キッドの過去鑑賞会【青年期編】―観客の反応―
【キッド過去編②青年期―観客の反応―】
10何後のキッドの姿をみて一同はざわめいたこの町で一番大きな建物に住み、豪華な椅子に座っていたのだ。しかも
『まっ待ってくれ!!あっちのグループに情報を渡そうとしたのは悪かった!どんなことでもするから許し』
バーン!!その男の脳天をキッドはぶち抜く
「ひっ!!」
「きゃあああ!」
思わずウソップとナミは叫び声をあげる。
「な‥‥なんなのよ!子供の頃の面影もないじゃない!」
ナミの言葉に内心多くの人が頷いた。
「あんなにかわいかったのに‥残念ね‥‥」
「ねー」
「うるせぇなお前ら!次騒いだら消すぞ!?」
女性陣の声にキッドは悪態をついた。
『おれを裏切った時点でお前にはもう死しかねぇんだよ』
『キッド…こいつはどこに情報を流したんだ?』
『あいつだよ』
キッドはこの島を仕切るボスのいる建物を指差した。
「‥なるほどね。この島には独裁を働くボスがいてあなたたちはそれを倒そうとしていたのかしら?」
「ファッファッファッ!さすがだなニコ ロビン」
ロビンの飲み込みの早さに驚きつつキラーが肯定する。
『こいつは恐らく最初からスパイとして潜り込んでたそうだ他にもいるかもしれねぇから用心しとけ』
(ボスにばれてるならもう隠す必要もねぇか…ボスを倒しておれがこの島を変える!)
その時部屋から誰かが入ってきた。
『おい!!キッド!!』
その声の主が映し出されて一同は声をあげた。
「あ、あれは‥ドルヤナイカちゅわん♡さらに美しくなってるー♡」
「たしかにとってもキレイ‥」
「ユースタス屋は相変わらず尻に敷かれてんだな」
サンジを無言で睨んでいたキッドだったがローの言葉でまた言い合いが始まる。
『うぉっ!?なんだよドルヤナイカ!』
『お前らが今日は私と出掛ける日だっつったのに待たせるとはいい度胸だな!?』
『すまんヴィクトリア。俺たちも支度したらすぐ出る』
『そうだなとりあえず部屋の外で待っててくれ』
と誰も死体について気にしないやり取りが繰り広げられ一同は(ドルヤナイカ‥お前もか)と心の中でツッコミをいれる。
『やべぇ今日着る予定だった服返り血で汚れちまった!』
『おれのを貸すか?キッド』
『ありがとよ相棒』
「10年経っても仲良いんだなーお前ら」
ペンギンの声にキラーとキッドが得意げに
「「まぁな」」と返す久々のほのぼのした空間である。
だがキッドは何かを思い出したのか急にあっと声を上げた。
「この日は確か‥あっ‥‥」
「(おれは気づいてたけどな)まぁ‥がんばれキッド」
(あいつと遊ぶの久しぶりだし色々気合い入れねぇな……今日こそは伝えるんだ…)
「ああああああ!!」
キッドの突然の叫び声と映像で瞬時に全てを理解したナミ、サンジ、ロビン、フランキー、ブルック、ローなどがニヤニヤし始める。
「??どうしたんだギザ男?」
「キャプテン!あいつめちゃくちゃ顔青いよ!!大丈夫かな!?」
状況をイマイチ理解していないルフィとベポが純粋にキッドを心配する。
「大丈夫だぞ麦わら屋、ベポもうじき分かる」
そんな二人にニヤニヤしながらローは言った。
次の瞬間箱から指輪を取り出したキッドの姿が写った。
「きゃああああー!!」
「あああああああ!!!」
女性陣の歓声とキッドの悲鳴が辺りに響く。
「お前でもそんなことすんだなー!意外だ!」
「もう‥いっそ殺せ‥‥!」
ウソップがビビらずに声をかけられる程度にはキッドの精神はダメージを受けていた。
「あっはっは!傑作!」
「このプロポーズが成功する確率‥5%‥」
「占ってんじゃねぇよ!!」
「そなた‥今からプロポーズとやらをするのか?参考にせねば!」
この展開に盛り上がり一同は宴状態に陥った。
ルフィ、ローもキッドに絡みに行こうとしたが直前で止まるふと映像を見るキッドの顔は無表情だったが悔いているような表情だった―。
映像は切り替わり二人は店へ入っていく。
そこでカレーうどんを注文した二人は最初こそ注文内容に喧嘩していたもののすぐに楽しそうに話始める。
