脳内シュガーハック

脳内シュガーハック

小鈎ハレ砂糖堕ち編


──そういえば

先生に愚痴を言ったことがあったね。

映画「エリミネーター4」を観に行ったけど、あまりにハッカーに対して偏見が強く稚拙な表現だったから憤慨して…

頭に来たから制作会社のページに悪戯を仕込もうとしたけど、先生から映画と同じ事をしてると言われて結局やめることにした。

今となっては懐かしい気さえする。


私たちは[ヴェリタス]
ミレニアムのホワイトハッカー集団




でも

もう“ホワイトハッカー”と呼べるのは

[ヴェリタス]と名乗れるのは


私以外のみんなだ。




私はもう

この砂に呑まれてしまったから





でも、叶うなら

またみんなと一緒に──


──────────────────────────

ここはアビドス自治区の一角

【砂漠の砂糖(サンドシュガー)】という麻薬によりキヴォトスのほぼ全域が汚染され、数多の依存者達が押し寄せたことで現在のアビドスは陣営や学校間の柵が無くなりし一大都市へ変貌を遂げた…

一方で、“薬物蔓延”という外道な行いを止めるためにシャーレや三大校を中心とした[反アビドス連合]が組織される。




しかし、反アビドスに属さず怒りのままアビドスへ勝手に殴り込みをかける集団が現れることもあった…


ある日の深夜1時ごろ
アビドス砂漠を乗り越え11区にこっそりと侵入した10人のゲヘナ生が現れる。

当然、侵入者を撃退し捕縛するため監視セキュリティシステムを、アビドス側も用意していたのだが…彼女らには秘策があるようだった。


ゲヘナ生徒A「やっと来れたぞ…諸悪の根源アビドスへ!」

B「で、でもどうやって部長を取り戻すの?やっぱ反アビドス連合と一緒にやった方が…」

A「何言ってんだよ!今こうしてる間も部長は砂糖漬けになって苦しんでるかもしれないってのに、いつ動くかも分からない連合なんかに頼れるもんか!」

C「そーそー。つかここまでみんなと来といて帰るとかナシでしょ?あの優しい部長を狂わせたアビドスのやつら許せないし…どうせならこの辺の風紀委員とか自警団とかぶっ飛ばしたいしさ。」

B「…うん、それもそうだね…よ、よぉし…!まずは監視カメラの位置を探るためにミレニアムで調達したこのドローンを…」

A「なんだっけ?確かエンジニア部ってとこが作った監視カメラ発見用ドローンだったよなそれ。」

B「上空からカメラでスキャンすれば、ここ周辺のどこに監視カメラが設置されてるのかが分かるし、このボタンを押せばカメラ映像を一時的にハッキングして見られることも出来るらしいよ。」

C「解説おつかれさーん。それで部長はどの辺にいんの?」

B「こういう時こそカメラのハッキングを…あっ、13番街の古マンション地帯にいる!ここから見て…南西のところ!」

A「よっしゃよくやった!じゃあさっさと部長を連れ戻して、ついでにお礼参りも済ませるとすっか!」

「「「「「おぉーっ!」」」」」


このとあるゲヘナの部活メンバー10名は
自分たちの優しい部長が砂糖に溺れアビドスから帰って来なかったため、血気に逸り連合の下へ行くこともせず自分たちだけでアビドスへ侵入し部長を救出しに来た。わざわざミレニアムの特殊なドローンを買い、いつ動くか分からぬ連合を待つのではなく一刻も早く部長を助け出すという意思のみで訪れたのだ。


しかし彼女らは失念していた。
現在のアビドスにはゲヘナやトリニティのみならず、一部の“ミレニアム生徒”も転入していることを…

そして不幸なことに、かつてミレニアムの天才ハッカー集団の一員だった者が、現在アビドスの監視システムを担当している…つまり彼女らの行動は手のひらの上で観測されてるも同然だった。




