サニー号の女子会
サニー号では時々女子会が開かれている。
その内容は日頃の感謝を伝えたり男達の愚痴を話したり旅の思い出を語ったりするというものだが…今日は様子が違っていた。
「ウタ。覚悟を決めなさい!」
「ええ、これは私も譲れないわ。」
そう言って私の前に立ち塞がるのはナミさんとロビンさん。人形だった私を裁縫で修理してくれたり一緒に寝てくれたりした大切な仲間で…本人達には恥ずかしくて言えないけど姉の様に慕っている。でも…
「無理!恥ずかしいよ!こんな露出の激しい服…」
そう、今回の女子会は私に似合う服を探すことがテーマ。
事の起こりはナミさんの『ウタはもっとオシャレすべき』という言葉だった。
確かに言われてみるとシャンクス達といた頃は他に女子がいなかったし、人形になってからは半ば諦めもあってオシャレに興味が持てなかった。…つまり私はファッションセンスというのがよく分からないのだ。
結果数種類のTシャツとズボンを適当に使い回す日が続いて、見るに見かねたナミさんの提案で今回の女子会が決まったのだけど…なにせ今は船の上。女性物の服はナミさんとロビンさんが着てた服しか無いわけで。
「そりゃ私達のお古なのは申し訳ないけど絶対似合うわよ?一度騙されたと思って着てみなさいってば!」
「せっかくの機会なんですもの。いきなり他人に見せるよりはハードルも低いんじゃないかしら?」
そう言って迫る2人が手に持つ服は…正直どれも凄く刺激的だ。下着が見えそうなぐらい丈の短いスカートや胸元が大きく開いてて全身のラインが浮き出るドレス。
「や、やっぱり私には無理!ゴメン今日はここでお開きで─」
「逃がさないわ『二輪咲き』!」
「ナイスロビン!さあウタ観念して着替えるのよ!」
「やーめーてー!」
そうやってじたばたと抵抗していると不意に昔の記憶が蘇った。
『じゃーん!ウタ、あなた用の服をロビンと2人で縫ってみたの!』
『あなた無茶な戦い方でよくボロボロになってるでしょう?これがあれば多少は身を守れるはずよ。』
『それにあなたも女の子だしオシャレしてみたいだろうから!』
『…‼︎キィキィ!』
『ふふ、喜んでくれてるみたいね。よかったわ。』
『また次の島に着いたら布を買って新しい服作ってあげるから楽しみにね!』
『キィ!』
「──」
「え、あ、うそごめんねウタ!本気で嫌だった?」
「…!ごめんなさい少しやり過ぎたわ。」
暖かな記憶を思い出して私はいつの間にか泣いていたらしい。
「ううん、人形だったときに2人が私の服作ってくれたこと思い出しただけ。あの時はありがとう。すごく嬉しかった。」
「懐かしいわね…この際もう一度服を作ってみてはどうかしら?今度は3人でウタが着てみたい服を作るの。」
「さすがロビン冴えてる!じゃあウタ、何か希望があったら言ってちょうだい。色でも柄でも遠慮しないこと!」
「うん…うん!ありがとう!じゃあ私付けたいマークがあって─」
感謝の気持ちを言葉に出せるのが、喜びを笑顔で表現出来るのが嬉しくて私はまた泣きそうになる。
ありがとう私の大切な友達。どうかこれからも貴方達と幸せな思い出をたくさん作れますように。