ササカイかもしれない

ササカイかもしれない


 ササキ様がちょっと限界化してるから注意。両想いっぽいかも

。。

・・

。。

「サーサーキー…おい、聞こえてるのか?」

「ハイ」

「ササキ~…酒が足りないぞ!持ってこい!…んん~」

「はい!只今お持ちしました!!カイドウ様!!」

「おー…ありがとよ…お、これァササキが作った酒か?…いいできじゃねェか」

「ありがとう…ございます」

「ウォロロ…でな、ササキ~その島はな…」



「なあ、ササキ様、固まってね?片言だし」

「ああ、ピクリともしないな」

「カイドウ様にあんな風にされちまったらな…もしかしておれ達、野暮?」

「え~でもおれ達ササキ様の直属の部下なんだぜ?野暮じゃないんじゃないか?」


「……おい、お前ら…ピーチクパーチク煩いぞ」

「あ、ササキ様が喋った」

「でもすごい小声」

「大丈夫っすよ。カイドウ様大声とかそんなに気にしないっすよ多分。この前もクイーン様のライブ聴きながら寝てたし」

「そういう問題じゃねえ…」


 百獣海賊団飛び六胞の一人、ササキは今とても困っていた。尊敬しているカイドウが、へべれけになってササキを抱き込んできたのだ。しかも半分寝かけている。


 頬を赤くして目を蕩けさせたカイドウは、そういう目で見ているササキからすれば目に毒だった。


 おれの酒が上出来だって???うわ、テンション上がるな。嬉しいな。それ自信作なんです。てか顔が、近けえ…手でか…髪つやつやだ…カイドウさんの角、やっぱりイカスな…なんか島について話してる…遠征のことか?…かわいい…


 ササキの脳内では取り留めのないことがぽろぽろと浮かんでは溶けていく。が、どれも声にはならずにただ呆然とカイドウに返答するだけだけで精一杯だった。気持ちが焦って酒ばかり進む。うつらうつら話すカイドウに相槌を打ちながらササキの脳内は大回転した。


 これまでだってカイドウさんと飲むことは何度かあった。自分から誘いをかけるくらいには堂々としていられたんだ。こんな生娘みたいな反応じゃ盛っ切りのササキの名が泣くぜ。落ち着けササキ。こんなに密着できる機会はもうないかもしれねぇ。落ち着けササキ!

 だが、だが、カイドウさんが甘えてくるなんて、この状況は狙ってもなかなか起こらない。しかもカイドウさんに今日は何の連絡もしてないのに、あっちから来てくれたんだ。こんなに至近距離にカイドウさんがいる、しかも会うのは3ヶ月ぶり。やばい。

 いや肩ぐらい組んでくれるかもしれねぇ時もあるが、この密着感。半端ねえ。


 ササキは内心かなり有頂天だった。


「なあおい、ササキィ。さっきから返事がねェじゃねぇかよぉ…おれといても、つまんねぇってのかよぉ…」

「違う!違うんだカイドウさん!すまねぇ。少し酒にあてられてただけだ。それで、島の植物が珍しかったのか?」

「ああ、そうだ…黄色くてよぉ…」


 泣きそうな雰囲気をかもし始めたカイドウに慌てて返事を返すと、カイドウは安心したのかササキをずりずり近くに寄せた。

 横たわるようにして左腕をササキの胴体に回していたカイドウがササキの腹を徐に撫で始めたものだから、ギョギョンとササキの背筋が伸びる。


「ちょうど、こんくらいに丸くて…葉っぱがな、これはお前には似てなかったが…やっぱ似てるなァ」

「…そうか。おれに似てる植物が、あったのか…」

「ん…みんな、言ってたぞ…」

「そうか…それを態々言いに?」

「言いに来ちゃダメなのかよ~」

「いや、そんなことはない。嬉しいさ」

「ウォロロ…なら、いい。酒も旨いしな」


 なにそれ。え?おれに似てる植物があって?それを話したくて?え?かわいい~ってか腹を撫でるのは、カイドウ様、ヤバいぜ。あたたかい手が、ぉぉぉ…おれだって男なんだ。あんたも男だけど。そんな風に腹を撫でられたら興奮してきちまう。部下がいるのに!なんでそんなに半円状になっておれ達を囲んでいるんだ!お前ら!ニヤニヤするな!今こそおれを助けるなりなんなりするべきではないか?部下!!!


「なあ、ササキ様めっちゃ百面相してるな?」

「やだ、こっち見てるわ」

「カメラ持ってくりゃ良かったぜ」

「嬉しそうだな…だがあくまでも己の内に秘めておく、かー!男前だぜ!ササキ隊長!!いてっ」

「分かったから、お前うるせーよ」

「カイドウ様にあんなに迫られるなんて…こええ…」

「おれは変わってほしい」

「なんかカイドウ様の髪っていい匂いしそうだよな」

「流石に夢見すぎじゃね?」

「でもあの艶…可能性はあるわよ」


 なんの役にもたちゃしねぇな!このお調子者どもめ!退室しろ!!


 ササキはカイドウの杯に酒を注ぎながらドキドキ鳴る心臓をどうにかしようとした。

 そして、この甘えを自分以外にもしているカイドウを想像すると、途端に心臓も思考も大人しくなった。そう、カイドウ様はおれだけの上司ではない。二万人の荒くれ者の頂点に立つ総大将なのだ。最強生物だのなんだの言われても、なんだかんだ面倒見がよくて、名前もなんだかんだ覚えてくれてて…。これも部下を労う一環に過ぎない。その筈だ。


「でだな…ササキ、今度な…ササキ?」


「あれ、ササキ様がスンッってなってる」

「すげぇ真顔だ」

「隊長!カイドウ様が不審がってますよ!」



 カイドウさんは酒乱で律儀で真面目で酒乱だが時折気まぐれに絡んでくることがある。下っ端の失言に暴力を執行したり、部下を誉めたり名指ししたり、その時々でバリエーション豊かだ。

  やれやれ浮かれちまったぜと内省しながら酒を呷ると、ふと視線を感じる。先ほどまでうとうとしていたカイドウがササキの顔をじっと見つめているではないか。


「おれがこうするのはお前だからだぜ?ササキよォ」

「は?」

「ウォロロロ!話してぇことは話せたからな、まあ細けェ話は追って連絡するとしよう。おれは向こうに行ってるぜ。次の酒も期待してる。うまかったぜ」


 またな、ササキ


 うっすらと笑い流し目を一つ残して、大きい体を滑らかに動かしてカイドウはのしのしと歩いていった。ササキは今度こそ固まってしまって引き留めることも出来ない。


 去り際にふぁさりとカイドウの髪が一筋ササキの顔を撫でた。なんか、いい匂いがした…酒、期待、ササキ…ササキは誰?……おれだ…。

 カイドウ様がおれだからって言った…おれだから……おれだから!?




「やべっ隊長が息してないかも」

「目ェガン開きじゃん」

「そんなバカな!…あ、してるしてる大丈夫だ。いや、あれは効くよな」

「きぶっていいっすか?」

「隊長~しっかりしてください!あんたがいなくなったら、おれ達どうすりゃいいんすか~!?」


「……テメェら、余韻にくらい浸らせろ!!!」



 


 百獣海賊団は今日も平和だった。

 後日カイドウとササキの部隊で遠征をした。



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