グルーミングとは親愛行動の一種です
ルッチ13歳頃のフールチ小話です。
フーがルッチに無理やりあれする話(本番はありません)
ダメな大人です
「おーい」
「……」
少し軽めに声をかける。
返事は無い。
「チビ猫〜悪かったって」
「……」
謝罪をしてみた。
これにも返事は無い。
「いい加減に機嫌治せよ……」
ため息混じりに言葉をかけても返ってくるのは沈黙だけだ。
目の前の2人がけのソファーにはスーツを身に付けた一頭の小柄な豹が此方にそっぽを向きながら丸まっている。
微動だにしないので眠っているのかと思いきや、声をかける度にビロードのように艶やかな毛並みをした長い尻尾を不機嫌そうにぺしんぺしんと叩きつけているので起きてはいるようだ。
いつもの通り末の幼馴染をからかって遊んでいたらやり過ぎたようでご覧の有様だ。
ブルーノやクマドリなら大人びた幼馴染の普段見られない年相応とも言える行動に眦を下げる所だろうが自分は違う。
先程から謝っても何を言っても無視をされ続けているのだ。全くもって面白くない。
脳内でジャブラの野郎が「そんなんだからお前は駄目なんだよ!」と声を上げていたが無視をすることにした。
「おい、ルッチ……」
痺れを切らして触れようと手を伸ばすとべしんっと長い尻尾で叩かれる。
「……」
ひりひりと痛む掌を見つめていると、もともと長くない堪忍袋の緒が切れた音がした。
そうかそうか。
穏便に済ませようと謝っている奴に対する態度がこれか。
これは少しお仕置が必要だろう。
掌が、人の形から獣の形へと変化していく。
そこから始まり、体全体の形態を変えていく。
静かに、気付かれないように獣型に変化し終わると同時に、目の前のソファに寝そべる相手に飛び掛った。
「!」
仲間には無意識に警戒心が緩む癖に本人は気付いていない。多分これからも誰も指摘はしないだろう。それはルッチの仲間内にしか見せない可愛げだ。
「お前さ、豹の姿なら手を出されないって思ってんだろ?」
そう囁きながら背後から小さな豹に伸し掛る。
突然の負荷にソファからギシギシッ……と軋む音がした。
まさか今まで謝っていた男に襲われるとは思っていなかったのだろう、驚きでルッチの耳は横にピンと向いている。
その耳に更に続けて囁く。
「俺もこの姿になったら獣同士、なんの問題もないと思わねぇか?」
まぁ豹とサーベルタイガー、多少の違いはあるが誤差の範疇だろう。
「お前の機嫌がなおるまでグルーミングしてやらぁ!!!」
そう言い放つと同時に緊張のせいで横になっていた相手の耳をベロンと舐め上げた。
「なっ、なにを……」
ようやく身体が動いたのか、首を捻りながらこちらを向いて言葉を発した豹の鼻先も舐め上げる。
それに驚いたのか途端に長い尻尾がぶわっと根元から膨らんだ。
そのまま顔から首筋にかけてベロンベロンと長い舌で舐め続けるとじたばたと押さえ付けていた身体が暴れ始める。
「おっとこの体勢で逃げられると思うなよ?」
へっへっへと、いつか言われた巫山戯たにやけ面で笑いかけると苛立ち混じりの非難があがる。
「いきなり何なんだ!!」
「何なんだだとぉ?」
散々人を無視してそれはないだろう。
「謝ってんのにお前が無視するからだろうが!」
「……は……」
ぽかんとした顔は普段なら見物だが、そんな事で?と言わんばかりのその顔にムカッとしたので更に追加でベロンとひと舐めお見舞いしてやった。
子供に無視をされると大人は傷つくのだ。
その事を思い知らせてやろう。
「もう無視なんてしませんって言うまで止めてやらねぇぞ……」
サーベルタイガーからしてみれば豹なんぞ子猫の様なものだ。思うままに転がしてグルーミングをしてやろう。
「……っ誰が言うか……!」
ルッチのこの性格は損だなぁ、と思いながら口でスーツを咥えながら脱がせ始める。口の両側から生えている牙が少し邪魔だが、いざとなれば破けばいい。
背中の傷跡を舐めればどんな反応を返すだろうか。
どれくらいで泣き言をもらすかなと鼻唄混じりで行為に没頭し始めた。
談話室の壁に「グルーミングは親愛行動です。一方的な行為はやめましょう」と達筆な文字で貼り紙がされるのはこれからしばらく経ってからの事である。