スリラーバーク同行IF導入

スリラーバーク同行IF導入



 青い波間に揺られる二つの樽。展望室の窓辺で居眠りをしていたゾロが何気なく海を見下ろしたとき、そんなものが船の近くに漂っていた。まさかこれらが新たな出会いと奇怪な島に巡り逢う切っ掛けになるとは、この時は誰も知らなかった。


 “水の都”ウォーターセブンを出航した麦わらの一味。彼らは新たに仲間となったフランキーとガレーラカンパニーの船大工達によって造られた海賊船“サウザンドサニー号”を思うままに満喫していた。そんな時、不意に拡声器を通して『海に何か浮いてるぞ』と告げるゾロの声が響く。それぞれ海へ視線を向けると、それらしきものが浮いているのを発見した。

 引き揚げてみると、樽の片方は『海神御宝前』と書かれた旗が掲げられており、もう片方はそれよりも一回り小さく劣化が少ないように見えた。古びている方に書かれた“宝”の字にルフィやウソップ達は目を輝かせるが、ナミがすぐに“流し樽”と見抜いて酒や保存食が入っているだろうと当たりをつける。残念そうにするルフィだったが、今度は小ぶりな樽の方へ興味を移した。


「じゃあこっちの小せェ樽には何が入ってんだろうな?」

「昔話だと小さい方にはお宝が入ってて大きい方には化け物が入ってる……なんてパターンね」

「えっ♡お宝!?」

「ええ〜ッ!?じゃあデカい方は開けない方がいいのか!?」


 ロビンの言葉にお宝センサーを働かせたナミはキランと目を輝かせて小さな樽へ駆け寄り、反対にチョッパーは大きな樽のそばから一気に飛び退いた。


「へェ、化け物か……歯応えのある奴だといいんだが」

「お前は酒と化け物のどっちが入ってても喜びそうだな……」


 好戦的に口角を上げるゾロへ、ウソップはやや引き気味の視線を送る。ビビりな彼にとっては樽から化け物が飛び出てくるなどまっぴらごめんだった。最終的に二つの樽を同時に開けることに決まり、それぞれの蓋に手がかけられる。ガポッ、と音を立てて蓋が開いた瞬間だった。


「よし開いた……わっ!!!」

「何か飛んだ!!!」


 発射音とともに、大きな樽の内部から飛びだした何か。サニー号の上空に打ち上がったそれはある程度の高さまで到達すると、パァンと赤い光を散らして爆発した。どうやら酒ではなく発光弾が仕込まれていたらしい。

「ただのイタズラならいいけど……もしかして……この船はこれから誰かに狙われるかもしれない」

 ロビンが“罠”の可能性を口にする。先ほど発射された発光弾によって居場所を知った何者がサニー号へ狙いを定めたかもしれないということだ。

 緊張感が走る中、チョッパーは小さめな樽の蓋を開けかけたまま呆気に取られていた。ふと彼はもう一つの樽の存在を思い出して、恐る恐る中を確認してみる。すると、まん丸の目がさらにギョッと見開かれた。


「え……!!誰がしたんだこんなこと!」

「どうしたチョッパー!?」


 小さな樽の中を覗き込むチョッパーはひどく動揺しており、只事ではない様子にルフィが駆け寄ると予想外の答えが返ってきた。


「猫が入ってるんだ!かなり弱ってる!」

「……猫ォ!?」


 樽の底でぐったりと横たわる三毛猫は、覗き込んでくる人間たちに虚ろな目を向けていた。


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