コユキの中をぐちゃぐちゃにしたい。

コユキの中をぐちゃぐちゃにしたい。

#黒崎コユキ#R18G#コユキィ!

 切開部にちくちくと局所麻酔を打つシーンで配信画面が切り替わり「15分後に再開」のテロップと、可愛らしくデフォルメされたイラストが3人分表示される。中央にツインテールのピンク髪を両側から白衣を着た2人の生徒で挟んでおり、そのどれもが満面の笑みだ。

 ミレニアム総動員で情報収集に取り組むが、ミレニアムと不仲である学園のサーバーを複数経由し、さらにそれを数秒ごとに切り替えるという異様なまでに複雑化された配信経路に捜査は滞る。

 サーバーの追跡依頼、もしくは追跡許可申請を出した全ての学園からNOと突き返された瞬間、小馬鹿にでもするように配信が再開される。テロップが消され、代わりに手術着の2人と1人の被験体が画面に映し出された。

【サァサァ皆様引き続き、御覧に供しまするのは!】

【粗忽な者らの茶番劇、何卒ごゆるり鑑賞を!】


「……と、言うことで本番ですね」

「やー、ようやくですねえ」

「カスみてえな段取りでごめんなさいね。せめて、せめて硬膜開く前よね、麻酔切れ待ち休憩入れるの」

「脳がカピカピになっちゃうよう」

「急ぎましょ急ぎましょ!」

「焦りつつ冷静に!」

 いそいそと取り出される薬瓶と薬匙、輸液パックと注射器。当然、中身は粉末の砂糖と砂糖の溶液である。

『ふっ、うぅっ……それ!ど、どうしてもやらなきゃですか?!……なんか私、すごいことになっちゃってますけど!今から取りやめることとか!その!わた、私!そんな悪いことなんてしてないですよ!』

 つんのめるコユキの嘆願に二人は顔を見合わせ、クスクスと笑い合う。

「んー、そうだねえ。こそこそ侵入して色んなデータぶっこぬいて持ち逃げするなんて悪いことじゃないもんねえ」

「だからね?こうやって誰かの頭を開いて砂糖かけるのも、悪いことじゃないんだよう?」

「それに、キミはセミナーのことも色々知っているだろう?ぜーんぶ忘れちゃった方が、向こうの人たちも安心するんじゃあないかなあ?」

『ひっ……!』

 覚醒下での開頭手術は、その特徴からして抗不安薬の術前投与や、そもそも神経質であったり不安症持ちの者には適さないとされている。今のコユキのように怯え切り、果てに錯乱してしまえば覚醒させる意味がないからだ。

 しかし、たった今。不安や怯えを吹き飛ばすのに余りある代物が投与されつつある。

 構えられた注射器の針先には表面張力でぶら下がる砂糖の溶液。さらにプランジャーが押し込まれ、重力に抗えなくなった雫が一滴、頭蓋の内側に垂らされる。ぴとり。跳ねることなく脳の表面に広がり、粘膜の保護すらない無防備な脳に滲み入る甘味料。

 左の目だけがぐるりと白目を剥き、全身を硬直させ拘束具がギチギチと鳴らされる。歯車模様のヘイローはノイズが走り、その全体をチカチカと明滅させる。

『がわ、わ、わ、あが……お?あひ、ひ、いひひっ』

「やべ、濃すぎた?」

「いえ、動物実験から安全係数を100でとってるんでたぶん問題ないはず」

「だよねえ?……瓶の方いらねえなこれ」

『きひっ!きひひっ!』

 壊れたように笑うコユキを前に、慌てるでもなく愉しむでもなく純粋な疑問を抱いて観察を続ける2人。腐ってもミレニアム出身か、こういう時には真面目だ。

『あはっ!すごい、すごいですこれ!こんな、ああ、こんなのをみんな……!』

 恍惚に歪められる表情に眉を上げほっと一息吐き出して、さらに砂糖で濡らしていく。

 ぽたり、ぽたり。

 脳に触覚などない。脳に何かが触れられる状況などそもそも死んでしまうから、わざわざそんな感覚を発達させる意味がない。ゆえに脳に何かが触れてもそれに対して反応することはないはずだ。だが、砂糖水の水滴が落とされ、脳を叩くたびにコユキは身体を痙攣させ、甘く蕩けた声を漏らしてしまう。

