グルーミング

グルーミング

グエスレのおかげで俺は大変

わかる人にはわかると思うのですが、某エ○ゲーと某名作漫画もパクりかなってレベルで参考にさせて頂きました。

スレッタ目線なので、もしかしたら獣○ぽく見えるかも知れませんが、別に○姦とかではありません。


作中の毛繕い()がどの程度のものなのかは、読んで下さる皆さんのご想像にお任せします。自由に羽ばたけ想像力!

また作中のグエルとスレッタの関係性がどんなものであるのかも、皆さんのご想像にお任せします。





聞き慣れた足音と、彼特有のその気配。

今日も来てくれたんだ……!!


「グエルさんっ!!」


喜びのあまりキューキューという鳴き声を抑えられないまま目を輝かせ、私は彼のもふもふの体に飛び込んでいったのでした。



私の名前はスレッタ。

わけあって、今は地球寮の皆さんのお世話になっている一匹のタヌキです。


ミオリネさんをはじめとした皆さんとここで賑やかに暮らしていたのですが、そこにいつからか彼が訪れるようになったのでした。


それが彼、グエルさん。

紫のかった艶やかな焦げ茶の毛並みのなか、ワンポイントでマゼンタの混じったたてがみ。そして青く透き通った瞳が特徴の、大きくって綺麗なライオンさん。


彼は時々美味しいハムや果物をお土産に、私に会いに来てくれるのでした。



どーーーーーん!!

体当たりにも等しい勢いで抱きつきいたのにも関わらず、彼はよろけることなくしっかりと私を受け止めてくれました。さすがはグエルさん。体幹がしっかりしていますね。


少し困ったような顔で笑って私の頭を肉球でぽんぽんと撫でながら、グルルグルルと何事かうなっています。言葉は通じませんが、多分「相変わらずしょうがねえ奴だなあ」とかそんなようなことを言っているのだと思います。


そんなグエルさんの大きなお手々に、私は思わず頬擦りしてしまいます。今日もモコモコしていて、とても気持ちが良い…。


初めのうちは彼のその威圧的な風貌が恐ろしくて仕方がありませんでしたが、今ではすっかり慣れたものです。

グエルさんからは「コイツにゃやっぱり餌付けが有効なんだなあ」みたいなことを思われていそうですが、いやいや甘く見ないで頂きたい。


そんな態度や眼差しで接され続ければ、流石にわかるってものです。

彼はとても優しいライオンさんなのです。

私がうとうと眠り始めてしまおうものなら、怒りもせずに毛布かけてくれたりしてるのも知ってますしね。


そんな優しいグエルさんです。

私からの再三の要求に、彼が折れないわけは無いのでした。



グエルさんの訪問に際し、私には楽しみにしていることが二つあります。


一つはもちろん、彼が持ち込んでくれ、毎回一緒に食べさせて頂く珍味です。一体どこから調達してくるのかはわかりませんが、何を食べても外れがありません。こんな高級品ばかりを日常的に食べて育ったため、グエルさんはこのようにすくすくと発育なさったのでしょう。正直ちょっと羨ましい。


そのうえさらに、毎回毎回彼は一緒に食べている自分の分け前までも私にそっと分け与えてくれるのです。あまりにも毎回のことなので、「もうはじめからその分量で私のお皿によそったら…?」と思わないでもありませんが、さすがにそれを言ってしまえる程私は図々しくはなれないのでした。

それに彼の分け前をわざわざ分け与えてくれるという、その行動を毎回きちんと眺めたいという欲も無いではないのです。


そしてもう一つの楽しみ。

今日も食後、私はグエルさんにおねだりをするのでした。


くうんきゅうんと甘えるように鳴きながら、グエルさんのたてがみに顔を突っ込んでスリスリと頬擦りをします。

グエルさんはそれに応じるように、ペロペロと私の頬や喉元を舐め始めます。


お土産のほかに、グエルさんが来る度に楽しみにしていること。

それは彼から施される毛繕いなのでした。


はじめのうちは私が彼にそれを要求しても、受け入れてはもらえませんでした。私が毛繕いを要求する度、彼はグオオだのブルルだのと地を這うような低いうなり声をあげ、前足で自身の顔を覆いながら何事か葛藤をしている様子でした。


だけれども、私は本能的にわかっていました。

彼はどこまでいっても優しいライオンさんなのです。

私がこれを要求し続けて、彼が折れないわけが無い。

そしてその目論見は、見事に当たっていたのでした。


粘り続けて大正解でした。

ともかく気持ちが良い…!何もかもが絶妙…!テクニシャンヌ…!

プロと言っても過言ではありません。これはもう、お店が開けるヒーリングレベルでしょう。

でも、グエルさんが他のいろんなひとにこんなことしてるのを想像すると、ちょーっと複雑かなあ…。


「ギャンッ!!」

そんなことをつらつらと考えていると、ガブッと喉元に食いつかれる痛みで意識を引き戻されました。

あ痛ったったったっ!!いたーい、痛いですよ、グエルさん!


