ギラリタ&ヤンヒメSS『惚れた弱み』
※注意※
・ギラとリタ、ヤンマとヒメノが付き合っている
・ヤンヒメ要素あり
・Hシーンなし
・キャラ崩壊
・リタ視点とヤンマ視点でコロコロ変わる
最終決戦を前に、シュゴッダムにて壮行会が開かれ、招待を受けた各国の王達は参列している。
「それにしても…‘あの’日、オージャカリバーのより強い力を引き出してから初めて五道化と戦った時、リタとギラ息ぴったりだったわね」
ヒメノから言われてそうか?と返したリタは続く投げ掛けに固まる。
「もしかして…身も心も結ばれた?」
「 ッ、?!!」
ヒメノはリタが紅くなっているだろう顔を見られないよう俯いたことに気づかない様子で何も言わないで(言えないで)いるのを否定しないと判断したのか
「素敵!」
声を弾ませた。
「どうだった?初めてを迎えた次の日の朝は」
ヒメノが嬉々として訊いてくる。
リタは恥ずかしくて堪らない、けれど、自分のことみたいに喜んでいる友人を無碍にできない。
そのとき、
「やめてやれ、ヒメノ」
少々呆れたような顔のヤンマが脇から口を挟んできた。
「話の腰を折らないで!」
ヒメノが不服気に突っ撥ねる。
「リタとギラが進展したのよ!おめでたいじゃない!
私はリタがギラといる時どういう感じなのか知りたいの!」
「否、プライバシーつうもんがあるだろよ」
「私だって惚気たいし」
「………は?!いや、はぁ?!ヒメノ、お前…なに言ってんだッ?!」
「私も惚気たい」
「も一回キレイに言い直してんじゃねェーっ!!」
「リタがギラと遂に結ばれたと聞いて、私…初めての夜のこと思い出しちゃった」
「…っ、…めろ」
「次の日、目覚めた時の朝焼けが綺麗だったとか…世界が前よりずっとキラキラして輝いて見えたとか…」
「…めろ、」
「隣で眠るあなたの横顔が思いの外 幼くて可愛かったなぁとか」
「!!やめろー!///」
「??どうしたの?顔、赤いわよ?」
「~~~/// 」
心底 不思議そうな表情(かお)をするヒメノに、ヤンマはダァーッと叫んでその場にしゃがみ込んだ。
(公開処刑だろこれ…)
リタは内心そう思い、ヤンマに同情する。
屈んで、ヤンマの肩にそっと手を添えた。
「大丈夫か」
「…ちょっと…大丈夫じゃねぇ」
珍しく語気が弱々しい。
「……えーっと、…その…、ヒメノは普段もあんな感じなのか…?」
何と言えばいいのか、リタは詰まりながら尋ねた(結局 追い打ちも同然になってしまった気もするが他に浮かばなかった)。
「…まぁな…。やめてくれって言ってンだが、厭なの?って聞かれたらさ……」
厭じゃねーし…と小声で漏らして溜息を吐く。
「惚れた弱みってやつ…」
「…なるほど……」
惚れた弱み――それはリタもギラに対して持ち合わせている感覚。
リタはギラのどんな言動も許している。
好きだとか愛しているだとか、折に触れ、ギラは伝えてくれる。可愛いや綺麗だよもよく口にする。――恥ずかしい。嬉しい、けれど、恥ずかしい。から、そんな頻繁に言わなくていい…と思うのに「こういうこと言われるの、イヤ…?」と無垢な瞳に見られながら訊かれたら「厭でないよ」と答えるしかなくなる。
ギラはハグが好きらしく事あるごとに抱き付いてくる。身体をギュとされると心もギュ~と掴まれる。
「リタさんと一緒に寝たい」と言われて恥ずかしくて黙っていたら「ダメ?」と幼子のような面(かお)をするから絆されて「いいぞ」と応え、一つのベッドでギラと共に眠った夜もある。
「リタさんを抱き締めて眠りたい」なんて告げられた夜もあった。その夜もギラのあどけなさにきゅんとして、彼の腕の中で一晩 過ごした(ドキドキしてあまり眠れなかったことはギラには秘密だ)。
何を言われても何をされても…恥ずかしくても…相手がギラだとなんだかんだ許してしまう…。
ギラになら何を言われても何をされても構わない。なんて…
―――惚れた弱みだな…
リタはふっと笑みを浮かべて
「私も同じようなものだ」
ヤンマに言葉を掛けた。
「そっか」
短く返してヤンマも口角を上げる。
互いにシンパシーを感じる瞬間だった。
「ふたりで何こそこそ話しているの?」
頭上から降ってきたヒメノの声にヤンマが腰を上げる。リタも立った。
「私はリタとまだまだ恋バナするんだから、あなたはあっち行ってて!」
ヒメノがヤンマの背中を押して追い払おうとしている。が、そこでヤンマが身体を反転させてヒメノの手を取り
「ヒメノ、ちょっとこっち来い」
彼女を連れ去った。
ヤンマはヒメノをコーカサスカブト城の奥にある一室に連れ込んだ。ヒメノを壁際に追い詰める。
「いきなり何?!」
「お前、いい加減にしろよ」
「何?!そんなにリタと恋の話しちゃ駄目ッ?!」
「なんでそんなに話したいんだよ…」
「リタは初めてできたお友達だから」
「あ?」
「イシャバーナの女王になってから、私にはこんなこと話せる友達はいないわ。
だから、リタは女王の座に就いて初めてできた友達なの。
リタね、ギラと付き合うようになってから雰囲気がやわらかくなったのよ。ギラといると幸せそうで嬉しくなって…私もあなたと過ごすのが幸せってリタに伝えたくて…。
私は…リタと…友達と…恋人と一緒の時間は幸せよねって楽しく語りたいだけ」
「ヒメノがリタを友達だと思ってるのはわかった。
リタと友達じゃなきゃできない話――恋愛話がしたいというのがお前の考えだってのもわかった。けど…」
(好きな奴とのアレコレ語り合って何が楽しいんだ…??)
