クリスマスの珍客

クリスマスの珍客

netai98

閲覧していただきありがとうございます。

12日担当のnetai98です。

拙作「ドラゴンリーダー」のまだ主がいた頃のssとなります。

 逆月 ◆NOOM.s様からの引継ぎで書かせていただきました。

楽しんでいただければ幸いです。




世間はクリスマスではあるが、我の日常に変化はない

ひっそりとした場所にテントを張り、テレビでも見ながら依頼人を待つ、なんともまあ彩のないことだ…

仲間が「せめてケーキだけでも食わせてくれ!」と主に懇願していたが

「下手に祝うと呪われるんだよ…勘弁してほしい…」

と、主が逆に懇願していた、あの主は見ていて居た堪れなかったな…仲間も目を逸らしていたし…

そんなことを考えつつテント内に設置されているテレビに目を向ける、ケーキはなくとも特番はあるのだ、去年は【激闘!吸血鬼VS十字架!誇りは一体どこへ!?】だったな…あれは馬鹿馬鹿しくて面白かった…

少しウキウキしつつテレビを付けようとしたときだった

「リーダー、お前にお客さんが来てるのー」

なんともまあタイミングの悪い…というか我に客だと?我のことを知る者なぞ限られてるはずなんだが…

まあいい、不届きものなら焼き殺すまでだ…

警戒しつつ、入口を開ける、そこには


「你好!この辺にドラゴンがいると聞いてね!つい来てしまったよ!」


龍がいた

…帰ってくれ、頼むから

「わざわざ中国?ってところから来てもらったんだから上がってもらうの」

その手にはプリンが握られていた



竜にも種類がいる

例えば中国などにいる【龍】、天候操作や怪我と病気の治療等に長けている

主に北側にいる【ワイバーン】、これといった特殊能力は持たず、炎を噴ける奴も早々いないのだが、身体能力に関しては並び立つものなどいない

西によくいる【ドラゴン】はこれといって特に特徴はない、だが努力すればなんでもできる


「粗茶なの、てきとーに飲むといいの」

「ああいえ、お構いなく」

…目の前の龍を改めてみる、見た感じかなりの強さを持っている、我等のことを聞いて来たと言っていたし、どこか大きな組織に所属しているのだろう

なぜわざわざ我等を訪ねてきた?我等の身柄が目的なら客人として来ずとも襲撃すればよいではないか

「いきなり来てしまってすまないね、私は【十二龍(シアロン)】、先ほども言ったがこのあたりにドラゴンが住んでいるという報告…もとい噂を聞いてね、同族と会えるのは貴重だからね、こうやって挨拶に来たんだよ」

と、シアロンと名乗る龍は身振り手振りを交えつつ自己紹介した

「そうだ!お土産を持ってきたんだよ!きっと気に入ってくれるはずさ!」

そういいながら懐から小袋を取り出す

わざわざ土産まで持ってくるとは…下手なものを出すとは思わんが警戒するに越したことはない…

「はい、仙丹」※不老不死になって仙人になる薬

争いの火種を持ち込むな馬鹿野郎

「と言ってもあと持ってるのは仲間から持たされた月餅しかないんだけど…」

その仲間に是非とも礼を言いたいな、それでいいからさっさとその薬を仕舞え

貴重なものなのに…とか言いながら渋々仕舞う様子を見て警戒してたのがあほらしくなってきた、とりあえず話だけ聞いてさっさと帰ってもらおう…これ以上なにかされるのは御免だ

で、なぜわざわざこんな辺鄙なところに来たんだ?まさか本当に会うのが目的なのか?

「…ああ、同族は隠れ住んでるのが多いからね、折角会えるのなら会いたいのさ」

嘘ではないのだろう、隠してるつもりなんだろうがシアロンからは主が我を心配するときに似た気配を感じる

だが、同族とはいえなぜここまで心配されなければならない?

シアロン、お前は我等のことをどこまで知っている、言っておくが誤魔化しが通用すると思うなよ

「…そう、だね、わかった、全部話すよ」

観念したかのように手を上げ、話始める

「リーダー、君のことが話題になったのはつい最近のことだ、仲間たちとある組織について調べている時にある研究所の研究成果にたどり着いてね…そこから君について知ったのさ」

…それで?

「当初は君を処分する方向で決まりかけていた、融合されてまともな人格を保っているとは思えなかったからだ、だけど、私は信じたかった、同族がまともな自我を保っていることをね…」

つまり、シアロン達と敵対してる組織を追っていたら我等にたどり着き、そして我等の処遇について決めかねている、と

それで、我等をどうする気だ?貴様らが何者かは知らんが主に危害が加わるようであれば…!

「勘違いしないでほしい、むしろその事態を避けるために私が来たんだ、一度私だけでリーダーに接触し、問題ないようであれば様子を見る、という風にするためにね…」

…その言葉に偽りはないのだろう、なぜ、なぜわざわざそのようなことを?身の危険を顧みず、貴様だけで…?

「…同情と同族のよしみ、それと興味かな、最初は私も処分に賛成していたよ、だけど君が誰にも危害を加えていないことと実験の詳細を知るにつれて君への同情心が強くなっていってね…それで仲間たちと相談をして今回君を訪ねてきたということさ」

…今まで我は同族から隠れるようにして暮らしてきた、同族から奇異の目で見られるのが恐ろしかったからだ、貴様は…シアロンはそういう目で見ないのか?

「まさか、他の種族ならともかく、竜がそんな目では見ないよ、他でもない私が保証する」

目を伏せ、今までのことを回想する

同胞と暮らしていたあの頃

襲撃され、実験を受けていた時

そして、主との出会いを

「君はよき主と出会えたみたいだね、少し羨ましいかな」

ああ、そうだろう、我の、いや、俺自身の自慢だ



「それじゃあ私はここらでお暇するよ、皆にも色々話さないといけないからね、それとこれ、連絡先ね、何かあったら相談に乗るよ

それと…はいこれ」

あれから他愛のない雑談をし、いい時間になったので解散となった

そして…この木札は一体?

「招待状さ、毎年この時期に十二支によるパレードを行うんだよ、これを見せれば関係者扱いになるからごはんも食べ放題だよ」

なんともまあ太っ腹なことだ…ん?十二支…関係者…龍…そして【十二龍(シアロン)】…

お前神獣だったのか

「まあさすがにバレるよね…そうとも、我こそは十二支の子孫であり、来年の十二支担当の十二龍であるぞ!」

そうか、わざわざありがとう、行けたら行こう

「反応薄いなあ…そしてそれ行かないやつだよね…?」

冗談だ、まあなんとか時間は作ってやるとも

「本当かな…まあなんだ、主に愛想つかしたらいつでも来なさい、歓迎するから」

永遠にこないことを言うもんじゃないぞ

…ではな、お節介な同族よ

「それじゃあね、同族さん達」

そう言い残し、シアロンは飛び去って行った…

今回の件で我等…いや、俺の懸念は少し晴れたように思える

今まで同族の目を恐れていた、同族から否定されるのが恐ろしかったのだ

だが、それは俺自身の考えすぎだったのだ

それを教えてくれたクリスマスの珍客、シアロンには礼をせねばなるまい…


土産に何を持っていくかを考えつつ、木札を主に見せに向かった…




「リーダー、この小袋の中の金ぴかは一体なんなのー?」

あの野郎仙丹置いていきやがったな…!





ここまで見ていただき、ありがとうございました。

明日は安馬様の記事となります。



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