クザコビ愛憎セッ……

クザコビ愛憎セッ……




 壁に押し付けられた背中に残る噛み跡や鬱血痕に傷跡は、自分が付けたものでは無い。確か昨日はシリュウが散々「可愛がっていた」筈だ。痛々しいその跡に舌を這わせてがり、と歯を立てると可哀想な程華奢な身体が震えて、ぎゅう、とナカが締まる。

「痛いのが好きなんだ?」

 揶揄う様に、嘲る様に耳元で囁いてみる。コビーは唇を噛んでぶんぶんと首を振っているが、痛みにすら感じているのはとうに分かり切っている事だった。男としての機能が無いに等しくなったコビーの性器はふるふると震えている。クザンはそれを掴むと容赦無く扱いてやる。

「ああ、あ、ぃや……ああ……っ」

 ぱた、た、と少量の精液が壁に掛かる。コビーの絶頂と共に中の締め付けが強くなる。クザンはコビーの腰を掴み直して肌を打ち付けた。ヒートアップして行く動きに、コビーの足が段々と宙に浮いて行く。辛うじて片足が爪先立っているくらいだ。

「や、いや……っ、とま、て、とまってくだ、さ……ッ……」

 涙ながらに此方を振り返って、懇願して来るコビーを無視して。クザンはそのまま一度自身を引き抜くと、コビーの体を回転させて向きあう形になった。背中を壁に打ち付けたコビーが呻く。両足がほんの少しだけ床から浮いた位置のまま、クザンはコビーの両手を頭上に纏めて能力を発動させる。両手を壁に氷付けにされ、身動きが取れなくなったコビーは怯えた顔でクザンを見上げて来る。その顔にどうしようも無い愉悦を覚えて、自身の口角が上がっているのを自覚する。

「っアあ゛……〜〜〜っ、!!」

 両脚を抱えて一気に奥まで貫くと、コビーは喉を反らせてがくがくと体を震わせた。短い間隔での絶頂に息を整えている彼を気にせずにガツガツと奥を叩けば、コビーはいやいやと首を振った。

「おろし、て、おろしてえ……っ! ひぐ、ぅ、こわい、こわ、い……っ! ぁぅ、あ、ああっ!」

「そんな事言いながら締め付けて来てんのはそっちでしょうが。怖い癖に感じてるんだ? 淫乱だなァ。こんな所見たら、ガープさんがなんて思うかね」

「うう……っ!」

 ぼろぼろと涙を溢すコビーは、これ以上喘ぎ声を出すまいと唇を強く噛んだ。肌が切れたのか血が一筋流れ始める。それを見たクザンはコビーの唇に指を這わせて、無理矢理唇をこじ開けた。そして。

「っ、んん……っ!」

 唇を重ねて、口内を蹂躙する。ぐちゅぐちゅと唾液が混じる中で、血の味が微かにする。唇を離すとコビーの目は虚になっていた。ペチペチと頬を叩くと、瞬きをした後にクザンと視線が交差する。恐怖が浮かんだ目に、どうしようも無い興奮と。どうしようも無い苛立ちが、生まれて来る。指を口内に突っ込んで、「噛まないでよ」と言いながらまた動きを再開した。宙に浮いた片足がじた、と暴れている。空を掻く足がどうしようも無く愉快だった。






 ずるりと自身を引き抜くとぼたぼたと精液が床に滴り落ちた。能力を解くと氷が解けていく。落ちて来た手は当然の事ながら酷く冷え切っていた。ぐったりと気を失っているコビーの体をクザンはそっと受け止めて、中に出したものを掻き出そうと水場へ運ぼうとした、その時。

「また随分楽しんだみてェだなァ」

「……ティーチ」

 いつからいたのか、それとも今来たばかりなのか。ティーチは楽しげにクザンを見ていたが、腕の中でぐったりとしているコビーを見て眉を顰めた。

「相変わらず可哀想な事するなァ?」

「どの口が言ってるんだか」

「少なくともおれらはお互いに楽しんでやってるがな。お前さんはそうじゃねえだろう?」

「……」

「おーおー、冷え切っちまって。あんまやってるとドクQから止められちまうぜ」

 コビーの手に触れるティーチに、クザンはコビーを押し付けた。どうせコビーとするつもりで来たのだろうから。

「おいおい、せめて掻き出してからにしろよ。何が悲しくてお前の出したやつの後処理なんざしなきゃいけねえんだ」

「……、ん……」

 ティーチが文句を言うと同時に、コビーが身じろぎする。ぱちりと目を開けて、自分を抱えていた相手を認識すると「てぃ、ち」と安心した様に身を預ける。クザンには決して見せない表情だ。呆れた顔をしていたティーチはコビーの頭をゆるりと撫でながら、「仕方ねえなァ」と水場へ向かった。しばらくは出て来ないだろう。

「……」

 こんな事をしたって、彼への感情は更にごちゃごちゃとして行くだけなのに。コビーの恐怖に塗れた顔が愛おしくて、自分以外に見せる安堵の顔が憎々しい。どうしようも無い感情を抱えたまま、クザンはその場を立ち去った。

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