サンドイッチで絶頂するアオイちゃん
パルデアの大地を吹き抜ける風は、涼やかに万物を冷ましていく。疼きにも似た不可思議な火照りに身を炙られながら、アオイはアカデミーの門を出た。
アカデミー前には巨大な階段が見上げる者の心を折るように伸びているが、学校から街中へと降りていくアオイにとってはそこまで負担になるものではなかった。体力は万全、気力は十分、しかしどこか体調が優れないような矛盾した感覚。下腹部に熱がこもっていくような違和感に苛まれながら、テーブルシティへと階段を降り進んでいく。
165......199....56..........42...
彼女の脳裏にはどこかともなく小さな声が響いていたが、アオイにはその数字が何を意味しているのか分からない。いつもなら、溢れんばかりの好奇心にまたがって疑問を徹底追及する彼女だが、頭の中の幻聴が相手では分が悪い。結局、下腹部の熱も頭の中の幻聴も、その正体は分からずにいた。
下腹部の熱は顔へと伝わり、彼女の小さな頬を染めている。桜色というほど淡い色ではない。明らかな紅色へと変貌した両頬は、見る者にアオイの体調を心配させるという役割を確実に果たしてくれるだろう。だが、彼女の体調は問題ない。この紅潮は、体調不良によるものではない。これはいわば・・・・
発 情 。
心のどこかに澱が溜まっていたのか、人目が無ければ体中をかきむしりたい気分になっていたアオイは、昼食のためにテーブルシティのサンドイッチ店に向かうことにした。学校の食堂を使わないのは、こんな顔を親友たちに見られたくはない、という思いからだろうか。ネモはこの顔をみて純粋に心配してくれるだろう。ボタンは解熱のために何かと力になろうとしてくれるだろう。もしペパーに見つかったら、甲斐甲斐しく世話をされるに決まってる。過保護な程に面倒をみようとしてくれるだろう。
そんな彼らに「えっちな気分になってるだけだから」とは言えない。言えるワケがない。だから、街へ出て、わざわざ広場のサンドイッチ店まで行くのだ。
77‥‥....89..........32.........9.........9......9.........99......
数字を読む脳内の声は相変わらず小さく頭の片隅で続いている。階段を降りきり、サンドイッチ店に向けて歩みを進めていくが、心なしか、下腹部の熱が、疼きが、強くなっている気がする。店に近づくほど疼いていく気がする。
いや、「気がする」ではない。サンドイッチ店の前に立って看板を見上げるアオイの顔は、炎のように紅く色づいており、吐息には淫靡な甘やかさが滲んでいる。また、アオイ本人には下着の中の潤みが自覚できていた。
22..........154.......81..........76..........
「声」はいつのまにか無視できないほどに大きくなっている。その声が脳内に響くたびに背筋を電流が駆け抜けるような快感が、幼い少女を打ち据える。震える脚と声で注文を済ませ、商品であるサンドイッチを受け取り、テラス席へと移動する。
86......47......
なにかがおかしい、その確信が心臓の鼓動を速めるが、それは違和感を後押しする役目しか果たしてはくれなかった。サンドイッチを目の前にしてアオイの発情はピークに達していた。下腹部の熱が生み出す潤みは下着の中におさまりきらず、制服をほんのりと湿らせている。紅潮した顔のこめかみに走る血管は、これ以上なく速まった心臓のビートをダイレクトに伝えてくる。
何かは分からないが、何かが起こる。自分の何かが変わる。
覚悟を決めたアオイ。サンドイッチを両手に取り、口の前に持っていく。
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「あれ?もしかして、チャンピオンのアオイさん?」「絶対そうだよ、サインもらいに行こう」「すげー初めて生でみた!」「サンドイッチ食べるのかな、なんかかわいい!」
いざ実食という段となって、アオイの周りには人だかりができていた。アカデミーが誇る新チャンピオンの食事風景を一目見ようと、テラス席の周りに集まる人また人。
顔の火照りを意識しながらも、にこりと笑顔を見せて対応するアオイ。気をとりなおして、サンドイッチと向き合う。大きく口を開ける。上下の歯がサンドイッチに触れた瞬間。脳内の声がぴたりと止み、ひと言だけ聞こえてきた。
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その瞬間、アオイの全身の筋肉が硬直した。足はピンと伸び、背はウデッポウのごとく反る。「何か」が起こったのだ。
アオイの全身からほとばしる絶頂のエネルギーは彼女の衣服を消し飛ばし、突如として過剰な絶頂感を叩きつけられた彼女の脳は、意識を保つことを放棄せざるを得なかった。
一部始終を見ていた学生は後にこう述懐している。
「アオイ殿が口にしたのはなんの変哲もないサンドイッチでござった。まるでテラバーストのように内側から衣服が消し飛ぶなど見たこともない。あれほどの服飾技術はパルデア中を探しても見つからないでござろう。」