄介の種が転がり込んできたとアブサロム達は嘆くがお前らが何とかしろモリアは部下たちに丸投げする。

だがその後、現状を聞いたアブサロムは、ならば充分足止めできると直接対処しようとはしなかった。


「問題が起きたらまた報告しろ。さっさと麦わら達を捨てて来い!!」

「了解!!」


エッホエッホと運ばれていくルフィとウタを見送ったアブサロムはモリア達と共に冷凍室へと向かうがその道中深いため息をつく。


「ハァ…勿体ねェ。あんなかわい子ちゃんまで送り返しちまうとは……おまけに歌姫とか呼ばれてんだろう?おいらの結婚式の余興で歌わせてェ……」

「キシシシ!!気持ちはわかるがアブサロム…あの女、あのナリで初頭手配額が1億だぞ!?何を抱えてるかわかったもんじゃねェ…!!そういうのはさっさと海に流しちまうのが一番さ。それに"特別ゾンビ"の次にはそいつのゾンビが出来上がる!!それで我慢しとけ」

「ああモリア様!!その事で一つ相談が……」

「どうしたホグバック?」

「ええ、実はですね………」



​───────​───────​───────​───────



冷凍室にて"特別ゾンビ"である魔人・オーズがルフィの影を入れられ復活していた時、ナミをアブサロムに連れ去られたウソップとチョッパーはフランキー、ロビンと合流しサニー号に連行された筈のルフィら4人を探し始める。

ゾンビに荒らされた船内をくまなく探しているとウソップがいた!!と叫ぶ。


「ダイニングにいた、4人共だ!!完全にゾンビ達にデコレートされてるが」

「……無残ね」


椅子に逆方向に座らされ、顔は洗濯バサミで伸ばされ鼻には割り箸を突っ込まれ、髪はリボンをくくりつけられ酷い有様だった。てめェら起きろ!とフランキーが殴り飛ばすも起きず、バズーカで起こそうとするがウソップがそれを制止し、大きく息を吸う。