ハレ「この時間に来たのは褒めてあげてもいいけど、流石に無鉄砲だよ。カメラのハッキングなんてそんな簡単な方法でやったら足がつくに決まってる。
13番街の古マンション地帯…じゃあここから電波を逆探知して…第11区か。なら後はこのドローンの反応を追いながら…もしもし風紀委員会?今第11区から13区に向かってる侵入者を見つけたよ。数は10人で多分ゲヘナ生徒。そして…」



アビドス別館近くにあるサーバールーム併設の施設“アビドス警備室”
そこは大量の空き缶が転がり、他と比べものにならないほどの甘ったるい香りが充満した、元ミレニアム生達が運営する監視システムの大元であった。

ここでセキュリティ責任者を務めている者…それは警備室長の肩書を持つ元ヴェリタスメンバーの【小鈎ハレ】だ。

彼女はほぼ毎日モニターを見ており、主に監視システムのアップグレードを手がけたり侵入者の情報を風紀委員会や自警団に知らせたりしている。
一応ハッキング分野に進んでいた後輩が数人手伝っているものの、大体はハレが担当していた。




先ほどのカメラへ行われたドローンからのハッキングは、元ヴェリタスのハレからするとあまりに拙い行為だった。すぐに該当のゲヘナ生達を発見すれば、片手でスマートフォンを取り出し風紀委員会へ連絡する。電話を受けた風紀委員会はすぐさま13区へ向かって待ち伏せを仕掛け、無鉄砲な10人を迅速に捕縛することができた。
その光景を見ていた、同じ警備室勤務の後輩ミレニアム生達はヒソヒソ声でハレを讃える。


砂糖ミレモブA「やっぱハレ先輩かっこいいよね…今回は相手もアホだったけどあの迅速な動き、流石元ヴェリタス…」

ミレモブB「相手のドローンを逆に利用した上場所をリアタイで報告してたし、もし風紀委員会が待ち伏せしてなかったらこの時間に正面から衝突してあの辺りにいる子達からの心象が悪くなってたかもだもんね…」

ハレ「チッ…はぁ…なんでこんな時間に来ちゃうのかな…しかもアビドスMAX切れてるし…ああもうっ!」

ミレモブA「…今のハレ先輩は大分心象悪そうだけど…」

「ねえそこの君たちさ、お喋りしてる暇あるならアビドスMAX買ってくるぐらいできないのかな!?何でもかんでも私に任せといてほんっと気が利かないよね!さっさと買ってきてよっ!」

A&B「ひぃっ!?了解しましたぁっ!」


「はぁ゛ぁ゛…チッ、役立たずが…なんでこういう寝たい時に限って馬鹿なヤツらが来るのかな…!?ほんっと最悪…!」

頭を左手で抑えながら、クールさの欠片もない苛立った荒々しい言葉で後輩達に怒鳴りつけるハレ。後輩達が買いに出たのを見届けると、舌打ちしながら悪態を溢し苛立ちのあまり机上の空き缶を両腕で払いのけ床へ落とした。ガランガランと大きな音が脳に響き、両手で頭を抑えながら机に突っ伏す…というとても見るに耐えない荒れっぷりを晒していた。

ハレは、アビドスへ寝返ってから好物…いや最早主食も同然の特別なエナジードリンク[アビドスMAX]に入り浸り過ぎた結果、精神も体調も非常に悪くなっている状態である。
かつてのエナドリを飲む量は、1日10本が最高記録だった。しかし現在は1日30本以上も飲むことが何度もあった。
そんないつODを起こして倒れてもおかしくない調子で、後輩達もほぼ頼れない上にアビドスの警備室長という立場なのが災いし、苛立ちの頻度と激しさは増していく一方…ハレの身と心が相当に追い詰められているのは明らかだった。



だがそんなハレが今この時を耐えられているのは、ヴェリタスメンバー達の顔が時々脳裏に思い浮かぶからだ。
彼女はミレニアムを、ヴェリタスを裏切ったことに対して罪悪感を持っており、禁断症状などで苛立っている間だとしても彼女達のことを思い浮かべて一線を超えないよう注意していた。

