キングとモブ下っ端

キングとモブ下っ端


子どもに対する虐待描写があります。注意。


おれが百獣海賊団に入ったのは、まだ五、六歳くらいのことだ。ほら、ここって結構、敵対してた海賊団を潰して、そこのガキを引き取ったりなんかしてるだろう? あれだよあれ。


おれはしょぼくれた海賊団のクソみてェな船員を親に生まれた。父親も母親もおれを罵倒し、殴り、それ以外の船員だっておれをサンドバッグのように扱ってた。

なんなら、動き回られると邪魔だっつって、椅子や柱に縛り付けられてたこともある。トイレにも行けねェで垂れ流しだ。そんで、百獣と交戦になっちまった時もそうだった。

剣だの銃だの、そこかしこでうるせェ戦闘音がして、おれは怯えながら唇を噛んで悲鳴を堪えてた。ハハ、どんなことがあっても「黙ってろ」と命令されりゃあ守るしかなかったのさ。折檻されたかねェからな。

涙と汗と鼻水で顔はグチョグチョで、垂れ流したもんで下も臭ェし気持ち悪かったのを覚えてるよ。泣きながら必死にどうでもいいことを考えてた。次の島についたらどうにかここを逃げようとかな。海賊団が壊滅しかけてんだ、島に着くわきゃねェのによ。

しばらくそうしてて、ふと辺りが静かになってることに気づいたんだ。いつの間にかな。全員死んじまったんだろう。でももし、誰か生きてたら? おれが拘束を外れたらきっと怒られる。そう思って動けなかった。

その時に、おれが閉じ込められてた部屋の戸が開いたんだ。おれは咄嗟に目を閉じた。殴られちまうと思ったんだ。でも違った。その人間はおれと柱をくっつけてた縄を切ってくれたんだ。助けられたんだよ。誰にだと思う? ――大看板のキング様だよ!

キング様はあの大きな手で、汚ェおれの体をオモチャみてェに鷲掴みにしたんだ。そのままおれを眼前に持ち上げて、色々聞かれた。

「お前はこの船のガキか」

「戦闘は?」

「見習いですらねェのか」

「なぜ縛られていた」

矢継ぎ早の質問になんとか答えたと思ったら、おれァいつの間にか百獣の船に乗せられていた。


そっからおれは、ここで下っ端をやってるんだよ。

……え? なんでそうなるんだって? さァな。おれの方が聞きてェよ。なんでおれを助けてくれたんだろうなァ、あの人は。同情かな。なんでもいいんだけどよ。

ま、だからさ。おれァあの人に恩があるわけだ。一生かけても返せねェほどの恩が。だからな? あの人がいくら強ェったってよ……お前のようにコソコソと人の秘密を嗅ぎ回る奴がいたら、なァ? 良くねェだろ? 何が言いてェか? ハハ、んなもん一つしかねェだろ。

お前はここで死ね。

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