キング×TF俺くん
ガチムチダイナレスリング「上手なセックスを教えてください」
「いきなりどうした!?」
「キングにパンクラトプスを寝取られそうな危機感に、最大の敵にこそ師事すべしとそう思い立った次第ですはい」
「一応言っとくけど、お前ら二人の仲は本心から応援してるからな俺?」
「分かってるけど、こう男として負けっぱなしは悔しいじゃん?」
「思い当たる節がありすぎる……まさか俺が『あっち側』になるとは……クソボケて無いよな俺?」
「それは大丈夫だと思うよ、というかあんなクソボケ誰も真似できないでしょ」
「それなら安心だけど……でもそれ俺とセックスするって話になるよな?」
「今度はキングがタチでヤろうって約束してたじゃん」
「約束した覚えはねェな……」
ご主人の無茶振りはいつものこととはいえ、一度寝たからって調子に乗るのは頂けない。
流されないように強く意思を持って断ることにした。
「そもそもパンクラが許してくれねェだろ、また腹パン食らうのは嫌だぞ俺」
「ああ、それなら」
『キングとのセックスそんなに良かった?』
『しつこい奴だな、というかお前もキングと寝たんだろうが』
『いやまあ、良かったし楽しかったけどパンクラトプスがそこまで惚れ込むほどだったかなと』
『惚れ込んだわけではないのだが……一度ちゃんと抱かれてみれば分かると思うぞ』
『えっ、またキングとセックスしていいの?』
『まぁ、お前とあいつなら変なことにはならないだろうし……それに俺もキングとまた寝てちょっと気持ち確かめたいところがあるからその対価だ』
『何か俺の側から言い出しそうなことをパンクラトプスが言い始めると違和感凄い……』
『悪かったな!』
『それじゃまあ、お互いキングとのセックスについてはフリーということで』
『一応事後報告はちゃんとしろよな』
『そっちもね』
「ということになりまして」
「なに他人の意思を無視して都合がいいオモチャ扱いしてくれてんだこのバカップル!?」
「あらこういうのお嫌い?」
「嫌いじゃないけどお前ら二人の場合はちょっと事情違うというか……」
「腹括れよ色男」
「うっ……」
「それにほら、俺抱いたらまたパンクラトプスを抱く口実にできるぞ〜?」
一度抱いたことで気持ちの整理もついた筈だというのに。
目の前の悪魔の囁きに勝手に期待し始めた愚息に、自分の堪え性の無さに若干の自己嫌悪を覚えながら肯首する他無かった。
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「じゅっぷ、ぬっぷ……んほおぉ〜やっぱりキングのチ◯コたまんねぇ〜」
「口でするの好きだよなご主人」
「『今日からお前が口にできるのは俺たちのザーメンだけだ、餓死したくなけりゃしっかりご奉仕しな!』みたいなシチュ憧れる」
「流石の俺でもそこまでは無理かな……」
「うーん……このまま飲み干したいような、濃いのでたっぷり種付けして欲しいような……」
「まあそのあたりはご主人に任せるから好きにしろよ」
逸物をしゃぶらせながらご主人の肛門に舌先を挿し入れ準備をする。
太さのあるパンクラトプスの逸物を受け入れているだけあって入念にほぐさなくても余裕がありそうだ。
しかしご主人がなかなか俺の息子を手放してくれないので自然と尻穴を味わう時間も長くなってしまう。
まあこれはこれで嫌ではないのだが。
「そういえばキングは俺の尻舐めてくれるんだ?」
「ご主人相手なら割とな、というかパンクラ相手に慣れたもんじゃねえの?」
「いやパンクラトプスには舐めさせてないから、なんか恥ずかしいし」
「何で俺相手だと構わないんだよ!?」
「キングは楽しんでくれるのわかってるし……こう、無理させたり汚いとか思われたら嫌じゃん?」
「雄同士で盛り合う実感欲しいっていうんなら、そういうのパンクラにも我慢させながら教え込んでいけよ」
「でも未だに精液の味にも慣れてないしなあ……パンクラトプスが自分から求めてくるまで気長に待つよ」
この身体になってご主人も大分図太くなったかと思っていたが本質は簡単には変わらないらしい。
パンクラトプス自身は割とそういうことを強要されることも望んでいるように思えるのだが、まあ本人たちが気づくのに任せた方がいいだろう。
「というかさっさと本番移りたいからザーメン飲むか飲まないかさっさと決めてくれない?」
「うぅ〜……いやホントにこのおチ◯ポが魅力的過ぎて」
「そんなに欲しけりゃ後でも遊ばせてやるから、ほら早く」
「絶倫だからこそ一番搾りは大事にして欲しい……ッ!!」
謎の理論を拳を握って熱く語るご主人に再度催促すれば尻を御所望だったので、フェラを切り上げ仰向けに寝てもらう。
物欲しそうに桃色に熟れた肛門に亀頭を当てがう。
「パンクラにやった感じ基準に、恋人同士の丁寧なセックスって感じでいいんだよな?」
「いや〜ん、キングのお嫁さんにされちゃう〜」
「あのなァご主人、恥ずかしいのはわかるけど茶化しすぎると雰囲気壊れて感度も上がらねェぞ?」
「…………はい……すみません」
そう言いながらこちらの恥ずかしさもかなり一杯一杯なので一旦整理。
いろいろ無茶やらされて迷惑もいっぱいかけられているが、それはお互い様だし気安くて馬鹿やればウマが合うし一緒にいて楽しい。
友人を超えた親愛の念の自覚もあるし、掛け替えのない存在だとは思う。
こうして身体を重ねられることも嬉しいと思える。
…………よし。
