・ギャルを信じてやってください

・ギャルを信じてやってください



僕はギャルが苦手だ。

理由は単純で、高校の頃にクラスの陽キャ共のせいでろくな目にあってないから。

そういう苦い経験もあって、二次元のキャラでもギャル系はあまり好きになれない。

今やっているウマ娘でもそうだ。ジョーダン、ヘリオス、パーマー、あとはゴールドシチーとかになるだろうか。皆いい子だと理解してはいるのだが、どうしても避けてしまう。


「さてと、デイリー育成終わったしウマカテでも見るかな」


暇潰しにあにまん掲示板のウマカテを開こうとすると、目の前がピカッと光り、思わず目を瞑った。


「な、なに!?」


突然の出来事に上ずった声を上げて、そろそろ光が消えたかと思い目を開くとそこには一人の美少女がいた。

髪はツンハネショートの薄い金髪。頭にはピクピク動く髪と同じ色のウマ娘みたいな耳があり、紫色でアメジストのような輝きのクリクリした大きな瞳。トレセン制服らしき服装の上からでも分かるようなサイズ感の胸、これまた髪と同色の金色の尻尾が揺れており、完全にウマ娘だ。

ただこんな感じのウマ娘がいた記憶はない。強いて言えばカレンチャンが少し似ているが芦毛だし……というか現実にウマ娘が現れるというのが信じがたい出来事だ。

ニュースで突然ウマ娘が出現するという現象が起きていること自体は知っているが、まさか自分のところで起きるとは夢にも思わなかった。


「だ、誰…」


「お、キミがアタシの相手のオタクくん?じゃあ早速始めちゃお!」


そう言って彼女は僕に抱きついてきた。豊満な胸が押し当てられていたたまれなくなる。


「ま、待って!何が起きたのか説明してよ」


「…あ、ごめんごめん!アタシね、『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』ってのがスマホ見てたら目の前に出てきたけん、押してみたとよ」


ウマ娘になる代わりに、あにまん民と強制的に…?そんな冗談みたいボタンがあるなんて信じがたい。

でも、このウマ娘は実際に僕の前に突然現れた。これが夢でなく現実だとしたら、そんな嘘みたいなことも信じざるを得ないわけで。


「そしたらウマ娘になってキミんとこに来たっちゃんね。アタシちょっと女の子の身体に興味あったからさー」


そこで引っ掛かることがあった。『女の子の身体に興味がある』ということはつまり、逆説的に考えると女の子ではなかったということになる。


「ちょっと待って、それってウマ娘になる前は…」


「うん?男やったけど」


元男か……しかもギャルっぽい感じだし、美少女なのは間違いないのだが乗り気がしない。

なんとか話をそらそうと、話題を考えて…。


「ウマ娘になってそんな感じってことは、元はいわゆるチャラ男とかだったり…?」


言った後になって後悔する。あまりにも話の振り方が下手じゃないか。


「まあそうやね、よく中洲で遊んでたし」


「ウマ娘とかオタク系、嫌いじゃないの?」


高校の時にバカにされたことを思い出して思わず聞いてしまった。正直人によっては怒られても仕方ないが、彼女は朗らかな様子で答える。


「あはは、アタシらのことなんと思っとんよ?他のやつは知らんけどアタシは普通に好きやったよ」


「そ、そうなんだ……ごめん」


「別に気にしてないから良かよ。ちなみにウマ娘やったらダイヤちゃんが好きかなー、一緒にゲームしたら楽しそうでしょ?ゲーセンよく行っとったし」


ネットでは童貞が好きそうなウマ娘の代表格扱いされるサトノダイヤモンドだが、こういうチャラ男?にも好まれてるんだなと思い直した。

まあ童貞陰キャである僕も推しキャラの一人にしてるんだけど。しかも好きな理由は巨乳でお嬢様だからというなんとも安直な理由で…。


「僕も実は…ダイヤちゃん推しだったり…」


「マジ?仲間やん!」


再び強く抱き締められて胸の感触に心臓が飛び出しそうになる。抜け出そうともがくと彼女は耳元で口を開く。


「あ、結局エッチ…なんだけど」


「えっ」


あれだけ頑張った話題そらしが普通に失敗して絶句する。あの努力は無駄だったのか。


「今のとこのキミ、あんま乗り気じゃなさそうだし…保留にしとく?」


「ああ、うん……それで」


先送りしたところで問題が解決するわけではないが、ひとまず安心する。


「でもちゃんと覚悟とかは決めといてね?」


「はい……」


こうしたことがあり、その日から僕の家にはギャル系ウマ娘が同居することになった。







一緒に暮らし始めて数日が経過して、人となりが分かってきた。彼女は優しく気配りができる人で、僕は陽キャというだけで一瞬でも偏見を向けたことを恥じた。

“真の陽キャ”とか“オタクに優しいギャル”なんて実在するわけないと思っていたけど、その考えを改めるべきだと思った。

…まあ彼女はオタクに優しいというよりは誰にでも優しい、の方が適切だとは思うけど。


「ね…オタクくん……」


そんなことを考えていると、頬を赤らめて苦しそうに呼吸する彼女が僕の部屋に来た。明らかに普段とは違う様子で、心配になる。


「どうしたの、何があった?」


「お腹の奥がジンジンして……体、熱いっちゃん……」


もしかして、ボタンの強制的にエッチ…というのはこういうことなのか。だとしたら、僕は。


「あ、あの……僕、やるよ」


彼女が苦しそうなら、それを取り除く手段が僕次第ならば。この数日間、少なからず家事とかでお世話になったし、彼女を楽にしてあげたい。そう思って僕は決心した。


「うん……じゃあ、そっちで……」


そうして僕と彼女は、二人でベッドへと入った。





「くっ……ふ………」


コトを終えて、名残惜しく感じながらも離れる。彼女も女としては未経験だろうに、ずっと僕を気持ちよくしようとしてくれたのを思い返す。


「んっ…卒業おめでと」


彼女は僕にニッコリと微笑んでくれる。なんというか、陳腐な表現だけど……女神とさえ思える。

そして……きっとウマ娘になる前に出会っても、僕の陽キャへの偏見を解いてくれるような人だったんだろうなと感じる。


「うん……ありがとう……初めてなのに、こっちを気遣ってくれて」


「いいよ、アタシも実はちょっと楽しかったけん」


「そっか」


「ね、もしキミが良ければ、だけど……もうしばらくここに居させてほしいっちゃけど、いい?」


彼女には料理や掃除、洗濯でこの数日間ずっと助かっていた。彼女の方から居たい、というのであれば断る理由がない。


「はい……お願いします」


「じゃ、決まりやね」


二人で頷いて、それから僕はスマホを手に取る。デイリー育成をまだやってないことを思い出したからだ。


(……育成してみるか)


そうして僕は、すり抜けで引いたけど放置していたトーセンジョーダンをタップし育成を開始した。



月毛ギャルちゃん


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