ジャンゴとモブ怪異?
「海兵さん、海兵さんはどうして海兵さんになったの?」
とある基地に近い街中では、そうやって問いかけてくる子供がいる。
誰かは正義のためだと答えたし、誰かは君みたいな小さい子を守るためだと答えた。それからみんな出港後にハテ、と首を傾げることになる。
その問いかけをしてくる時以外、誰もその子供を見た覚えがないのだ。
――と、同僚たちに聞かされた怪談じみた話をジャンゴは思い出した。
「ねぇねぇ、教えてよ」
服の裾を引っ張る子供の顔が見えない。
「『海賊』さん、海賊さんはどうして海兵さんになったの?」
「……そうだな。じゃあおれの愛と涙と友情とダンスの物語をしてやろう!」
大きな唇をにっかりと歪ませると、顔の見えない子供が
『そうじゃなくって』と言いたげな表情をしたように見えた。
その後、ジャンゴは無事に船に戻ったが、子供がどうなったのかは誰も知らない。
何しろジャンゴ自身も覚えて置かないほうがいいな、と記憶を消したらしいので。