シャッキー'S ぼったくりBAR(ナミ)
シャボンが西風に飛ばされる晴れた日。シャボンディ諸島に一人の女性がたどり着いていた。
「到着!私が一番かな?他は兎も角ルフィとゾロはたどり着けるかが心配ね…」
あの日私が飛ばされた先が天候科学を研究する空島だったことから考えると、他の船員もそれぞれ自分の特技を伸ばせるような所に飛ばされた可能性が高い。
何が目的かは不明だがバーソロミュー・くまは海軍から逃してくれた恩人なのだろう。
「素直にそう思っていいのかは合流してから考えますか」
不安を振り払うように独り言が多くなる。航海術を一手に担って偉大なる航路を進んできたからこそ、彼らがここで再集合できるのかは疑問が残る。集まれたメンバーで残りのメンバーを探しに行くために手がかりもなく逆走する必要があるかもしれないからだ。
「まず船が残ってるかも不安ね」
当然、戦争で名を上げたルフィを目の敵にする海軍に海賊、その他が船を拿捕・破壊していない保証はない。
「ビブルカードの指し示す場所は…」
シャッキー'S ぼったくりBAR
二枚のビブルカードが指し示すのは一軒のBARだった。
――カランコロン
「いらっしゃ――あら、お久しぶりね」
「キィ?――キィキィ!」
「ウタちゃん!元気にしてた?シャッキーさんお久しぶりです」
飛び込んできたウタちゃんを久しぶりにぎゅっと抱きしめる。ちょっとした役得ね。
「ウタがいるって事はルフィ達も?」
「残念だけどモンキーちゃんはまだ来てないわね。今シャボンディ諸島にいるのはロロノアちゃんとフランキーちゃんよ」
「え!?ゾロが最初!?参ったわね再出発の海は荒れそうだわ」
「キィキィ…」
「そんなに珍事なの?」
「アレはすっごい方向音痴でね…。ウタちゃんはいつここに?てっきりルフィと一緒だと思ってたけど」
3D2Yの記事の写真にルフィと一緒に写っていたからてっきり一緒に飛ばされたと思っていたのだが、ルフィはいないようだ。
「ギィ…」
「ウタちゃんは2年間ここで修行しながら待ってたわよ。あの日モンキーちゃんに会いに行った日以外わね」
「…そう」
三日後に集まる約束もあり飛ばされてもまた戻れる事を知っていた私達と違い、取り残されたウタちゃんの孤独は私たち以上だっただろう。
「…ごめんね。ウタちゃん」
「キィ?」
手際よくシェイカーを振ってカクテルを注ぐ――ちょっと待って。
「え?ウタちゃん何を!?」
「キィ!」
「ええ、ありが――どうぞ!じゃなくてウタちゃん?どういうこと?」
「2年間うちで修行してたからね。腕を見て貰いたいようね。すごいのよウタちゃん。シャボンディでも指折りのバーテンダーよ」
「キィキィ」
ドヤァと決めポーズするウタちゃんを見て気が付く。気遣うつもりが気遣われちゃったようだ。
「じゃあ修行の成果を味合わせて貰おうかしら。いただきます」
「キィ~」
私好みのオレンジの酸味がするカクテルだった。