クロコ回想

クロコ回想



「っ―――――――!!みんな!」


ドーン、という、遠くから響く爆音に、私は目を覚ました。


記憶を決死で掘り起こす。

巨大な何か。一瞬の閃光。突き飛ばされて……。


吹き飛ばされて……。


「ここ、瓦礫の中?」


皆は、どうなったの?

助けは……?分からない。


ホシノ先輩が駆けつけるまで、私の身体がどうなるかも。


「~~~~~~っ!」


体勢を直せない状態で、自分の上にあった瓦礫をどけることができたのは幸運だった。


「……、みんな、だいじょ……」


……けれど。それで私の幸運は尽きたみたいだった。


目の前にあるのは、巨大なクレーターと、もう動かない機械仕掛けの蛇。


「ノノミ!!アヤネ!!セリカ!!!」


慌てて、駆け出そうとして、何かにつまずく。


「ノ、ノ……」


目に入ったのは、砲身だった。

見覚えのある砲身だった。


だから、私は、振り返らずにさらに、穴の底へと走った。


私を突き飛ばしたのは。ノノミだった。アヤネとセリカは、更に奥にいた。

つまりは、そういうことだと。理解してしまった。


「誰か、誰かっ、だれかぁ!!!」


狂ったように、喉が裂けそうなくらいに叫ぶ。

あるいは、もう私はくるっていたのかもしれない。


有り得ない返答を期待して、ありえないことを口に出す。

そう、こんな場所に、誰かいるなんて―――――――


「ああああああああああああああああああああああ!!!!もう、痛い、痛い、痛い、痛い!!!!!!!!」


聞き覚えのある声が、瓦礫の下から聞こえた。


「アル!!」


「あー。うん。少し落ち着いたわ。久しぶりね。シロコ」


可笑しくなりそうな思考の中で見つけた、友人に私は駆け寄る。

見えるのは、彼女の顔の一部と、腕だけ。

瓦礫は大きくて、私ではどかせそうにない。


「すぐ、助けを」


「いらない」


「何を、言ってるの」


どう考えても、すぐに救助がいる。

じゃないと、死んでしまう。


「いいから、聞いて。私は絶対に助からない」


心臓が、握りつぶされるような痛みが走る。


「……まぁ、あんたの仲間の仇くらいは取れたわ。私は、ここで眠るから、あなたは先生に会うといいわ」


「……っ、先生?」


そんなこと、して、何になるのか。

先生は、もう、死んでいるはずなのに。


「浦和ハナコは前を向いていたわ。壊れることもなく、ただ、前を……、なら、何か手段があるはずよ。彼女は聡明なはずだもの。それに、小鳥遊ホシノも、きっとそこにいる。」


「ホシノ、せんぱいが」


「武器、ないでしょ。私の銃。コートと一緒に墓標にするつもりだったけど。持っていきなさい」


穴の底から彼女の指が指し示す方向を見れば、未だ、銃に結びつけられたそのコートが風にはためいていた


「t――――――アル」


「走りなさい。それが。生き残った者の責任よ」


「……ん、わかった。……一つ、依頼がある」


「何。特別に、ロハで引き受けてあげるわよ」


「……皆をお願い。私はもう、帰ってこれないから」


アルも、ああいっていたのに。

私は、なんでこんなことを、言ってしまったのだろう。


けれど。


「えぇ。……便利屋68。その依頼、引き受けたわ」


しっかりと、その言葉は、私の耳に届いた。


「……行ってくる」


「……えぇ、さようなら。シロコ。……」


私は走り出す。

……私の後ろから聞こえる声は、もう、なくなっていた。

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