キャンディキスチャレンジ
「ん……ふ……」
ぴちゃぴちゃと水の跳ねるような音が微かに部屋の中で響く。
「どうだ?分かったか?」
「わ……かんね、あにき……」
興奮でぼーっとアラマキを眺めるクザン。彼らは今、「キャンディキスチャレンジ」をしていた。
片方が先に飴玉を舐め、その後にキスをしてもう片方が飴の味を当てる、という恋人同士でやる遊びである。
部下が話しているのをアラマキが聞いたらしく、クザンに「やるぞ!!」と部屋に押し掛けたのがつい先ほど。その部下とやらにクザンは心から感謝した。
「(あ~、兄貴の顔良いな。声も良い。好きだ。口の中が甘いな。どうしよう、結局なんの味か分からなかった。飽きられたか?嫌だ、もっと、もっとくれよ、兄貴)……なァ、もっかいやらせてくれよ」
ぐるぐると思考を巡らして、それでも答えは出ずに“もう一度”をねだる。
「良いぜ。しっかり集中しろよ」
優しい義兄は、それを許してくれた。
再び二人の顔が近づく。
「(おれの義弟かわいいな~~~~!!!)」
クザンと舌を絡めつつ、アラマキは心の内で叫んだ。
実際のところ、アラマキは飴玉を舐めてなどいない。それどころか、唾液を樹液や花の蜜に変えて甘さを誤魔化す徹底ぶりである。
部下から「キャンディキスチャレンジ」という遊びを聞いたのは本当。だが、本当に飴の味を当てるだけなら敏いクザン相手ではすぐに終わってしまうだろう。
そう、アラマキはただ可愛い義弟とキスしたかっただけなのだ。
てっきりこちらの思惑に気づくだろうと思っていたが……どうやら、シチュエーションにいっぱいいっぱいのようだ。
「(それはそれでからかいがいがあるな!らはは!)」
普段は大口を開けて笑うところを、目を細めるに留めてクザンの様子を眺めた。可愛い義弟は息をつく暇もないほどがっついている。
義弟との時間を心底楽しみたいアラマキは、無意識か否か腰を抱き寄せてきたクザンに身を委ねた。