ストロー

ストロー


>>55さんのハンカチネタが素敵すぎてつい筆を取ってしまいました。問題があったら消します。

CP要素は無いと思いますが近〇相姦が癖のドフィ受け好きが書いていますので苦手な方はご自愛ください。



【ドフィ】

「またか、ロシー」

ひらりと見せられた紙切れにため息をつく。ハンカチはドジのせいか泥だらけで僅かに血液も付着しているし、端はタバコの灰が落ちたのか煤けている。

どうしたらこんな有様になるのだと手渡されたそれに辟易とした。それが顔に出ていたのだろう。

【ダメか、分かった】

「!いや、もう、駄目じゃねえから…ほら、寄越せよ」

申し訳なさそうにする弟をそれ以上責められない。元々要らないと言うのを聞かずに押し付けて始まった習慣だ。俺はすぐダメにしちまうから要らねえよ、とか言い訳にすればいいのに。全く律儀な弟だ。

「これくらいならなんとかなるさ…フッフッフ、それにしてもロシナンテ、『兄』を気遣うなんて偉いな」

ピク、と一瞬表情が引き攣ったのを俺は見逃さなかった。もういい加減に慣れてくれないだろうか。こういうのは分かる奴には分かってしまう。仲の良い兄弟分として、これからも健全に組織運営をしていきたいのだ。

まあ、そこを詰めるのはまた今度でも良い。引き出しからストックしておいたハンカチを差し出し、今日は休むように伝える。

「明日の分だ。ここのはロシナンテのRにして、ここが翼をイメージしてみたんだ。色は赤。お前の瞳の色だな」

【ありがとう、ドフィ】

頬に親愛のキスが落とされて、俺も同じように返してやる。黒く大きい背中がドアの向こうに消えるのを見送って、おやすみ、と呟いた。

さて、朝まで柔らかだった綿素材の生地は泥と血でごわついており、汚れを落とすのは手強そうだ。バスルームに向かうと、洗濯用の石鹸を取り出す。ほのかにゼラニウムの香りがするそれは洗浄力も十分なお気に入り。

ぬるま湯を桶に溜めてハンカチを浸し、揺らすように洗うのを二三度繰り返せば本来の白さを取り戻した。おつるに教えて貰った方法が一番綺麗になるしやりやすい。

よくよく水気を絞りピンとシワを伸ばして干したら、どの程度の傷みがあるか検分する。端っこの焦げ付いた箇所は少し繕えば、なんて考えてから所帯染みたものだと自分の思考回路に苦笑する。

乾かしている合間に新品のハンカチを刺繍枠に嵌め、深紅の糸を針に通す。今日は何をモチーフにしようか。たしか前渡したものは全焼していたはずだからハートにしようか。

幼い頃に教わった刺繍を再開しようと思えるようになったのはロシーがファミリーになってしばらく経った後だ。

「刺繍には人の思いが込められているアマス」

そう母が言っていたのを思い出したからだ。

久々に手に取った針の先は少し怖かったけど、ひと針ひと針縫い進めるうちにロシーを思う気持ちが強まった。

人間に酷いことをされて、声を無くす程繊細なロシナンテ。天上にいた頃は何度か送っては喜んでくれていたから懐かしんでくれるだろうかと渡したハンカチにはすごく複雑そうな顔をされた。それでも拒否はしない弟の優しさに甘え続けている。海賊に引き入れておいて何をと言われても仕方ない、お前にだけでも幸いがあればと願う一方的な俺の心を。

これ以上悪いことが無いように。あのような恐ろしいことにもう巻き込まれませんように。お前に良いことがあるように。

恥知らずな俺の心は知ってくれるな。どうか、受け取ってくれ。これから先もお前のために祈らせてくれ。それだけで良いから。



イメージソング:aiko「ストロー」

赤のゼラニウムの花言葉:「保護」

コットンツリーの花言葉:「母の愛、富と幸福の約束」

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