キャラメル・ショコラの他愛
※ショコラの喋り方捏造
カイドウと別れてからの時間軸
山の奥深くで見つけた満開の桜を愛でながらお菓子とお酒を楽しんでいたところに現れた山賊の存在はキャメルをずっと不機嫌にさせていた。
桜を傷つけたくないと離れた場所まで引き付けて、死体を谷底の川に片付けてもまだプリプリと怒っているのだからわたしはすっかり困ってしまった。
いつもなら傍にいて撫でさせてあげるだけである程度落ち着くのだけれど。
『一人だとやっぱりダメかしら』
と、ため息混じりに呟くとキャメルは不思議そうに
「ショコラと二人で毎日楽しいよ」
と言うものだから更にわたしは頭を悩ませる。
すっかり日も暮れてしまい桜を眼下に見下ろしながら野宿を決めて厚手の毛布を取り出し丸まるわたしに寄りかかり、死体が持っていた荷物から見つけた久しぶりの情報である新聞を広げて出てきた顔に漸くキャメルの機嫌は浮上した様だった。
「また懸賞金上がったね! もう私より上だよ! これって凄く早いよね?」
それは貴方が公には死んでることになってるから実際は多分もっと⋯⋯という事実は言わずに同意するとキャメルは嬉しそうに流石クロだなあと頷く。
「私と違って賢いからなあ。この三面記事のこれ! この事件も多分クロだね、これのせいで海賊の進路が変わって」
夢中で喋るキャメルを静かに見守っているとふと何かに気付いて飴玉を一つ口に頬張った。
「これだとすぐ会うのは無理そうかな。もう少し寄り道して」
『すぐ行きましょう』
被せる様に鳴くと、背中越しに驚いた空気が伝わる。
「? でも忙しそうだよ。手紙にしとくとか」
「その間に拠点が変わったら手紙が迷子になってしまうかもしれないわ」
「じゃあ電話にする? そこら辺に電伝虫いるかな」
『あの子の元気な顔をちゃんと確認したいのよ。キャメルもそうでしょう」
「⋯⋯そう、そうだね。私も会いたい」
その言葉にほっとする。
「お前の相棒は⋯⋯⋯⋯死んだ。もう、どこにもいないんだ⋯⋯自由になれよ」
そんな言葉と共に別れた、幼いあの子の顔と去っていく背中を見てしまえば会わない選択肢は消えているのだから。
キャメル一人では確実に気を利かせてしまう。手紙なんて恐らく絶対にとんでもなく、ろくな結末にならないと思っていたのでこの言葉を引き出せた事に深く安堵した。
「あれマカロン」
星を見上げて今日もお菓子の星座を作り出す相棒に付き添ってすっかり甘いものだらけになってしまった夜空を眺める。
真っ直ぐ行くはずが寄り道に寄り道を重ねて二人と別れてから半年。
きっとこの先も寄り道は止めないでしょうから会えるのはずっと先でしょうけど⋯⋯。
わたしはそっと再会した時のクロの怒りが少しでも減ることを気休め程度に流れ星にお願いしておく事にしたのだった。