『あはっ♡すっ……ごい♡あーー♡♡たまんない♡これ、あ、とける、ぜんぶとける……うぁあ……♡』

「……効きすぎじゃない?」

「脳に直接ならこんなもんだと思いますよ……」

「そーかなぁ?まあいいか……17号を4mL、と。ごほん。コユキさん?」

『んぁぁ……?』

 想定以上の反応に困惑しながらも、それをしっかりと記録用紙に記して聞き取りに入る。

 胡乱で焦点の合わないコユキの視線は床を見るばかりで、唾液は量と粘度を増し、口から糸を引いては泡立ったものが床に溜まっていく。

「なにが、見えますか?」

『みえ、る……?みえる。みえる……!ゲームセンター、とせんせ、い。うれしい。たのしい』

 ふむ、と考え込みながら記入を済ませ。さらに砂糖の量を増やす。

『ひゅっ?!♡おっ、おおっ♡んゔっ……!んっ!んんっ……♡♡♡』

 腰を跳ねさせるコユキのスカートがじわりと湿り気を帯びる。下着はじっとりと濡れ、砂糖の甘い香りに混じって、淫靡な性の匂いが無菌の手術室に立ち込める。

『あっ、ふぁ……あっ、あっ。あっ!……クローバー、4枚、のクローバー!こ、こんなにたくさん!やった……!やっと見つけた!』

「28mL……」

 はっと正気に戻る口調に急いで記述が済まされる。どうやら、コユキは今までにあった思い出を幻視しているらしい。拘束された両腕を緑色の床に必死に伸ばそうとし、ありもしないクローバーを摘もうとしているのかニギニギと指を開いたり閉じたり繰り返している。


 その後もさらに砂糖を足したが、他愛のない日常や、幾何学的な模様の幻覚を訴え、最後には性悦に溺れて人語を解すことも話すこともできなくなってしまった。

『ゔーー♡やぁぁ♡♡うゆぅぅ……♡』

「ま、取りたいデータは取れたね」

「ですねえ!なかなかハッキリと見えてたみたいで面白かったです!」

「砂糖の洗浄はどうする?」

「だぁいじょうぶですよ!私の時もそうだったじゃないですか!」

「それもそうか……よし、閉じちゃおう」

 ニーハイソックスを足首まで濡らしたコユキを尻目に記録用具と砂糖関連の用具を片付け、硬膜の縫合に取り掛かる。

「針ぃ!」

「はぁい!」

「……針だけじゃねえか!」

「物事は正確に伝えてください!」

「硬膜縫合するので針と糸をください!」

「はぁい!」

 小ボケをかましてから髄液が漏れ出さないようにミリ間隔で縫い合わせ、ピッチリと硬膜が縫合される。さらに骨に小さな穴をあけ、そこに糸を通して硬膜と開頭部位周辺の骨を結び合わせる。これをしないと骨と硬膜の間から血が漏れてきて困るからだ。

 次に無菌状態で保護しておいた骨片を生体適合性の高い(要するに身体に負担の少ない)合金プレートで固定する。

「この固定ネジいくらすると思う?」

「600円?」

「7000、落としたら弁償ね」

「ひえー!」

 軽口を叩きながらネジを締め、ドレーンを挿管。いくら糸で結んだとはいえ、頭を切っているのだからどうしても血は出てくる。それを体外に捨てるためのものだ。

 あとは筋肉やら皮膚やらを元の通りに閉じ、なんやかんやあって終わりである。


「がぁーー!終わり!疲れた!」

「いやー!甘いもの食べたいですね!」

「いちごプリン食おうぜ!!!」

「いいですねえ!!」


(以下軽い分岐の草案)