「お前トラウマになってんのかよ!あんなにかわいいドルヤナイカちゅわん♡との思い出の品じゃねえか!」
サンジは少々的はずれな方向でキッドの好き嫌いを咎める。
「やっぱりお二人は仲良しなのれすね!」
「ふふっそーね!…ってお父さん!?大丈夫!?」
レベッカの慌てた声が響くそれもそのはずキュロスはなぜか号泣していた。
「す、すまない…グスッ大丈夫だ…!」
昔のスカーレットとの思い出が思わず頭をよぎってしまった。
それくらい暖かい映像を珍しく全員ほほえましく見守っていた。
たった二人…真顔で見つめるキッドとキラーを除いて。
その瞬間だったー
映像は真っ暗になりとてつもなく大きく恐ろしい音が場内に響き渡る。
「きゃあああああ!?」
「キャプテエエエン!!!」
場内は軽くパニックになるも落ち着いているものが呆れつつパニックを沈める。
そして何があったのか全員が視線を向けた先にはー
先ほどまでと同じ場所の光景なのか錯覚するような炎に包まれた建物、誰かの叫び声、泣き声
まさに阿鼻叫喚
無惨な町の姿が広がっていた。
「は‥‥な、なによこれ!!」
ナミが叫び声を皮切りに周囲にはざわめきが広がり続ける。
「ど‥どうして‥」
たしぎはさっきまでのとてもこのあと大海賊になる男の過去とは思えなかったほのぼのとした光景からの落差に呆然としている。
「でもよ‥なんで突然爆発が」
「‥お前らの眼は節穴か?さっき‥あいつらがが話していた時‥不審な動きをしていた野郎がいた。そいつの仕業だろう」
G5の疑問にスモーカーが冷静に答えた。
さすがは海軍中将だと思う反面、あまりにも冷静なその姿にナミは苛立ちを覚えたが文句を言おうとした瞬間キッドの声が入ってきた。
『おい!!ドルヤナイカーー!』
キッドはドルヤナイカを必死に探している。その体は大量に出血していた。
「え!?チョッパーあいつやばいんじゃないか!?」
「ダメだ!あんな傷で動き回ったら!死んじまうよ!」
ウソップとチョッパーはあまりの怪我にキッドは今生きていることも忘れて全力でキッドの身を案じ叫んだ。まさに誰もが叫びたくなるような光景だ。
しかしここにいる者は違う。ここにいるほとんどの人はこの光景と似たものを見たことがあるせいか、静かな者がほとんどだ。
その中の数名は過去に思いを馳せていた。リク王もその1人。
「うっ‥はぁ、はぁ‥」
「大丈夫ですか!リク王様!」
「あぁ‥少し思い出しただけだ」
今目の前に広がっている光景に自分たちの国のかつての光景が重なってしまったリク王をキュロスが支えた。
あぁ、早くこんな無意味な時間を終わらせてくれ‥!キュロスは心から祈った。
あぁ、あと少しであの光景が映るな。
キッドは自分がやけに冷静なことに驚いていた。周りが騒がしいからかもしれない。あーでもいつも絡んでくるあいつらは今はやけに静かだな
そんなことを考えていた数秒後、キッドの思った通りその光景は映し出された。
その光景が映し出された時、騒がしかった会場がシーンと静まった。
「‥‥え?」
誰かの騒然とした声が響く。
シアターには‥血だらけのドルヤナイカが映し出されていた。
『嘘…だろ……っくっそ!!絶対助けてやるからな!待ってろよ!』
キッドが無我夢中で瓦礫を全て退かし切った時にはドルヤナイカは虫の息だった。おまけに下半身は足が変な方向に曲がっているし意識は朦朧としている。
「なにこれ‥!!あんな子供が!」
ナミの悲鳴のような叫び声が響き渡るその目はうっすら涙ににじんでいる。
「嘘だろ‥」
「そんな‥血を、流しすぎてる!!」
「キャプテンっ!ぐすっあの子!骨が‥!骨が何本もおれてる!」
チョッパーもベポの言葉に一同はまた騒然とする。ここにいる者の大半は自分たちの身を持って知っていたはずだったのだ。
ー大切な物はほんの一瞬で消えて無くなることを。
でも、、知っているからといってその恐怖が無くなっている訳ではもちろんなかった。
それは革命軍No.2の男も例外ではない。