女ってわかんねーとヤンマは思いつつ
「俺はその手の話、恥ずかしいんだよ…」
「だったら話に入ってこなければいいじゃない!」
「!!そういうことじゃなくてだなァ!」
「どういうことよ?!」
「あーもうッ」
どう言えばヒメノに伝わるのか…巧い言葉が浮かばなくて。
ドンッ ――ヤンマは壁に手をついた。
「お前、黙れよ」
ヤンマはヒメノの唇を塞ぐ。
「…んっ…は、 ヤン、マ…ッ」
しばらくして離した。
少しは大人しくなったか…?――ヤンマはヒメノを見遣る。
「……ずるい…」
下を向いてヒメノがぽつり呟いた。
彼女は俯いているからその表情は見えないけれど、長い髪から覗く耳がほんのり紅く染まっているから照れているのだろう。
「無理矢理は悪かった…けど、俺は!」
ヒメノに向けて思うところを紡ぐ。
「俺とお前が過ごす時間を誰にも知られたくないというか…ふたりの時間は俺とヒメノだけの思い出にしておきたいというか…」
ヤンマの胸の内を聴いたからなのか、ヒメノが顔を上げる。
「って…言っててガキっぽくて恥じィな…」
照れ臭くてヤンマは鼻の頭を掻いた。
そんなヤンマを見て、ヒメノはにっこり微笑む。
「ヤンマって…時々ロマンチストよね」
「?!!ロマンチ…!!///」
思ってもみないことを指摘されてヤンマは焦る。
「照れてるの?かわいい~」
(揶揄いやがって…ッ!
ってか、可愛いのはお前の方だろうがっ…!)
くすくす笑うヒメノを横目に
―――後でゼッテーいっぱい啼かせる…!!
そう心の中で決めるヤンマであった。
「リタさん」
恋人に呼び掛けられ、リタは振り返る。
「ギラ、どうした?」
つい先刻までヒメノにギラとの仲を訊かれていたものだから本人の登場に実は動揺しているリタである。その動揺を抑えてどうしたんだと尋ねた。
「うん、あのね…」
ギラが内緒話をするように耳打ちする。
「今夜、お城に泊まっていってほしいなって」
彼はこちらの表情を窺うように見てくる。
(ッ、私がそういう顔に弱いと知って…いないだろうなギラは…)
リタは今夜コーカサスカブト城に泊まるつもりでいた。
「久し振りに恋人と過ごしたらどうですかー?今は急ぎの裁判はないですし」などと側近が気を利かせてくれたので有り難くそうさせてもらうことにしたのだ。
尤もギラにそのことは話していないから城に一泊できるかは不透明だったけれど。まさか、ギラの方から誘われるとは…。
「あぁ。そうする」
肯けば、ギラは無邪気な笑みを浮かべた。
その夜。
宴はお開きとなり、各国の王達は帰って行った。
リタはいまギラの部屋にいる。…ギラとふたりきりだ。ベッドの端にふたり並んで座っている。
「久し振りだね…ふたりきりなの」
「…そうだな///」
久し振りのふたりきり。――ギラにはっきりと言われて、改めて実感し今更 羞恥が込み上がってくる。
ドキドキと胸が早鐘を打つ。
ギラに気づかれたくなくて
「英気も養ったことだし、決戦に向けて気を引き締めないといけない」
リタは話を逸らした。
「うん。きっと裏コマンド使うことになるだろうから…」
ギラが視線を遠くに遣る。
使うことになるだろうからの先を彼は言わない。
凌牙一閃の力は途轍もなく強大でその反動は凄まじかった。それを前の闘いで身を以て感じた。
最終決戦で扱うのなら…今度こそ生きて帰られるかどうか。――口に出さなくともお互いわかっている。
「だから…、」
ギラが、こちらを真っ直ぐ見つめて、こう告げた。
「僕は今夜リタさんと強く繋がりたい」
この言葉の意味がわからないリタではない。
ギラの想いに気づかない訳がない。
「……ギラ…」
ギラの、想いを、知らない振りなんてしない。ギラの、想いを、受け止めないなんてない。ギラを、受け容れないなんてこと有り得ない。
ギラ、私は…――身も心もおまえのものだ…
「わかった」
リタはギラの想いに応え、
「リタ…」
ギラはリタの唇に自分のそれを重ねた。
リタはギラにゆっくり押し倒され…ベッドの上でふたつの身体が交わっていく。
月明かりがふたりをやさしく照らしていた―――。