シッケアールでの一幕
クライガナ島、シッケアール国跡地に立つ古城
そのキッチンでは城の主(勝手に住んでいるだけだが)であるミホークと、その弟子で居候となったゾロが今日の修行に励んでいた
「気を散らすな、火力が上がっているぞ」
「うっ」
「修正できたな。よし、そのままの状態をあと10分は保て」
「10分か…」
じっと椅子に座らされた状態で炎を放つゾロ
背中には鍋が置かれ、中では美味しそうなビーフシチューが煮えている
そしてミホークは火力の指示を出しながらビーフシチューを混ぜる
その様子を目撃したペローナは、おもわずココアを吹き出しそうになっていた
『あんなの、修行というよりただの料理じゃねェか!』
ペローナは吹き出しそうになったココアをなんとか飲み込み、心の中でツッコミを飛ばす
ミホークが「今日の稽古だ」と言ってゾロを呼び出したのが1時間ほど前
まさか、ずっと煮込み作業をしていたのだろうか
修行とはいえ、じっとしているのはあまり好きではないゾロには中々の苦痛だろう
ペローナは少しだけ同情する
だが…
『これでロロノアが火力調整出来るようになれば…ここでの生活もより良くなるな』
そう思いながらペローナはおやつのクッキーを口に入れた
ゾロの持つ発火能力を料理に利用しているのは何もミホークだけではない
ペローナもココアを温めるのにしょっちゅう彼の背中を使っていた
だがここに来たばかりのゾロは強火しか出せず、いつも鍋底の焦げた灼熱のココアが出来上がっていた
これで火力調整を覚えれば、きっと適温の美味しいココアが飲めるだろう
そう思いながら、ペローナはもう一口ココアをすすった
キッチンでは変わらずミホークが料理をしている
「さて、次は強火と中火の修行だ。これでシュー生地をつくる」
「シュークリーム食うのか?」
「シュークリームだけがシュー生地料理ではない。甘くない生地にチーズやベーコンなどを詰めればオードブルになる。ワインとの相性が良い。今日は特別に1杯だけ飲ませてやろうかと思ったが…」
「やる!」
「そうか」
ゾロの返事に頷き、ミホークは背中に小鍋を置いた
約束の日まで、あと1年と4ヶ月