(↑のコユキちゃんはうつ伏せにされてるけど↓のコユキちゃんは座った状態で頭頂部を開けられてます)

(世界線として、下のやつはそもそもコユキを壊す目的で手術に及んでいます)


「ヘローヘイロー!よい子のみんな!お待たせしちゃったねえ!」

「お砂糖の脳室投与の前に、脳機能マッピングのお時間……と行きたい所ですが!クソほど絵面が地味だったのでもうやっちゃいました!」

「脳機能マッピングってのはね!脳の一部に電流を流しながら作業させて、どの部分が何の働きをしているか詳細に調べることだよ!」

「解剖図だと運動野とか視覚野とかきっちり分かれてますけど、実際は個々人で区々なので事前に調べる必要があるんですね!」

「ということできっちりと覚醒済みの被験体さん、画面の前の皆さんに一言、ある?」

『あのっ、たすけ、助けてください!いや!死にたぅ……うる……んっ、んぐ……』

「電気流すとこんな風に喋れなくなりまーす。……ああ、ごめんごめん、遮っちゃったね。私はもうやんないから話していいよ」

『えあ、うぁ……んっ、へんは……せんぱ、先輩、助けて……私まだ、まだやりたいことがっあっ!うぅ、ぐっ!けゆっ……』

「あはは!おもしろーい!」


(↓これは本当に知らん。いつ書いた?)


『まって……やだ、だめたべない、で……』

「この辺かなー?そりゃ」

『……ぷぎゃっ?』

 つぷりとスプーンが脳に差し込まれるのと同時に、コユキの身体がビクリと跳ね上がる。砂糖で意識を溶かされても、なにかとても恐ろしい事が起きているのは理解できているようで、疑問符を浮かべながら

 無遠慮なスプーンは乱暴に脳を切り進み、やがて、ぞるり、とコユキの一部が切り離された。脳がちぎられるという物理的な刺激に、何かしらの神経信号が生じたのか、コユキの全身は細かくカタカタと震え、しばらくして治まる。

 スプーンの上で揺れる桃色のそれには果たしてどれほどの魂が篭っていたのか推し量ることもできないが、コユキの存在が少し失われたのは確かであった。ヘイローの一部は欠けてしまっている。

「あー、んっ!……んー!甘いだけ!おいしくない!」

 わざわざコユキの目の前に一度スプーンを差しだしてから口に放り込む。

「ごめんねー変な神経触っちゃったねー。なるべく長く生かしたまま食べてあげるねー」

『かえ、して……!かえしてぇ……!』

「っかしいなマッピングはちゃんとやったんですけど」

「匙咥えたまま歩かないの。てか、それ前のやつじゃねえかよ」

「あーーっほーーんとだ」

さて私も、と

「ちょっとかき混ぜてートロトロにしてからー」

『らえっ……ろ!っぢ……あっ、おあっ?にぅ……う҉ろ҉ぁ҉?』

 学生食堂で雑談でもしながらカレーライスを混ぜるかのように、はたまた、ファミリーレストランで頼んだリゾットにするように。ちゃぐちゃぐと音を立てながら脳をかき混ぜられ、その度に間の抜けた声を漏らし、ヘイローをひしゃげさせてはコユキの体が力なくビクビクと跳ねる。

 内側の灰白質と、表面の血液交じりの皮質が綯い交ぜになって、薄桃色を呈する。液状化したそれを掬い上げ、レストランでスープを飲むかの如く、いやに上品に口に含んでから一言。

「ふふっ……ほんとだ全然美味しくない」

 コユキの喃語と脳をかき混ぜる音は集音マイクでしっかりと配信に

Report Page