シロコの夏休み 3日目・上
5時
シロコ「・・・ん・・・ふぅ・・」
起きてしまった。
頭がズキズキする。
シロコ「・・・ん・・・・ん・・・」
一体何を見ていたのだろうか。夢を見ていたことは確かだが、思い出せない。
まだみんなは寝ているので、トイレにでも行ったら二度寝しよう。
そう思い重い足取りで洗面所に向かう。
なんだったんだろう。
本当に何だったんだろう。
シロコ「・・・・あれ」
洗面所の電気をつけて、私は私の顔を見る。
涙が、頬を濡らしていた。
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
自問自答を繰り返すが答えは出てこない。
諦めて、二度寝することにした。
ん、こういうのは気にしたら負け。
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朝食を食べていると、外から雨音が
ノノミ「今日、天気悪いですね〜」
雨が降っている。
シロコ「・・・ん。日没まで雨って聞いた」
イヤリングを触りながら、スマホに書いてあったことをそのまま伝える。
セリカ「えぇ〜!!雨ぇ?!」
アヤネ「降らないアビドスがおかしいんですよ・・・」
確かに、アビドスでは雨が降ったことなんてほとんどなかった。いやゼロかもしれない。
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部屋に戻ってきた私たちは、改めて今日の行動を相談していた。
アヤネ「・・・昨日一昨日といろいろなところを回って疲れちゃいましたし、今日はお休みといきませんか?」
セリカ「・・・そうねぇ。雨も降ってるし、あんまり出る気にならないわ。濡れるのやだし」
やっぱりセリカは濡れるのが嫌いなのだろう。
あのリゾート地を開拓しに行った時もあまり海に入ろうとしなかったし、ここではこの嫌がりよう。ほとんど雨の降らないアビドスを選んで入学したことも説明がつく。
何はともかく、雨が降ってて、外に出れないなら・・・やることは1つ。
シロコ「ん、ゲームをしよう」
テレビの下の棚にあるゲーム機を引っ張り出す。
セリカ「そういえばまだ1本もやってないじゃない!よーし!やるわよ!」
ノノミ「ルームサービスも使いたいですね〜♤」
そういえば、まだスイートルームのルームサービスを堪能してなかった。
ぜひしなければ。
さて、私たちが最初にはじめたゲームは、『アンハッピー・シュガーライフ』だ。
セリカ「案砂糖ね。」
シロコ「セリカ、やる?」
コントローラーをセリカに握らせる。
セリカ「え、えぇでも私初めてよ??」
シロコ「ん、問題ない。私が手取り足取り教える」
ノノミ「そうですよ〜☆シロコちゃんこのゲームがとっても得意ですから!」
セリカはそ、そう・・というと、キャラを選択して始める。
アヤネ「あれ、セリカさんってまだあまりコンテンツが・・・」
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『キヴォトスに砂嵐が吹き荒れる。
誰もいなくなった、静かな方舟を、勇者は孤独に歩く。孤独に生まれた勇者は、孤独に死ぬのだろう。そこに在ったことすら、誰にも知られぬまま。 孤独の勇者END』
セリカ「・・・・バッドエンドじゃない!!」
このバッドエンドは戦争が長引き過ぎて双方がヘイロー破壊爆弾の応酬に発展し、最終的に何も残らなかった世界をアリスが歩むというなかなか寂しいエンドだ。
テキトーにぽちぽち押していただけではなかなか辿りつかない、最悪のエンドの1つなのだが・・・。
アヤネ「次、次私やりたいです!!」
ゲーム雑誌『ヒットガールズ』をよく愛読しているアヤネ。
彼女の選択キャラは・・・。美甘ネル。
ゲリラ戦に大きなバフが乗るが、特性『C&C』のせいで戦略的な動きはできない。それ故他力本願寺になりがちな、ギャンブラー向けキャラだ。堅実性◎のアヤネが選ぶとはこれまた意外。
ん、お手並み拝見。
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『あはははははっ!!そうだっそうだよな!もうかてるはずないもんなっ!あはっ!あははははは!!あははははは!!ぎゃははははははははは!!!ぎゃははははははははは!!!!あたしもっ””そっちについちゃっていいんだよなっ””!!あはっ””!!あはははははははははははははははっ!!!!! 00の笑殺END』
アヤネ「あ、あれ〜?」
セリカ「やっぱりバッドエンドじゃない!!」
ネルは確かにゲリラ戦に強いけど、逆に捕まるとほぼ1発アウト。脱走、救助イベントがあるのはなかなかいない。
ここまで来たらノノミのプレイも見たいので、私はノノミにもやらないかと提案する。
シロコ「・・・ノノミ、やる?」
ノノミ「私はいいです〜。こういうのはちょっと苦手で〜」
いつのまに届いていたブルーハワイジュースを飲みながら応答するノノミ。
ノノミ「でも、アリスちゃんプレイで『トゥルーエンド』があるってことは聞いたことがあるんですよね〜」
ん、高難易度プレイの予感。
これはプロゲーマー砂狼シロコの出番。
シロコ「まかせて」
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『アリス『ごめんなさい・・・アトラ・ハシースの出力的に、アリスを代償にしてやらなければ・・・。でも、アリスは死にません。モモイ達の思い出の中で、生き続けます・・・・・・』勇者は消えても、思い出は消えないEND』
セリカ「・・・・・・」
アヤネ「・・・・・・」
シロコ「・・・・・・」
ノノミ「・・・・・・」
これがトゥルーエンド?