妖怪MAXで満足できなくなり、砂糖中毒に陥ったミレニアム生達を扇動して集団転入した時からずっと心の中に秘めていた罪悪感…

取り返しのつかない事をしたという思いから、ハレは“アビドス内の情報を外部に流す方法を必ず確立する”という二重スパイ計画を心の中で立てる。

たとえ砂糖が配合されたエナドリで狂ったとしても、たとえ情報がミレニアムまで届かなくても、せめて外部に流すことが出来れば私がやらかした過ちを少しでも償えるかもしれない。そう心に誓って以来、ハレは絶対に諦めないと決めたのだった…







無鉄砲な侵入者を捕縛した翌日

寝たとは思えない仮眠から起きたハレを風紀委員が訪ねてきた。先日捕縛されたゲヘナ生徒が持っていた、エンジニア部製の特殊な迷彩式ドローンの使い方が分からないためハレ達に任せたいと言ってきたのだ。

その時ハレはふと思いついた
(これを転用することが出来れば、もしかしたら情報をドローン経由で外部に流せるかもしれない…!)

そう考え、ドローンの受け取りを快諾し入手に成功。その日から、後輩達に基本入らないよう言いつけた監視室横にある自室にて、ただでさえ殆ど取れない睡眠時間まで削り1人でドローンの改造を始めたのだった。
これで少しでも反アビドス連合に貢献できるはずだと信じて、そこまで慣れていない改造作業を夜な夜な進めていく…


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だがしかしその計画には罠が張られていた…ドローンを届けた風紀委員は、ハレの自室に少し足を踏み入れた事を利用してその部屋に盗聴器を仕掛けたのだ。
そして盗聴器を仕掛けるよう命じたのは風紀委員長の空崎ヒナ…ではない。ヒナと同じく、アビドスで特に恐れらているカルテルトリオの一角…浦和ハナコの命だったのだ。


風紀委員「その、ハナコ様。失礼ながら質問させていただきたいのですが…何故セキュリティ責任者のハレさんに盗聴器を仕掛けろなどというご命令を?」

ハナコ「そうですね♡ハレちゃんの様子がおかしいと後輩の子達が言っていたものですから、もしかしたらあの子が何かを企んでいるかもしれないと思っていました…まあ現段階だとその様子は無さそうですけれど♡」

「では企みが無いと分かっていて尚盗聴を…?」

「ふふっ♡念には念を…という言葉では納得が行かないと思いますし、特別に教えますね?♡」

「い、いえ滅相もございません。むしろ私のような者に教えてくださるだけで光栄です。」

「そんな硬くならなくても、良いのですよ〜?♡」

砂漠の魔女は、生真面目そうな風紀委員の耳元に口を近づける。そのまま甘く蕩けるような声で真意を伝えた…

「例えば地獄にいる人のところへ一筋の糸が降りてきたとしたら…その方はきっと掴むはずですよね?♡もしその掴んだ糸を途中で断ち切ってしまった時、その方は一体どんな可愛らしい反応をするのか…私、気になってしまったのです♡」


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ハレ「ようやく、完成した…!」

それから1週間寝る間も惜しんでこっそりと改造し続けたハレ。誰にも頼ることが出来なかったため独学での改造となり苦難も相次いだものの、この日遂に外部へ情報を渡す機構を組み込んだドローンが完成した。
もちろん怪しまれないように、一見すると監視ドローンと同じような造形にしている。だが一部に小さなマイクロチップやUSBを差し込めるようにしておいて、監視システムの情報をコピーしたデータを差し込む事でアビドス外へと送り出すことが出来るというものだった。本当はホログラム機能などもつけたかったが、時間がなかったため妥協…しかしそれ抜きでも外部に送り出すには十分な成果だとハレは確信していた。



「あとはデータをコピーして、これを外に出せれば…んん?」

その時自室の外が騒がしいことに気づいたハレ。後輩達が何かに驚いているようだった。
まさか侵入者かと思い、とりあえずバレないようドローンを秘密の収納スペースへ仕舞うと自室を出た。

