サオリの独白

サオリの独白

光寄りさっちゃんの人

何かがおかしくなり始めた事は感覚で理解していた。


「よっ、あんたも一緒にどう?」


「何だ、それは……」


「ここ最近で話題になってるお砂糖さんだよ。これ試してみたけど、結構気持ちいいよ? 昨日はアタシがヘマしたの助けてくれたからさ、そのお礼的な?」


「……必要ない」


「あらら、そりゃ残念」


最初にその話を聞いたのはブラックマーケットでの仕事で自然と顔馴染みの半グレとの会話だった。もっともそんなに深い仲ではない。話の内容にはそこまで興味はなかった。

今思えば、この時に脅してでも、僅かだったとしても情報を手に入れておくべきだった。


あの頃からブラックマーケットの喧騒が少し小さくなっていた。半グレたちの銃撃戦の数が減り、穏やかに雑談をしている数が増えていた気がする。

取り囲む状況が大きく変わっているのに、私は愚かにも起っていることを知ろうとしなかった。


私が今の状態が惨状であることを理解したのは、それから暫く立った後の事だった。


「……あれは、ヒヨリ?」


その日は普段と同じように仕事に明け暮れていた。その帰り道に一瞬見知った背中を見つけた。

走って移動している背中に思わず身体が動いた。訓練で身についた追跡技能で気づかれないように後を追いかけた。


「ミサキ、それに姫?」


そうして追った先に別れていた仲間が集まっていた。

3人はまとまってブラックマーケットの奥へ進んでいく。









今思えば、どうしてあの時に私は皆に声をかけて止めなかったのだろうか。











そして、その先で見た光景が私に自身の愚かさと間違いを突き付けた。

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