思わず沈黙してしまう。トゥルーエンドとはもうちょっとこう・・・明るいものだと思っていた。
でも確かに、あれほどの砂を緑に変換するなら、アリスが代償にでもならないとストーリーの面白みがない。
それはそれでありなのだろうと割り切った。
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その後も末期ゲヘナのTormentや、調月リオ無双など、一通りやった。
セリカ「・・・なかなか濃いゲームね・・・。ゲーム開発部にこんなに予算があったなんて・・」
ん、これ半分くらいマコトの出資。
ノノミ「次はゲヘナカートでもやりましょうか〜」
でた。空崎ヒナが強過ぎてどう足掻いても捕まるクソゲー。
ゲーム初心者のセリカがギエピーするまであと3分。
30分後
セリカ「ギエピー!!!」
またヒナに捕まって砂糖漬けにされた。これで10回目くらいだ。
セリカはなんというか、初心者というより単純に下手なのか、とにかく珍プレーを連発している。
リモコンを回し過ぎて壁に激突したり、後ろに投げる妨害アイテムを前に投げて直撃してたり。
でも、今までのセリカと違い、バイトに追われていた日々よりはだいぶ充実しているだろう。青春は長い。これからどんどん楽しんでいってほしいと思う私なのだった。
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ルームサービスの昼ごはんはなかなか美味しい。
ハイネが部屋に持ってきてくれるとは思わなかったが。
食べながら雑談をしていると・・・・
アヤネ「そういえばシロコ先輩。メールは毎日確認してます?」
シロコ「ん、今はバカンスだからしてない」
アヤネ&セリカ「「ちょっとぉ!!」」
ん、ダブルツッコミ炸裂。K.O.
アヤネ「それは見るべきですよ!」
セリカ「もしかしたら重要なやつが来てるかもしれないじゃない!」
弁明のしようがない。
私はスマホをいじってメールを開く。
3人もそれを覗き込む。
あ、一件きてた。
ノノミ「あ、きてますね〜」
ほらーという目で見つめてくる後輩コンビ。
ん、しっかりとした後輩ができて私も嬉しいです。
何はともあれ内容を見なければ。
『・・・素晴らしい。この提案は私たちにとって魅力的だ。完了し、土地が安定すれば地下資源の採掘にこぎつける。またマコト議長が言っていた新肥料事業にも参加させてもらう運びになった。これからもよろしく頼む。アリウス高等学校生徒会長 錠前サオリ』
先日送った、砂の売買契約が成立した。
交渉相手はアリウス高等学校。つい先日トリニティより独立した学校だ。
灌漑に必要としている約60万トンもの砂を半年かけて輸出し、代金として10億円を受け取る。
さらに新肥料事業にも参加するというので、アリウス自治区は新しいお得意様になった。
かつてエデン条約を妨害したテロリストとこうして対等な立場で契約を結ぶことになるとは夢にも思っていなかったが、今は過去のしがらみなど関係ない。
これでさらにお金を集めることができる。
セリカ「シロコ先輩、なんだか嬉しそうだけど・・・」
シロコ「ん、売買契約成立。10億円」
セリカ「じゅ、10億?!」
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用語・概念集
シロコ(イヤリング):例のイヤリングを買ってから、シロコはずっとつけるようになりました。それだけです。それだけでしょうか。
セリカは濡れたくない:ねこは濡れるのが嫌い
セリカはゲーム下手:直感で受信しました。セリカは絶対ゲーム下手です。
トゥルーエンドが悲しい:アポピスがいるなんてスパコンでは予想できませんでした。
アリウスの独立:政治的内紛や、アリウス派のこれ以上の流入を防ぐため、セイアは苦し紛れの策として、在トリニティアリウス派生徒の送還を条件にアリウス分校の独立を認めました。ここで驚くことに、なんとサオリ達は地下資源の存在を隠しながら独立を勝ち取っています。ベアおば教育の賜物だな!そういうことなのでアズサは帰郷しています。
拝金主義シロコ:おそらく過去五回、シロコがお金にがめついと思ったでしょう。拝金主義レベルのがめつさをみせるシロコですが、これは3日目の中か下あたりで術式開示する予定です。
Q.雑い!A.ゲーム回だし・・・