しかしハレの目に飛び込んだのは侵入者の警報ではなかった…





ミレモブA「ハ、ハナコ様!?どうしてこんなところまで…!?」

ハナコ「ふふっ♡いつもアビドスの監視を頑張ってくださっている観測所の皆さんへ、“ご褒美”を届けに…♡」

「なっ…!?」

浦和ハナコが自ら監視室まで訪ねてきたという事実に驚きを隠せないハレ。

「こんにちはハレちゃん…♡すごく顔色が悪いですよ?ちゃんとお休み、していますか…?♡」

「そ、それは…」

一言一言が妙に蠱惑的な声…ただでさえあまり広くない部屋に甘々な声が響くので後輩達はもう骨抜き状態だ。

「忙しいのは分かりますけれど、今日は応援を呼びましたしハレちゃんはお休みしましょう?♡ねっ♡」

「いや、ちょっ…!」

ハナコは後輩達にビニール袋を手渡してからハレの手を握る。袋の中はどうやら純正砂糖などの差し入れみたいだった。手を握ったハナコは、ハレの自室へ勝手に連れ込むと部屋の片隅に置かれた簡易ベッドに座り…


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なにこれ

何が起きているんだろう

現状だけを言うなら…


私は今
カルテルトリオの一角で
補習授業室長の浦和ハナコさんに
膝枕をされている


正直悪い気はしない

むしろ満ち足りる感じがする

今までのストレスや苛立ちが

こうされるだけで溶けて消える感じ…



でもこの幸福度は危険だ

これに呑まれたら

いよいよ砂の牢獄から逃げれなくなる

かといってすぐ離れるのもまずい


どうしよう…


「ハレさん♡もしよければ、一つお尋ねしてもよろしいですか?♡」

ハナコさんが語り掛けてきた

膝枕されながら「どうぞ」と応える


「ありがとうございます♡」

そう言うと、ひと呼吸置いて…



「そこに隠したオモチャは、一体どのように使って遊ぶのでしょう?♡」



っ…!?

まさか、あのドローンのこと!?

そんなバカな!

ハナコさんが知ってるはずがない!


「な、なんのこと…?ここにオモチャを置ける場所なんか無いよ?」

惚けてみる

でも運が悪いことに、あのドローンは今私の背中側…つまりハナコさんの後ろの棚にある収納スペースへ隠している。

今のところ取り出した気配はない

大丈夫…大丈夫…

惚けていればきっとバレな


「これなのですけれど♡」


──は?

な、なんで…

なんでハナコさんの手にドローンが…

音もなく取り出した…?



「ふふふっ♡この間捕まえたゲヘナの人たちが持ってきてたドローン…でしたよね?♡機械に詳しくはありませんけれども…まるでUSBを挿せるような穴がこことここに♡こっちにはマイクロチップを挿れられそうな穴まで…♡」


私の目の前で、ドローンを見せびらかすようにくるくる回す

信じられない

彼女の指は、私が作った端子接続用の穴を的確に示している



「っ…!」

こうなったら仕方がない

試運転くらいはしたかったけど…!


「EMPドローン、作動ッ!」

膝枕から転がるようにして距離を取る

今は監視システムの補助を任せていた、私の愛用品アテナ3号を呼び出す

ハナコさんには悪いけれど、電撃を浴びせて少し動けなくなってもらうっ…!



「…悪い子ですね、ハレちゃん♡」





…えっ?

なんで…!?

なんで来ないの!?

アテナ3号が来ない!

「アテナ3号!?早く…!」

「えいっ♡」


私は、更に信じがたい光景を目にする

その時ハナコさんの体から

無数のホースが伸びたのだ

私はそのホースに締め付けられ動けなくなってしまう


「くっ…!?」

「残念でした♡可愛い後輩のことは大事にしなきゃダメですよハレちゃん?♡」

「ど、どういうこと!?」

「実はさっきの袋にこっそり、
[ハレちゃんの丸くて可愛いドローンを一旦機能停止にして下さい♡]
と書いたメモを入れておいたのです♡」

「そ、そんな…じゃあ最初から、こうするつもりで…!?」

「ハレちゃんがちゃぁんとアビドスの子になれているかを確かめるために、このお部屋に盗聴器も仕掛けていましたが…気づかなかったみたいですね?♡灯台下暗し、というものでしょうか♡」

「え…?」


盗聴器?

