キミに伝えたい言葉
2年間の修行を経て、おれ達は再びシャボンディ諸島で集まった
一見相変わらずなように見える奴も、随分ガラリと変わった奴もいる
特にナミさんとロビンちゃんは美しさにさらなる磨きがかかり、一目見ただけでおれは天にも昇るような夢心地で……
だがおれが何よりも驚いたのは…あの唯我独尊で、脳筋で、2年前以上にアル中になったアホマリモに!
しっかり者で、礼儀正しく、そして超絶キュートな妹ができていたという事だ!!
といっても、あの子とマリモは血の繋がった兄妹ではないんだけど
フミコちゃんはサメの人魚で、マリモ野郎の妹だ
1年半ぐらい前、鷹の目の根城に流れ着いたところを保護されてそのままいっしょに生活していたらしい
保護された当初はそれ以前の記憶がなく、自分の名前もわからなかったらしい
そんなあの子を最初に見つけたのがマリモで、あの子に「フミコ」って名前をつけたのもマリモ
だからフミコちゃんはアイツに一番に懐いてる
あの子がアイツについてきたのも、「兄様といっしょがいい」という理由だった
フミコちゃんは喋れない
だからいつも筆談で会話する
マリモとはけっこうツーカーで、だいたいの事は筆談無しでも意思疎通が成立する
フミコちゃんは何でも食べる
人魚の主食は貝や海藻だってケイミーちゃんが言ってたけど、あの子は基本何でも食べる(人魚としての本能か、魚は食べないけれど)
特にベーグルサンドと塩おにぎりがお気に入りで、飲み物はココアや抹茶シェイクが好きだ
フミコちゃんはかわいいものが大好きだ
島に着くと手作りのヒラヒラしたスカートを履いて、リボンやストーンで飾った車椅子に乗る
フランキーが作った船内移動用のスケートボードも、自分で絵を描いたりして飾り付けていた
この前も、おやつのカップケーキに花の形のクリームを絞ってあげたら喜んでくれた
ケーキを頬張る姿は、まるで満開のバラのようだったな
フミコちゃんは強い子だ
そこらの雑魚なら、可愛くデコレーションされた護身用の短刀で軽くあしらっちゃう
本人は「自衛の範囲しか教わってない」って言うけれど、それでも十分強い
そして、フミコちゃんはまだおれ達に馴染んでない
かつてロビンちゃんがそうだったように、おれ達との間に微かな距離がある
完全に気を許してるのはマリモだけと言ってもいい
あの子は毎日風呂に入るけど、その時はいつもマリモを呼んでいる
同性のナミさん達が誘うと嫌がり、着替えもいつもマリモといっしょ
その理由を本人は「なんか、兄様じゃないと嫌」としか言わないし、マリモもマリモで何も言わないからわからない
ただルフィだけは何かを察して接してるみたいで、マリモ以外では一番あの子と馴染んでいた
おれはまだあの子の多くを知らない
知らないけれど、支えになりたい
こんな事を言うのは烏滸がましいかもしれないけれど、「大丈夫だよ」と伝えたい
まことに悔しいが一番はあのクソマリモに譲る
だけどアイツに負けないぐらい、おれ達も、サニー号も、安心できるんだと伝えたい
だからおれは、キミに言うよ
「キミのために、心を込めて作ったよ」