ジェラシーめらめらな伊織とビビりまくる地右衛門
長文失礼
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「中に出すなっていったろぉがぁ!!」
怒声と共に飛んできた地右衛門の足に鳩尾を蹴られ、伊織は小さく呻いた。
「……ッ、すまない、つい」
「てめぇ…つい、じゃねぇよ!こっちの身にもなってみやがれ!」
つい先ほどまで己の下に組敷かれ、与えられる快感に震え泣いていたのが嘘のように、地右衛門は剣呑な目で睨み付けてくる。
気を遣り意識を飛ばしていたが、目覚めたとたんこれだ。もはや別人ではないかと思う豹変ぶりに、苦笑いが出る。
「くそ…中に出されたら後始末は面倒だし、腹を壊すんだよ…」
「すまない、具合が善すぎてな」
「は?!…そういう事を言うな!殺すぞ!」
言葉は物騒だが耳朶まで真っ赤に染めて、その初さがかわいらしい。伊織と地右衛門が肌を合わせるようになって暫く経つが、いつまでたってもまぐわいに恥じらう姿は変わらない。
気だるげに身支度を整える姿をぼんやりと眺めていて、ふと伊織は違和感を覚えた。
「地右衛門」
「…なんだよ」
「おまえ、腹を下したことがあるのか」
「は?」
地右衛門の肩を掴み、その体を再び敷布団へ押し戻す。力の加減ができず、地右衛門は体を強く打ち付け呻いていたが、伊織は構っていられなかった。
「誰かの子種を、その腹の中に出させたことがあるのか」
「な……」
地右衛門の顔が強ばる。
答えなど言わずものがなだと、急速に醒めていく頭で理解する。それと同時に、怒りとは違う衝動が腹の底から這い出てきた。
地右衛門の瞳が怯えて揺らめく。
「俺には中に出すなと煩いものだが、他の男には許しているのだな」
「……っ…違う、そんなこと…」
「肌を合わせた者も、俺だけではないのだろう」
地右衛門の腰に跨がり、空いた両手で衣服を乱していく。
「やめろ!」
伊織の腕を抑え制止ようとするが、腕力なら伊織の方が上だ。振り払いそのまま身体をまさぐっていく。
「思い返せばまぐわいは拙いものだが、準備と後始末は手慣れていたものな…すっかり騙された」
「ちがう、違うんだ…」
「出自は南の方だったか。江戸までの路銀稼ぎに身体を使ったのか。それとも誰かに囲われていたのか」
伊織から目をそらし、地右衛門は唇を噛みしめていた。もう弁解する気も抵抗する気も失せたのか、すっかり大人しくなった体から一度離れ、伊織は自分の帯をほどく。
すでに熱と硬さを取り戻した自身を地右衛門の後孔にあてがい、一息に貫いた。
くぐもった悲鳴が漏れる。
「おまえの事はいまだなにひとつ理解できないが…そもそも知らないことが多いものな。解らないのも道理だ。」
伊織の中を蠢く黒い感情のまま、乱暴に地右衛門を揺さぶった。せめてもの抵抗なのか、指を噛み必死で声を抑える姿に嗜虐心が刺激される。
「いつか寝物語に聞かせてくれないか、地右衛門…おまえが、いつ、誰に、どんなふうに抱かれてきたか」
地右衛門が自ら望んで体を開いたことなど一度もないだろうと、伊織も感じてはいる。付き合いは短いが、そういう男ではないと解っている。
それでも、傷つけるような言葉が止まらなかった。
「地右衛門」
腰を止め、地右衛門の顔を覗き込む。
涙に濡れた瞳に、伊織の顔が映りこんでいる。初めて目にする己の獰猛な姿に、笑いが込み上げてきた。
なるほど、これが。
「…嫉妬というものか」