ケミーに嫉妬するりんね
りんね視点の「ケミーに嫉妬するりんね」の話「な、なぁ九堂。そろそろ離れてくれない……?いつまでもこうしてるのも恥ずかしいし……」
いつまでも離れず抱きつく私に、宝太郎は戸惑いながら告げる。
「……」
そんな彼の催促に対する私の答えは勿論NOだ。
『嫌だ、離れるものか』
私の中でそんな気持ちが渦巻く。
こんな気持ちになってるのも全部宝太郎が悪い。
私という存在がいながら、ケミーにばっかり構っているのだ。
宝太郎は、私の幸せな時間を奪った、私を少し不機嫌にさせた。
だから、宝太郎が悪い。こんな状況になったのは私は悪くない。
そう自分を正当化させ、私は彼を抱きしめるのをやめなかった。
勿論、ケミーは彼にとって、私達にとって掛け替えのない仲間だ。
宝太郎の夢でもある『人とケミーの共存』
その一歩として彼がケミーと友達のように触れ合うのは当たり前のことだった。
頭で理解はしている。
友達と過ごす時間は楽しい。
だから宝太郎がケミーと楽しい一時を過ごすのも良いものだということも。
だけど、やっぱりどこか納得できない自分もいる。
私にだって、たまには構ってほしい。
やはり、好きな人にはいつも自分を見ていてほしい。
自分を特別視していてほしい。
ずっと一緒にいてほしい。
そんな自己中心的で邪な気持ちが芽生えてしまった。
だから私はケミーとの絡みを終えたばかりの宝太郎の隙をついて、私は彼を後ろから抱きしめた。
……思い出すだけでもムカムカしてくる。
私はそう感じるとすぐさまより強く宝太郎を抱きしめた。
「く、九堂!!そ、その……当たってるから!!」
当たり前だ、自ら当てていってるのだ。
少し年齢の割に子供っぽいとは言え、宝太郎は男の子なのだ。
それなりにこっち系の羞恥もあるし、耐性なんて無いはずだ。
だから、悪いことをした宝太郎は延々と悶えてしまえば良い。
私という存在に悶えてしまえば良いんだ。
「宝太郎が悪いんだからね……」
そう、これも全部宝太郎が悪いんだ。
私を放置した宝太郎が。
だから私は彼を抱きしめ続ける。
「宝太郎……好きだよ」
軽いかもしれないが、少しの愛の言葉を添えて。
「く、九堂もういいだろ……っ!!」
「ヤダ、ずっとこのまま……」
彼の恥ずかしさなんて知らない。
私の独りよがりでもいい。
それでも私は彼を離さない。
「宝太郎……好き、大好き」
だから、宝太郎。
ちゃんと私にも構ってね?