ということは…

まさかあの風紀委員っ!

「くぅっ…!私のバカッ…!」

「優秀だからこそ、基礎の部分で小さいミスを犯して失敗に繋がる…よくある話ですね♡」


最悪だ

私の計画は全て

この魔女のシナリオ通りだったんだ


「さぁて、悪い子は…

サイキョウイク
 “補習授業”

をしなくちゃいけませんね♡♡♡」







結局私は…

償えないんだ…








──────────────────────────

“補習授業室”

ここは、主にアビドス転覆を企んだ者や入り込んだスパイを再教育するために存在する場所だ。

担当者はもちろんハナコである。


捕まったハレは、ホースに絡め取られた痴態を晒しながらここまで連れて来られた。道中自分を見ながらヒソヒソ話す群衆に対して羞恥心が抑えられず、顔を真っ赤にしながら目を閉じる…今の彼女はそれしか抵抗の術を持っていなかった…



ハナコ直属の親衛隊や部下が並ぶ廊下を抜け、補習授業室へと到着したハナコ。ずっと上機嫌で鼻歌を歌いながら連行していたが、ここに来た途端既に楽しそうな様子がもっとイキイキし始める。


「さぁ〜てハレちゃん♡身も心もお砂糖で満たしてあげますので、たっぷり堪能してくださいねっ♡」

「…好きにして。でも私は諦めないよ。たとえあのドローンが壊されても、違う方法で外部に情報を送るから。それに私がいなければアビドスのセキュリティがボロボロにな…」

「えぇ♡ハレちゃんが居ないと困るのはその通りなので…古巣に戻れないようにしてあげます♡」

「……どういうこと?」

「ハレちゃん、もしアビドスMAXを上回る快楽があると知ったら…貴女はどうしますか?♡」

「なっ!?そんなものが…!?」

「えぇ♡しかし少々貴重なので頻繁にはあげられませんけれど…もしアビドスでこれからも頑張ると仰るなら、特別に私から分けてあげても良いですよ?♡」




そんなもの…絶対危険に決まっている

とても惹かれるのは否定しないものの…この魔女の誘惑を受け入れたら、完全に狂い果ててしまうなんて火を見るより明らかだ…!


「い、いやだ…!拷問でも尋問でも好きにしていいから、そんなもの飲ませないでっ…!」

「あら、おかしな事を言いますね?♡今まであれほどアビドスMAXを飲んでいたのに、この期に及んでより深い快楽を断ってしまうのですか…?♡」

砂漠の魔女が耳元に口を近づける

やめて…!

そんな近くで囁かないで…!


「自らの欲望を解放してください…♡ハレちゃんの欲しいもの…この世で一番の快楽は、すぐ目の前にあるんですよ…?♡」

「うぅぅっ…!ダメ…!そんなものに、私は、屈しない…!」

「ご存じですか?♡そうやって必死に頑張って逆らおうとする人ほど、深き快楽には余計逆らえなくなってしまうものなのです…♡」



脳が震える

この魔女の言葉は危険すぎる

絶対負けない…!

負けたくない…!

ヴェリタスのことを思い出せ…!

みんなの顔を思い出せ…!


ヒマリ先輩
チヒロ先輩
コタマ
マキ

大事なみんなの顔を…

そしてミレニアムの仲間達を…!




「いい事を教えてあげますね?♡実は今ハレちゃんを捕まえている私のホース…とっても甘美なサイダーやシロップを出すことが出来るんですよ…♡」

………

えっ?

今なんて言った?

このホースから…?




「では、可愛らしいそのお口を開けてください♡はい、あ〜ん…♡」


や、やばい…!

口を開けたら全てが終わる…!