「美女の剣豪が肉とパンケーキ持ってやって来たぞ!!!」


「美女!!?」

「肉!!?」

「剣豪ォ!!?」

「パンケーキ…!!?」


「ダメだコイツら!!」


……理由はどうあれ4人は2日は意識を失うといわれる影切り抜きから復活し、ウソップ達から現状を聞かされる。


「…イヤ…でも夢じゃねェ。影がなくなってる………!!!…妙な感じだ…」

「おい大変だ!!!一大事だ!!!」

「食べ物がどこにもないよ!!!」

「あれだけ大量に積んだ食糧がカラだ。保存食を残して全部持ってかれてるぞ」

「チーズや干パンじゃ食い足りねーっ!!!肉ーーー!!!」

「パンケーキーー!!!」


自分達の置かれた状況、そしてあっさりと連れ去られ影を奪われたことに4人はガックリと気を落としていた。


「まったく面目ねェ…油断しすぎてた…!!」

「海賊弁当も失くしちまった〜〜…チーズじゃダメだチーズじゃ」

「干パンなんて美味しくないよ〜〜…ひもじいよォ…」

「​───ところでナミさんがいねェ様だが………?」


ナミがいない事に気付いたサンジがそう聞くとウソップから連れ去られたと言われ、激昂するサンジであったがウソップからとにかく話を聞いてくれとなだめられる。


「いいか!これからおれ達が取り返さなきゃならねェもんは大きく分けて二つだ!!」

「"めし"!!"ナミ"!!あと"影"もだろ?3つだぞ」

「おお…意外なもんがランクインしてた…ひとまず"ナミ"と"影"の話をさせてくれ」


ウソップの口からナミが攫われるに至った顛末と影とゾンビの関係性、弱点を聞かされると、それに最も強く反応したのはサンジであった。


「んな……け……け…!!!結婚だとォ〜〜〜!!!フザけんなァ〜!!!クソ許さ〜ん!!!」

「ナミと結婚て勇気あんなァ……そんでおれが巨人?ゾンビってそうやってできるのか」

「…だからここのゾンビ達ってどこか心と体がチグハグで変な感じだったんだ」

「じゃルフィとあのコックのゾンビは確認済みってわけだな?ウソップ」


ゾロがそう聞くとそれまで自分達が相対していたのが、かの王下七武海の一人だと知ったウソップとチョッパーはガタガタと震えだす。

取られた影の行方という話の中でルフィもゾロのゾンビを見たという話をしだす。


「ゲタはいてたからお前じゃねェとすぐわかったけどな」

「あ…あれ、私のは?私のゾンビ見た人はいないの?」


自分の影の行方という大至急解決せねばならない問題にウタが疑問を投げかけるとチョッパーがうーんと答える。


「ウタの影は多分ルフィとほぼ同時に取られてるからおれ達が脱出する頃にはまだゾンビになってなかったんじゃねェかな」

「そんなァ〜……」

「​────まァとにかく、その3人のゾンビとウタの影が入ったであろうゾンビを探し出して口の中に塩を押し込めば影は返ってくんだな?しかしそんな弱点までよく見つけたな」

「弱点にしろお前らをまず救出に来た事にしろ、助言をくれたのはあのガイコツ野郎だ」

「えーっ!?ブルックに会ったのか!?」


ルフィが興奮気味に会ったのかと聞くとフランキーは会ってヤボな質問しちまったと重々しく言葉を紡ぐ。話せばなかなか骨がある男だと。

フランキーがブルックに問うたのはなぜそんな姿になってまで"仲間との約束"を果たそうとするのかを。それにブルックは答える。ある場所に置き去りにした仲間へ「必ず帰る」と約束した事。たとえそれから50年経とうとも待っているかもしれない彼に、約束の岬で再会を誓った仲間"ラブーン"に自分が勝手に見切りをつけるわけにはいかないと。死んでごめんじゃないないでしょうにと。そして…


フランキーからブルックの約束を聞いた一行の中で、東の海から偉大なる航路へ入ってきたルフィやウタ達は唖然としていた。


「ラブーン」

「………」

「あいつだ…」

「まだ…いたんだ…」

「ホントかよ…」


あいつとは何かと偉大なる航路出身のチョッパーが聞くとそのクジラをおれ達知ってんだとルフィが答える。偉大なる航路の入口にある"双子岬"にいる「必ず戻る」と約束した仲間の海賊達を50年待ち続けているクソでかいクジラの話を。

互いに50年も約束を守り続けた男と男の話を聞いたフランキーはヴォオオ〜!!!と号泣しだす。


「骨も鯨も大好きだチキショー!!!」

「うるせェよっ!!!」


そんなフランキーとは対照的にルフィは歓喜に震えていた。


「うは〜っ!!ぞくぞくしてきた!!あいつは音楽家で!!喋るガイコツで!!アフロで!!ヨホホで!!ラブーンの仲間だったんだ!!!おれはあいつを引きずってでもこの船に乗せるぞ!!仲間にする!!!文句あるかお前ら!!!」

「異議なしっ!!みんなもそうだよね!!?」

「ふふっ……あったら意見が変わるのかしら?」

「会わせてやりてェなァあいつ!!ラブーンに!!!」

「賛成だチキショーッ!!!」

「おれもだコンニャローーッ!!!おれもうガイコツ恐くねェっ!!!」

「そんなわかりきった事より!!ナミさんの結婚阻止だ!!!おれァ!!!」


皆が賛成だ結婚阻止だと騒ぐ中、1人先に船から降りたゾロがスタスタとスリラーバークの方へと歩いていき、どこへ行くんだと聞くとフッ…と笑いながら返答する。


「さっさと乗り込むぞ。奪い返す影が一つ増えたんだろ?」

「しししし!!よっしゃァ!!!野郎共っ!!!反撃の準備をしろ!!!スリラーバークを吹き飛ばすぞォーー!!!」

「ゆけ!!」

「おめェもだアホ!!」


5つの影とナミの奪還、そしてブルックを仲間に迎え入れるために一行は反撃の狼煙を上げる。奪われたものを取り返し新たなる仲間を手に入れるための戦いが今始まる。



​───────​───────​───────​───────



さて、影やナミ達を取り返すのいいとしてもゾロ達の影の入ったゾンビを探し出すのは中々骨が折れる作業な上にルフィのゾンビに至っては普通の巨人の2倍ほどはある魔人であり、どう取り返そうかと皆が思案しているとルフィがゾンビは探さなくても大ケガした年寄りの爺さんが言っていたようにモリアをぶっ飛ばせばいいだろと核心をつく。

