グローリーホール

グローリーホール


バイト先から帰るとそこには、

「でかいなぁ…。」

いつの間にか壁が部屋にできていた。

壁といっても大したものじゃない。ホームセンターで買ってきたベニヤ板を立たせて床に重りを置き、天井を耐震グッズで固定した簡単なものだ。撤去しようと思えばすぐにでもできるだろう。

問題は、

「何だろうこれ?」

そこに二つの穴が開いていることだ。

一つは縦長の長方形の四角い穴が設置されている。自販機の投入口をイメージすると分かりやすいだろうか。そして穴の上には500円と書かれている。

一方もう一つは丸い直径8cmほどだろうか。首が入らないくらい小さい穴に「Please give me.」と書かれている。なんで英語?そして黒い垂れ幕がかかっておりこちらからは見えなくなっていた。

「ひとまずやっているか。」

そう思い俺は財布の中を確認し、500円玉を入れた。

コトという音が響き、幾何かの静寂が訪れる。

すると丸い穴の垂れ幕が開き、中の様子が見えるように…

「えっ!?」

ならなかった。それは穴が別のもので覆われていたからだ。

健康そうな褐色の肌、プリッとした薄いピンクの唇、おまけにクパァと開いた赤い口内。これは…。

「(何やってるんですか、ゼノビアさん。)」

何回も見たゼノビアの口だった。

俺が呆気にとられている間にも穴の中にある口はクパァ、クパァと開閉を繰り返し、長い舌を口に沿ってレロォ、レロォと回し続けている。

その様はまるで獲物を待ち受ける捕食者や食虫植物のようだ。

「(これってそういうことだよなぁ。)」




「(何をしているのだろう、私は。)」

事の発端は立香の部屋を掃除していた時だった。

お約束といえば良いのか何というか、ベッドの下にあった大人のビデを発見したのだった。

しかし、そのビデオが問題だった。

それは「グローリー・ホール」と呼ばれるジャンルだった。

穴の中にある女の口や女性器に金銭と引き換えに男根を乱暴に出し入れする男性の征服欲を煽る様な作品だったのだ。それは、とても女性にして良い扱いではない。ないが…、

「(ひ、日ごろお世話になっているし!偶には労ってやらねばな!)」

と数日前の出来事を夢想している間にカチャカチャという音が鳴り、あたりに夥しい漢の臭いが漂ってきた。

「(そ、そうか♡バイトから帰って直ぐだものな♡)」

一日の労働の成果とでも言うべきか、汗や垢の臭いを纏った男根が近づいてくるのがわかる。

「(あぁ、来ちゃう♡まだ洗っていないおちんぽ♡私の口に入れられてしまう♡)」

しかし、待てども待てども口の中に入ってこない。

それもそのはず、この男焦らしていた。

ある時は口角にそのいきり立った男根をペチペチと叩き、ある時は口の淵に沿ってグルグルと這わせていた。

「(あっ♡まだ焦らすのか♡お願いだ♡待ちきれないんだ♡早く私の口におちんぽ頂戴♡)」

その願いが通じたのか、男はようやく口に狙いをつけて挿入し始めた。

「(あ♡来た♡来たぁ♡おちんぽ♡汗で少ししょっぱくなったおちんぽが漸く来たぁ♡)」

待望の男根を口で舌で堪能しようとするゼノビア。しかし、そんな猶予は与えられず男は、

「(ングブォ♡♡♡)」

自らの性器を喉奥へと叩きつけた。

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