すぐさま歯を食い縛るように閉じる

「ん゛んっ!」

「あら…♡ハレちゃんがここまで言う事を聞かない悪い子だったなんて…私は悲しいです♡でも…こうしたらどうですか?♡」

突如、魔女が私の鼻を優しく摘んだ

しまった

今は腕も脚も拘束された状態…

口を開けたら終わるとはいえ閉じた以上呼吸は鼻に頼るしかない

その鼻が塞がれたらどうなるかなんて
簡単に予想できたはずなのに




そうか

私はもう、詰んでいたんだ







「ッ゛…ぅ゛…ぷはぁっ!」

「どうぞ、召し上がれっ♡」

「ぐぼぉ゛ッ…!?」

呼吸が苦しくなる
遂に我慢できず口を開けてしまった

刹那、魔女は身体から生やしたホースの一本を口内へ捩じ込んだ

その瞬間、炭酸特有のシュワシュワした液体が流し込まれる


「ぉ゛ぐぅっ!?ん゛んんーっ!」

「ほら、とっても甘くて爽やかでしょう?♡これが私自慢の、特製アビドスサイダーです♡この後シロップも飲ませてあげますよ〜…♡」





あ゛…

この味は…

ダメだ…




おいしすぎる


喉を鳴らして飲み込む


あぁぁぁぁ


とける

のうがとろける

アビドスMAXがかすむほどの

しあわせが

わたしをみたす







「んぐっ…♡ごくっ…♡」

「あらまあ、今まで見た中で一番美味しそうにしていますね…♡とっても可愛いですよハレちゃん♡」


あまい

おいしい

きもちがいい


あれ

いまだれかのかおをうかべたきがする

でももういいや

このサイダーさえあれば

それでいい…♡




「ハナコさまぁ…♡これからはアビドスのために、ハナコさまたちのためにぃ…このみもこころもささげてはたらくとちかいますぅ…♡」

「はい、よく言えました♡それでは、さっき使おうとしてたこのオモチャ…ちゃんと壊せますよね?♡」


ハナコさまはドローンをとりだした

これ…なんだっけ?

まあいいや

こわしてハナコさまがよろこぶなら

いくらでもこわせる♡


ハナコさまのホースがほどけた

わたしはドローンをてにとると

それをふりあげて

おもいっきりゆかにたたきつけた




「ふふふふっ…♡ちゃぁんといい子になれましたねハレちゃん♡言う事を聞けるようになったのなら…お待ちかねのご褒美です♡

ハナコさまのホースがくちにちかづく

わたしはくちをあけた


こんどはたんさんじゃない

でもさっきよりあまったるい

ハナコさまのアビドスシロップ…

これもサイダーとおなじくらい

しゅごい…♡




わたしのいしきは

あまいみなそこへしずんでいった














──────────────────────────

親衛隊「ハナコ様、ご報告いたします。ハレ警備室長の作業効率は数日前よりも明らかに上がっている模様です。本人も荒っぽくなる頻度が著しく下がり、後輩生徒との関係もかなり良好になってきたみたいです。」

ハナコ「予想通り、ハレちゃんはやる気になればちゃんと頑張れるいい子でしたね…♡ではこちらのサイダーとシロップを警備室へ差し入れてください♡」

「承知しましたっ!」



親衛隊「ハレ警備室長、いますか?」

ハレ「あはぁっ♡ハナコさまのサイダーとシロップだぁっ…!♡」

ミレモブA「わぁっ良かったですねハレ先輩!」

ミレモブB「いいなぁ…私も少しでいいから飲みたい…」

ハレ「もぅ、ちょっとだけだよ?♡」

A&B「わーい!」


「…前はあれほどイライラしがちだった警備室長さんが、今やこれほど幸せそうな顔を浮かべるなんて。ハナコ様はやはり偉大なお方ですっ!…私も悪さしたら再教育してくれるのかなぁ。」

和気藹々な様子の警備室から立ち去った親衛隊は、そう呟きながらハナコの下へ戻った。


これによってアビドスのセキュリティはアリの子1匹の侵入も許さぬ、難攻不落の強固さを手に入れたのだ。
例えハレがアビドスから無事救出されたとしても…彼女が正常な思考を取り戻せる日は一体いつになるのだろうか?そもそも正常になれるのだろうか?
それはこの時点で誰にも分からないことだった…

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