グエルさんはジトッとした目で、「よそ事なんか考えてんじゃねえよ」とでも言いたげにこちらを見つめてきます。

わかりました!わかりましたから、もう少し加減して下さい!あなたは甘噛みのつもりなんでしょうけど、タヌキ基準だと生命の危機を感じるレベルで痛かったんですからね…。

前言撤回です。お店を開けるなどと、言語道断。


不服さを伝えるようにうなりつつ、宥めるようにペロッと彼の鼻をひと舐めすると、少しばかり機嫌を直したのかまた毛繕いを再開させてくれるのでした。


そっと押し倒され、大きな前足でがっちりとホールドされながら、体中を毛繕いされます。

頭頂部、おでこ、ほっぺた、耳、首すじ、前足、胸元、お腹に後ろ足……あひゃひゃひゃっ、わきの下までも!くすぐったいですぅ、そこは反則ですぅ!

前足でグエルさんの頭を抱えながら、くすぐったさを訴えます。


そうしてグエルさんに全身毛繕いされていると、今日も不思議な気分になってくるのでした。

頭の中がふわあーーっとして、だけれどもお腹の中がじくじくと疼いてくるような不思議な感覚…。


ふと顔を上げると、いつの間にか鼻先まで迫ってきていたグエルさんとバチッと目が合いました。

感じ入って潤んだような、でも同時に烈しくギラギラと光る、青い眼。

何かに飢えているかのような、荒い吐息が鼻先にかかります。

ガパァッと、大きくその口が開けられる。鋭利な牙が規則正しく並んでいるのがよく見える。


__あっ、私今日こそ食べられちゃうんだ__


でも、グエルさんにだったら別に良いかなあ。

せっかくだから、残さず最後まで美味しく食べて下さいね?

不思議なことに、恐怖を感じることはなく。

ストンと静かな諦めの境地に至り、覚悟を決めて私は目を閉じました。


しかし、予想していた痛みはいつまで経っても襲って来ないのでした。

恐る恐る目を開けると、泣きそうな顔のグエルさん。


「どうしたんですか、グエルさん。

そんな哀しそうな顔をしないで下さい」


という心配の気持ちをうるるーんくるるーんという鳴き声に込めながら、私は前足でグエルさんの頭をわしゃわしゃと撫でるのでした。

そして少しでも彼を元気づけてあげたくて、彼の顔を引き寄せ、大きなお口の横のあたりをペロッとひと舐めします。

泣きそうな顔はそのままではあったけれども、それでも彼は少しだけ目もとを緩ませ、きちんとそれに応えてくれるのでした。



一通り毛繕いが済んだ後、入室してきたミオリネさんから声がかけられました。


「ちょっといいかしら、スレッタ!

グエルに用事があるからさ、しばらく借りるわね。

あんたはその間、ティコの様子でも見に行ってやってくれない?」


…というようなことを、言いたいのだと思います。言葉は通じませんが。

カナリヤのミオリネさんは、相変わらずの美しい声色で私達にそんなようなことを告げました。


今日のグエルさんとのお食事会諸々はこれでおしまいかな?

名残惜しいですが、仕方がありません。

それに別れ際をダラダラ長引かせずにスパッとキめるのも、良い女の条件。

そんなことを誰かが言っていたような気もします。


「はい、わかりました、ミオリネさん!

…今日もありがとうございました、グエルさん。

また、そのうちに♪」


そう言って別れの挨拶の鼻キスをすると、二人同時に息を飲む音が聞こえた気がしました。……いったいどうしたっていうんでしょう?



ミオリネさんから言われた通り、私は地球寮の宿舎にやってきて、ティコさんのもとを訪ねています。


念のため断っておきますが、ティルさんではありません。ティルさんは、私やミオリネさんと同じく地球寮の皆さんにお世話になっている、物静かなオスの羊さんです。


ティコさんは快活な性格と豊満なスタイルが素敵な、人間の女性です。タヌキである私も、思わず憧れてしまいます!


ティコさんは、地球寮の宿舎に私がやってくるのを見つけるや否や、すかさずこんなふうに声をかけてきてくれたのでした。


「よお、スレッタ!

今日はずいぶん体の調子が良さそうじゃねえか。嬉しいよ。

そんな感じでとっとと良くなって、皆を元気づけてやってくれよな。

ほら、グエルだとかもさ、ここに来る度毎回毎回半ベソかいてるみたいだからよ~…」



スレッタが去った後。


ビジネススーツをピシッと着用したミオリネは、長ったらしいため息を吐いた後、冷たくグエルにこう言い放った。


「ねえ、グエル。あんたのやってることってさ。

世間様では何て呼ばれているのか、教えてあげようか。


グルーミングっていうのよ」


同じくビジネススーツを着用し、しかし髪のセットはすっかり崩れてしまったグエルはぽつりと答えた。


「………知ってるよ」








パメスコ後遺症の影響で、人間は動物に見え、動物は人間に見えてしまっているスレッタちゃんのお話でした。

多分そのうち治るんだとは思います。治ってからがまた大変そうだが…。


最後のミオリネの一言は、説教半分、嫉妬が半分。

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