キラーさんが二年後キラーさん(ムキムキラーさん)に出会う謎シチュ

キラーさんが二年後キラーさん(ムキムキラーさん)に出会う謎シチュ


キラーさんが二年後キラーさんに出会う謎シチュエーションがどうしても頭離れなかったので導入だけ書きました


※書きたいとこしか書いていないので場面飛び飛び
※※キラーメイン回、ロー←キッド、幼馴染、友情、都市伝説?SF?成分なども含む
※ムキムキラーさんはキラーさんの未来の可能性の一つ、別方向へ進む可能性もある
※続きを書く予定はないのでなんかもう好きにしてください
※誤字脱字とか解釈違いあってもなんかこう、脳内フィルターで上手いこと処理してくださいすみません……









 往生際の悪い幼馴染共を夏期補習へ蹴りだし玄関を勢いよく閉める。さしずめ弁当を受け取りに来てそのままウチでサボろうって魂胆だったんだろう。確かに九時-十七時コースだと聞いた時には同情したがそれはそれだ、流石にここで甘やかす気にはならない。

 掃除して、洗濯して、買い物……は昨日行った。夏期課題は週末皆でやるからとりあえず置いておく。たまには一人でダラダラする日があるのもいい。
 ……そういえば、駅前のレンタルスタジオのドラムが新調されたんだった。居間のカレンダーを見ると今日の欄は綺麗に空白。決まりだ。洗濯機の呼び出し音が妙に機嫌よく響いた。


✕ ✕


 陽の強さに耐えきれず、コンビニの軒先、くっきりと濃い屋根の影に二人で滑りこんだ。汗でベタベタになっている不織布マスクをずり下げペットボトルを口に付ける。ああ、もうろくに残ってやしねえ。たまたま出くわしたトラファルガーも怨めしげに太陽を見ている。腹立たしいほどに晴れ渡った空にはオレンジ色が混ざりつつあった。
「レンタルスタジオ行ってたってことはドラムか」
「そうだが……ドラムの話したことあったか?」
「ユースタス屋のやつがなにかにつけ自慢してきやがるんだ。『キラーはあれが出来る、これが凄い』だの」
「そりゃなんつーか……なんだ、本当……」
「別に、あいつがガキなだけだろ。くだらねぇことでつっかかられるよりずっとましだ」
 本当にキッドはガキだ。トラファルガーの前では特に。おれや舎弟たちに接する時のように接すれば印象はだいぶ好転するだろうに、それが出来ないでいる。態度を意識的に変えられるような奴じゃないから、土台無理な話なのかもしれないが。

 ……ああ、だが、そんな馬鹿な様子に安堵してしまうおれは更にガキだ。クソガキだ。おれもトラファルガーのことが好きだ、ただし友人として。クラスの中でも話しやすいやつだし、勉強を教えあうこともある。人間性も――まあ、手放しで褒められない部分も多々含んではいるが――おおよそ尊敬している。
 だから、余計に拳に力が籠る。そっと背中に隠し、腕まで震えないように力を抑えこむ。
「まあそうだな、ガキだが悪いやつじゃない、それは保証する。今後も仲良くしてやってくれよ」
「……いつまで保護者ヅラし続けるんだ?」
 降って湧いた意味の分からないフレーズに脳みそを揺すられる。いつの間にか地面を舐めてしまっていた視線を戻す。トラファルガーはこちらを見ながらもう一度口を開こうとしたが、零れたのは言葉ではなく重苦しい息の塊だった。


✕ ✕


「くそ!」
 ロロノアの奴じゃあるまいし。しかし悲しいことに、ここは今まで一度も通ったことのない、来る気もなければ存在すらも知らなかった路地だった。こんなことになるなら、録音だの楽譜確認だのでスマホのバッテリーを使い切るんじゃなかった。暗くなり始めているのもあり方向感覚が段々怪しくなってくる。
 どうしてこうなったかなんて、そりゃあ当然トラファルガーとの会話しかない。あいつの背中を曲がり角の向こうに見送った途端何も考えたくなくなって、いつもならさして興味が湧かないはずの路地裏へ駆け込んで、ぐちゃぐちゃに走り回って。結果このザマだ。
「ファ、本当にガキじゃねェか」
 まあ、両親は揃って長期出張中だ。キッドもボニーも今夜はバイトだって言っていた。だから、大丈夫。誰かに心配をかけるようなことも、誰かの手を煩わすようなことも、おれはしない。したくない。

 酒と油と下水の臭いが混じってる。目にしみるのはどこかから流れてくる排煙だ。いっそ適当なビルに登って大通りの方角を確認すればいいか。そもそもこの辺りの地区はなんと言うのだろう、その類いの看板をさっきから一枚も見ていない。しっかし人気がなさすぎやしないか。古びたビルやアパートが並んではいるが、明かりらしい明かりもなければ音も殆ど聞こえない。それでも試しに意識してみると、何かがこそこそ這い回っているような気配だけはうっすらある。まるで、そこにいるのに、無理矢理息を潜めているような。気づかれないよう懸命に堪えているかのような。
「……気持ち悪い」
「そりゃそうだろうな」
 声、頭の真後ろ。
 振り返りながら全力で飛び退く。全身が膨れ上がったようだ。こんなふうに不意をつかれるのはいつぶりだ? 重心を落としビル影に埋もれた男を睨む。背は同じくらいだがおれよりずっと筋肉質だ。長いモサモサの金髪。同じくモサモサの顎髭。Tシャツにジーンズ、肝心の表情はよく見えない。
「……帰り道知りたいんだろ?」
 少し年上らしい。優しい言い方と声だとは思うし、大人っぽい余裕と自信も感じられる。ああ、良い奴なんだろう、こいつは。間違いない。


 ――だが、それが、むしろ、尚更。
 今は心底腹立たしく思えて仕方なかった。


✕ ✕


「B-4裏区?」
「最近よく聞く噂だろ。駅前の路地裏奥では次元が歪んでるとか、心の弱ってる奴は幻覚見るとか」
「未来の日付が書かれた新聞持って帰ってきたやつもいたらしいぜ? ただ、載ってた宝くじの当選番号が実際の結果と合わなかったから『うそつき』呼ばわりされたんだって」
「おれが聞いたのだとさ、三日以内に帰ってこれないとみんなの記憶から消えちまうんだって、こわ〜」
「バカだな、そんなこと本当に起こったって誰も気づけねーじゃん。やっぱこんな話嘘に決まってるだろ」

 中坊共の声にやたらと気が散る。ポテトとシェイクだけで一時間近く粘りやがって、空いていなかったら即刻叩きだしだぞてめェら。店長の寛大さに感謝しやがれ。
 フライヤーの奥からボニーがひょいと顔を出す。今日はつまみ食いしてないのか、珍しい。
「キラー、どうしたんだろうな。連絡つかないなんて珍しいよな?」
「あとで家凸る、どのみち弁当箱返さねーと怒るのあいつの方だろ」
「……おい! ユースタス屋! ボニー屋!」
 誰が来たかなんてすぐ分かった。あいつが一人でこの店来るなんて珍しいが、あの語気の荒さじゃ面倒な話に違いない。くそ、今日はつまらねェことばかり起こりやがる。
 なあなあな挨拶をしながらレジ横に出たところで気づいた。どうやらトラファルガーは怒っている訳じゃないらしい。今から緊急手術でもするみてェな顔でおれの顔を真っすぐ見てくる。
 いつもなら、ああ好きだなちくしょう、と思って終いだったはずだ。ただ今夜に限っては嫌な予感が頭を占めやがる。閉店までもう十分もなかった。

Report Page