おまけに今来た階段を登っていけばモリアの元へ辿り着けるとも。


「とにかくまーおれはモリアをぶっ飛ばしに行くからよ!!影はそれで全部返って来るから、サンジ!お前ナミの事頼むぞ」

「当ったり前じゃアア!!!透明人間だか陶芸名人だか知らねェが霧の彼方へ蹴り飛ばしてやらァ!!!結婚なんざさせるかァ〜〜〜!!!」


ナミ奪還に誰よりも情熱を注ぐサンジへあの透明人間が風呂場でナミの裸をじっくり見てたのを言い忘れたとウソップが伝えるとサンジはより燃え上がる。まるで何かに変身しそうなほどに。

そんな中、目標がいくつかに分散しているためチーム分けをすることになった一行。目の前で連れ去られた責任を感じているウソップはサンジと共にナミの奪還へ。自分自身の影が入った伝説の侍とやらと戦うブルックの身を案じたフランキーと侍に興味をそそられるゾロがブルック救出へ。ウタ、チョッパー、ロビンの3人はルフィと共にモリア討伐へ赴くことになる。

組み分けが大方決まったところへウソップがお前ら一袋ずつ持ってけと特性"ゾンビ昇天塩玉"の入った小袋を全員へ投げ渡すと、一言いっておくがと忠告する。


「この海がいくら深い霧に包まれてるとはいえ日の光が全く射さねェって保証はねェんだ!!今は夜中だから安全なだけさ!!​───つまり日の昇る"夜明け"が最悪のタイムリミットだと思え!!」


"夜明け"までのタイムリミットと聞いたルフィは確かに夜明けまでメシが食えないのは最悪だと憤り、モリアへ後悔させてやるぞと意気込む。


「食糧は倍にして返して貰うぞ!!!夜明けまでに!!!」

「そうじゃなくて"影"奪回のリミットの話をしたんだよ!!!」

「んナミさ〜〜〜〜ん!!!」

「いくか」

『おお!!!』

「勝手にしろ!!!」


なんともまとまりのない意気込みではあったが目指す先は同じ。それぞれの任務を果たすために一行は再びスリラーバークへと足を踏み入れ、立ちはだかるゾンビ達を蹴散らしながら前進していく。

一方その頃、麦わらの一味による進撃の報告を受けたモリア達は大半の将軍ゾンビを参列させ結婚式を開いているアブサロムに呆れながらも、ゴーストプリンセス・ペローナの提案により彼女の放つネガティブゴーストでの制圧で対処が決まっていた。


「だ……大丈夫そうですモリア様」

「あァ…そうなのか。つまらねェな…」

「そんなまた…どうせ何もする気ねェからって」

「おれは少しここにいる。オーズと遊びてェからな」

「​───では一つ頼みがあります。アブサロムのバカがあの通りなので2体程ゾンビの指揮権を私に…!!あァそれと例の件も……」


影の支配者と天才外科医が何か悪巧みを講じる中、ルフィ達一行は二手に別れ爆進していた。モリア達のいる冷凍室に繋がるダンスホールへ登るのはルフィ・ウタ・ウソップ・サンジ・チョッパー・ロビンの6人。


