クイカイ
丸い大きな体の餅みたいな男は何杯目か分からぬ汁粉をすすった。
休憩でお汁粉、ご飯とお汁粉、肉とお汁粉、デザートでお汁粉、酒とお汁粉。辺り一帯に甘い香りが広がって、クイーンは今日もエキサイトだった。カイドウとさしで飲むこともエキサイトを加速させていた。
「クイーン!飲んでるか?」
「飲んでますって。もうそれ聞くの三回目すっよカイドウさん」
「ん?そうだったかァ?ウィ~~~」
顔を赤らめて手元の酒を流し込んだカイドウは笑いながらクイーンの肩に頭をすり寄せた。
「今日はやたらとご機嫌じゃないっすか」
「ああ」
穏やかな雰囲気で手に持つ空の杯を揺らすカイドウにクイーンは飲んでいた酒を注いだ。するとカイドウはどこか満足そうに笑う。
「お前はまたお汁粉か」
「お汁粉は完全食ですんで」
「そうか。そんな甘ぇもんばっか食ってよォ…クイーンは変わってるな。小豆になったりしねぇよな…?」
「ならねーよ!!ってか酒浸りのカイドウさんには言われたくないっすね」
「ウォロロロ…言うじゃねェか」
笑い上戸なのかカイドウはやたら笑った。そんな風にして二人してグデグデ酒やら何やらを食べていたからか、夜が更ける頃にはカイドウはべろんべろんに酔っぱらってしまった。
座るのが面倒になったのか、カイドウは床に寝そべってむずがるように辺りに散らかした酒樽を部屋の隅に押しやっている。
その様子を見て、これはこのまま爆睡コースかな。なんてクイーンが考えているとどうにもカイドウの様子がおかしい。いつも惜しげもなく晒している逞しい彫刻のような腹筋に何やら小さくて赤い突起が複数できているのだ。なんか生娘の乳首みたいだな。と思いつつ、そんな訳ないだろうとクイーンはかぶりを振った。
「カイドウさんなんか腹にできものみてーなのができてるぜ?大丈夫か?」
「ああ~?…!!」
うとうとしていたカイドウはクイーンの言葉に訝し気に自分の腹を見て目を見開いた。
「な、なぜ…」
「え?なんか原因あるんすか?痛くないですか?」
「これは……その…痛くはない…」
「ふ~ん…これ、なんなんです?」
目線をうろうろさせるカイドウにクイーンは目を細めた。痛い訳ではないらしい。数秒黙っていたカイドウはクイーンのやけに鋭い目線に耐えかねたのかぼそぼそと喋った。
「………乳首だ」
「乳首ぃ?乳首ってカイドウさんには自前のがもともと…悪魔の実の影響か?」
カイドウは赤い顔をしかめながらこくりと頷いた。そんなカイドウの様子にムラッとしたクイーンはお汁粉のお代わりをよそうくらいに自然と腹の乳首を摘まんだ。
「んぉあっ……クイーン!!」
「やだな~触診っすよ触診」
「問題ねェから触るな!」
「いや。問題ならある」
「?」
横に座って深刻そうな顔をするクイーンにカイドウは横たわったまま首を傾げた。
「最強のカイドウさんに、こんな分かりやすい弱点が出来ちまった…」
「は?」
「だって、ほんのちょっと触っただけであんなに喘いじまうんだぜ…こんなのエッチ過ぎるだろ!!」
カイドウは乳首を摘ままれただけでへたり込んでしまっている己の現状を思い返した。
この空間にツッコミをしてくれるやつは居なかった。
「……」
「そんなカイドウさんに提案があるぜ!」
「なんだ?」
「乳首いっぱい弄って鍛えて最強になっちゃおう☆企画~!!」
「…そろそろ寝る時間だな。クイーン…あぐっ!?」
「だが!寝させない!」
クイーンはカイドウが身を起こしきる前に乳首に向かって手を出した。
「じゃ、触診しちゃいますね~」
「バカっ触るな、クイーン…!」
「触るなって、確認しないと不安なんすよ。おれはアンタを守る大看板なんだし」
「それとこれとじゃ話がちがっ」
「それに…こんなにもの欲しそうに尖ってるじゃないっすか。触ってあげなきゃかわいそうってもんだ」
ノシノシ迫るクイーン、カイドウの腹筋で潰されるクイーンの腹。
何だか現実感のない光景にカイドウは反応を遅らせてしまった。
乳首への刺激に耐えかねて腹を丸めて頭を垂れたカイドウの耳元でささやいて、赤く染まった乳首を指先で弾くとカイドウは面白いくらいに体を跳ねさせた。
「ぐう、やだ、それ、強すぎるからァ…ん♡」
「アンタが最強なんで大丈夫っすよ。」
「そういう問題じゃねェって…♡はぁ、ひっ…うああ」
クイーンは持前の研究者魂とスケベ心でカイドウの乳首を弄り倒した。いやいや言いながらもカイドウは逃げなかったので気持ち良かったのだろう。
後日、クイーンは何かが入ったビーカーを嬉しそうに持ってカイドウの部屋を訪ねてきた。
「カイドウさーん!出来たぜ!おれ様の最新最強作!!」
「…何か頼んでたか?」
「いやだなぁ忘れちまったんすか?ほら、この前の~」
もったいぶるようにしながら、クイーンはカイドウの近くへとズムズム弾むように移動してくる。そして座っているカイドウの耳元におもむろに顔を寄せてヒソヒソと話しかけた。
「乳首いっぱい弄って鍛えて最強になっちゃおう☆企画、っすよ」
「!」
今は乳首のちの字もない腹を撫でられて、カイドウは思わず息を詰めた。その手を払いのけるとカイドウはクイーンを押しやった。
「っ、散々弄ったじゃねェか」
「え、あれで終わったつもりだったんすか?あれは概要説明っていうか…まだまだですって」
そう言って笑うとクイーンはビーカーを掲げた。
「おれの計算では、この軟膏を塗ればカイドウさんのモロ感乳首も丈夫になるって寸法よ。この後予定ないっすよね?カイドウさん」
そう言って再び迫るクイーンの姿のあまりの胡散臭さに、カイドウはため息をついた。
「モロ感とか言うな」