「愛してるぜ、ご主人」
真剣な瞳を向けて、顔の距離を詰める。
そのまま唇を重ね、舌先と陰茎を同時に挿入した。
食らいつくように深く口を重ね、互いの唾液を混ぜ合いながら舌を絡める。
背中に回された腕は力強く相手を求め合い少し痛いぐらいだ。
密着した腹筋の間に挟まれたご主人の男性器は窮屈そうに拍動しては先走りを垂れ流し、汗と混じっては鱗肌に薄く引き伸ばされてゆく。
腰回りもほとんど密着させたまま、引き抜くというよりは軽く腰を浮かせては届く範囲を確かめるようにゆったりと胎内を掻き混ぜてゆく。
動きの緩慢さに反比例するかのように、興奮に呼吸は荒く全身から汗が噴き出している。
上昇していく体温を感じ合いながらあらゆる体液を搾り出し、ねっとりと絡み合ってゆく。
呼気と、水音と、汗の蒸気に包まれた領域だけが世界から切り離されていく。
ここには俺たち二人しかいない。
もう目の前の存在しか縋るものがないから、求め、昂ってゆく。
熱病に魘されるように昂っているのに、その熱の終わりが見えない。
射精にだけは至らない。
至らないまま、溶け合い、高みに登ってゆく。
頭の中は白み、微睡むように快感に揺蕩っていく。
肉体の輪郭がぼやけ、一つになってゆく。
それはとても幸福なことだった。
永遠を願うほどに幸福だった。
だからこそ、引き剥がした。
二つに別れようとする肉体を惜しんだ彼の指先が背中の皮膚を荒らす。
唾液の糸を引きながら唇を離し、首筋に吸い付いて、浅く牙を立てた。
背中と首筋、それぞれに生まれる僅かな痛み。
痛みは境界だ。
夢が醒めるように、痛みによって曖昧となっていた現実との境界を踏み越える。
少し寂しい。
だがそれでいい。
一つになることが幸福でも、二人でなければならないのだ。
本質的な孤独を、欠片のままの形で埋め合わせなければ至ることができない。
俺はそういう愛し方しかできない。
胸を引き剥がし、腹を引き剥がし、腰を引き剥がし。
全て抜き出す直前から再び深く突き入れる。
初めて響く、肉が肉を叩く音。
まだここは繋がっている。
まだここは溶け合っている。
熱さも、喜びも、曖昧さも、ただ一本の肉棒に集約されてゆく。
突くたびに漏れる声は言葉を紡がない。
もっと繋がりたいと叫びたいのにその気持ちを十全に伝えられないことを惜しむかのように、言葉にならない。
終わりたくない。
終わりが欲しい。
相反する想いを抱えながら腰を振る速度が上がっていく。
先に果てたのは相手の方だった。
短く喉を震わせていた呼吸が、絶頂に腹を白く染め上げるとともに、失ってしまったものを後悔するような長い音となって肺から押し出されている。
そして俺も果てる。
嗚呼、確かにこれは喪失だ。
自分の肉体の一部だったものが切り離されて、他人の身体へ注がれてゆく。
失ってゆく。
でもそれはもっと先へ繋がるための機能だから。
男同士だからこの刹那でしか繋がらないけれど、確かに今俺は孕ましている。
冷めていく熱への寂寥感と、確かに得たものへの満足感。
繋がりを保ったまま、疲労から倒れ込むように再び身体を重ね、そして唇を重ねた。
幾ら惜しんでも一度絶頂に達した満足感や多幸感は時間と共に失われてゆく。
また失ってゆく。
失ったものを数えるのはやめて、まだ失われていないものを数えた。
例えば肉体の火照り。
例えば貪ることへの衝動。
例えば肉棒の硬さ。
弛緩したご主人を抱きしめれば、力を取り戻して抱きしめ返してくれた。
唾液と唾液、精液を汗を混ぜ合わせながら、再び密着する二つの肉体。
そうして俺たちは二つを一つに溶け合わせては二つに引き剥がす作業を、また一からやり直した。
遠く闇を切り裂く曙光が二人の時間に終わりを告げるまで、何度でも、何度でも。
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「ふわぁ〜、流石に徹夜はヤり過ぎたか……あ、パンクラトプスおはよう」
「応おはようさん、って大丈夫か!?」
「あ、この噛み跡? ちゃんと優しく噛んでくれたから大丈夫」
「あの馬鹿、他人のモノを傷物にしやがって」
「まぁまぁ……いやしかし、参考のために恋人のフリしただけだったハズなんだけどなぁ」
「まさか惚れたとか抜かす気か?」
「勿論パンクラトプスが一番なんだけどまぁ……仮にその次の席があったら?」
「あのスケコマシは手加減を知らんのか!」
「因みにパンクラトプスの中だと?」
「うっ……そ、そういう席を作るのはどうかとは思うが、作った方が座りがいいなら吝かでもないような……」
「分かった分かった、じゃあまた抱かれてきなさい」
「何かもう、男としてどんどん堕落していってしまっているような気がする……」
「安心してよ、落ちるときは一緒だから」
「そこは『止めてあげる』じゃないんだな……」
「いっそ3Pしてみる? キングのテクでアヘ顔晒してるの互いに見たほうがスッキリするかもしれないよ?」
「…………あ、ダメだ。 嫌だって拒否反応の前に一考してしまった時点でなんかもう詰んでる」
とんでもない会話が漏れ聞こえたので急いで割って入った。
「好き勝手話し進めんなよ2度と3Pとかしねーよトラウマなんだよバーカバーカバカップル! だから俺はお前らの都合がいいオモチャじゃねえ!!」
本心からの言葉なのにこの二人相手だと押し切られそうな悪寒。
珍しく自らの下半身の奔放さを深く反省した俺なのだった。