「モリアはどこだァ!!!メシを返せェ〜!!!」

「私の命の源!!!パンケーキとその他ホイップ諸々返せェ!!!」

「ナミさんの風呂を覗いたクソ野郎はどいつだ、出て来〜〜い!!!」

「とりあえず塩いらねェな。心からの怒りに満ちてる」

「影の事どうでもいいのかな」


そして下の橋、ブルックが戦闘している屋敷へ繋がるこの道を駆け抜けるのはゾロ・フランキーの2人。


「​───こんな貧弱野郎共に一度は捕まったかと思うと、自分にムカッ腹が立つぜ……!!!」

「そんなお前を解放してやったおれを慕うのなら"アニキ"と呼んでもいいんだぜ」

「呼ぶか!!!」


いずれも将軍ゾンビ以外の軟弱な体と影を持つゾンビ達では手に負えなかった。だがその進撃を止める者が現れる。ペローナの放ったネガティブゴースト達だ。


「おい!!ルフィ!!ウタ!!サンジ!!」

「もーだめだ生まれ変われるならボウフラになりたい…」

「私はハトになりたい…そのまま風に吹かれる枯葉のように消えてなくなりたい…」

「おれなんかマユゲ巻きすぎて死ねばいい…」

「よォし!!!捕まえたぞ!!!」


触れると心を折られるゴースト達により快進撃を続けていた3人があっさりとゾンビ達に捕まってしまう。解決策のないゴースト達に触れられないようウソップ達はそれぞれネガティブになったルフィ達3人を抱えゴースト達の魔の手から逃走を図る。するとそこへ…


メインマストに登り絶景を楽しんだ後に飛び降りたオーズがダンスホールへと繋がる階段を崩落させてしまった。それにサンジを抱え走っていたウソップが巻き込まれ、2人はゾロ・フランキーのいる下の橋へと崩落した瓦礫やゾンビ諸共落下してしまう。

こうして6人と2人で別れて行動していた一行は唐突なアクシデントに巻き込まれ、4人ずつに別れて目的地へ進むことになっていく。


「ウソップとサンジは下に落ちちゃったけど置いてくのか!!?」

「おう!!大丈夫だあいつらは!!とにかくおれ達はモリアが移動しねェうちにあのデカらっきょ見つけてぶっ飛ばすんだ!!!」


そう言われたチョッパーは分かったと答え、通路の中に大きく存在するダンスホールへの入口を指し、その奥にある冷凍室が最後にモリアを見た場所だと示す。

意を決してダンスホールへ乗り込んだ4人を出迎えたのはホグバックとそれに仕えるシンドリーだった。


「うおっ!!き…貴様ら!!!ペローナにやられなかったのか!?」

「ホグバック…!!!」

「!?何だ!?このトナカイは!!」

「​───あれがDr.ホグバック………!!」

「隣にいるのはゾンビかな……綺麗な格好してるけど」


モリアと一緒にいた奴だとぶんぶん腕を振り回してぶっ飛ばそうとするルフィを、敵意を向けられたホグバックだけでなくチョッパーが待ってと止める。


「​───こいつはおれに任せてくれないか。奥に扉があるだろ!?…アレが冷凍室だ!!先に行って!!!」

「よしわかった!!」

「ぬう、いきなりモリア様に会おうなど不躾な!!シンドリーちゃん!!やってしまえ!!」

「はい」


モリアのいる冷凍室へ行こうとするルフィを止めるためにシンドリーは懐から皿を………ではなく、背中にぶら下げている豪華な装飾を施された一本の槍を手に侵入者へと襲いかかる。


「モリア様の所へは行かせない!!」

「うお!!やんのか!?」

「待ってルフィ!!」


シンドリーの放った鋭い一突きはウタの持つ音響槍により防がれる。なおも追撃を仕掛けようとする邪魔者を今度はロビンが自身の能力である"ハナハナの実"の力で腕を咲かせシンドリーを拘束する。


「お先にどうぞ、ルフィ」

「すぐ追いつくからあんたはモリアの所へ!!」

「おお、ありがとうウタ!!ロビン!!」

「ぬっ!!?どうしたシンドリーちゃん!!おのれ待て!!!麦わらのルフィ!!!」

「ホグバック!!!」


先へ行かせた船長を追いかけようとするホグバックをチョッパーが呼び止める。お前には失望した、お前を医者とは認めないと。

それに対してホグバックはフォスフォスと余裕綽々といった雰囲気で笑って返す。ここで会ったからには影を戴き二度とは逃がさねェと。


「いや何なら……この場で殺して…"没人形"にしてやろうか?コイツらによってな…」

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