クインハーバーにて④

クインハーバーにて④


【CPあり/4ソフィ/5ノレ】


クインハーバーの山間地区に1機のザウォートが隠蔽していた。

一見普通のザウォートに見えたが、頭部ユニットがザウォート・ヘヴィの物に置き換わっている。ビームバルカンの替わりにズーム式レンズとセンサー類に変えられており、左肩のミサイルポッドには煙幕弾が擬されている。

装甲も山間迷彩に変えられた、試作の偵察型ザウォートだ。

「まだでてこないねえ」

複座式のコ・パイシートでソフィが呟く。


あれから半月ほど時が過ぎ、認定中古機の取引こそあれど、15年式デミトレーナー自体のタマ数が減ってきたせいなのか、情報が入らなくなってきた矢先のこと。

──山間のある工場に、所属不明機の3機の15年式が運び込まれたらしい──

『という噂があってな。どう思う?』

元々が型落ちとなるデミトレーナーの、しかも一部の型式のみを集めているという動機が不明ではあったが、そこで追跡調査をしていた所属不明機の一部が現れた、というわけだ。

無論これが、追跡調査をしていた6機以外の機体である可能性もあるが、

「追っていた機体の可能性のほうが、高い気はするね」

4号はエラン・ケレスにそう答えた。

『だろうな。そういうわけで継続して調査だ。偵察型仕様のザウォートを1機手配してある』


工場の試験区域と思わしき場所に1機のデミトレーナーが鎮座していたが、性能評価なりを行うと見ていた他のデミトレーナーは、まだ姿を見せない。

「…さっさと出てくればいいのに」

言葉に微量の棘を含ませてノレアが呟く。

(あーこりゃ、5号ちゃん不足がだいぶヤバそう)

元々がちょっとフーテンぽい5号なだけに、任務とかのタイミングが悪い重なり方したせいで、もう5日は逢えてないことになる。

そうなると私もノレアも、フォルドの夜明けにいて、お兄ちゃんたちと知り合う前のようなテンションにだだ下がりするのだ。

「>任務中 ノレアかわいそー 早く戻れバカ」

とだけ5号にメッセージを送っておく。

「…出てきた」

ノレアの呟きに合わせて、試験区域に向けていたガンカメラを指向すると、やや装甲が継ぎ接ぎ気味のデミトレーナーらしきMSが見えた。

「デミギャリソンの装甲を一部使ってる?」

デミギャリソンはフロント管理社が制式採用しているMSだ。学園が採用していたデミトレーナーの実戦配備向けでもあるため、機種転換も容易では有る。

「でも装甲変えただけじゃねえ?」

「いや、ちょっと待って」

一旦動きを止めたデミトレーナーをズームして追うノレア。

「あれは…シェルユニット?」

膝部にデミトレーナーには無いはずの集中演算装置、シェルユニットが装化されているのが見えた。

シェルユニット自体はGUNDフォーマットとは関係なく取り付けられている装置だ。フライ・バイ・パーメットを支える装置として、高度な演算を必要とする機体には採用されているが、デミトレーナーに採用されていたとは聞いたことがない。

しかも、シェルユニットの発光はそれだけではない。

再び動作を開始したデミトレーナーは、膝部のみならず、頭部と胸部からも橙色の発光をしながら動き出したのだ。

「…デミトレーナーって学園規定でパーメットスコア上げられた?」

「ブリオン社の制式はそもそも規約内でパーメットスコア2以内であることを条件に保安部品の集中演算装置取り付けを免除されてるの」

コンソールで捉えているデミトレーナーのパーメットスコアは既に3を示している。

「あは♡ もう違法改造バレバレじゃん、いやーな予感しかしなーい」

言葉とは裏腹に楽しげに言うソフィ。

「バカなこと言わない。武装オミットした偵察型なんだから」

スタートスイッチを入れながらノレアは続けた。

「気づかれたら、スッ飛んで逃げるよ!」



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