町中に燃え広がる火になにかが重なったのかサボの顔は強張っている。
「ドルヤナイカちゃん‥」
パッとサンジはキッドの方を見た。あぁ‥おれはなんてバカなことをしてしまったんだ。結末を知っているキッドが自分に怒ったのは当然のことだったのだ。
キッドの目はスクリーンに注がれ続けていた。
死んだドルヤナイカを抱き抱え泣き叫ぶキッドの昔の姿を二人は無言で見つめていた。
観客席は嗚咽と沈黙が支配している。
キラーはキッドの様子を見て己の無力さに思わず舌打ちをしてしまう。大切な相棒がこんなに苦しそうな表情を浮かべているのになにもできない自分が悔しくてたまらなかった。
そんなキラーの様子を見て察したのか
「おいキラー‥お前なにか勘違いしてるだろ」
とキッドが声を掛けてきた。
勘違い?なんのことだろうかと首を傾げているとキッドは続ける。
「おれは別にあの時のことを悔いている訳でも悲しんでるわけでもねぇ。あの時は‥おれもお前も今ほど力はなかった‥そのことをこの出来事で思い知らされたから、おれたちはここまで強くなれた!そうだろ?」
そう言いながらキッドはにっとキラーに笑いかけた。
キラーは分かっていた。お前が言ったことは紛れもない本音なのだろう。だが、お前がこの映像を見せられて一片の感情の揺らぎもないはずがねぇ‥
そう思いながらも
「あぁ‥そうだな」
と仮面の下で笑みを返した。ホントにおれの相棒は時に残酷だが元来繊細でいいやつなのだ。
そしてスクリーンは一点の場所を写し始めた
「おいおいあいつは‥」
サンジは思わず舌打ちをしそうになりながら呟く。さっき爆弾を仕掛けていたであろう男がライフルを構えて二人へ標準を合わせていたのだ。
「あいつ!!これ以上あの子たちを痛めつける気!!?絶対に許さない!!」
ナミは涙を流しながら男に怒鳴るかのように声を上げた。銃には嫌な思いでしかない。ナミの脳裏にはベルナールさんが撃たれ、血しぶきを上げながら倒れる所がまざまざと蘇っていたのだ。
「くっそぉ‥見てるだけで何もできないなんて‥あんまりです‥!」
コビーも悔しそうな表情で言葉を発していた。
下唇を噛みながら見ていることしか出来ない自分に嫌悪する‥がそんなコビーを諭した者がいた。
「おいコビー。この光景は‥別に珍しいものじゃねぇ」
スモーカーは言葉を続ける
「今もどこかで理不尽に命を奪われてる奴らが大勢いるんだ。今更自分を責めるんじゃねぇ」
「‥!!でも‥」
「全部救えないことを嘆けるのは‥ガープさんみたいな一握りの強者だけだ‥だからな」
「嘆くぐらい悔しいなら‥もっと強くなることだ。分かったな?」
スモーカーの言葉に自分を貫かれたような感覚に襲われた。
やっぱりすごいなぁスモーカー中将‥
先輩の信念にコビーは思わず
「っ!!はいっっ!!!」
と会場に響く大音量で返事をしてしまい真っ赤になった
その間にも映像はドンドン進む。ついに男はキッドに完全に標準を合わせた。
「やばいよキャプテン!あいつ撃たれちゃう!」
「あっでも気づいたよ!よかったー」
ペポの焦りまくりようにイッカクが安心させる言葉を言いなんとか落ち着かせる。
どうやらキッドは音で男に気付いたようだ
キッドは男の方を向きこの爆弾の犯人を悟った。
『てめぇ…だったのか……』
他を這うような声と威圧感に会場全体の空気がピリッと重くなる
「おいあいつ、もしかして!」
身に覚えのある感覚の威圧感にルフィは声を上げた
それはハンコックやドフラミンゴも同じ。彼らに共通するのはー
『さぁ?まぁあんたはこれからその女と同じ場所に行くんだから知る必要は』
『てめぇが…爆弾を……!ドルヤナイカを……絶対許さねぇぇ!!!!』
その瞬間周囲の空気が大きく震え、色を帯びる、そして大きな衝撃が走る。
ビリビリビリ!!!
(こいつ‥こんなガキの頃から覇王色を‥!)
ローは四皇戦で思い知った覇気の重要性を思い出しながらキッドの覇王色の才能に、こいつの幼少期からの才覚は何か巨大なことを成し遂げるためにあったのだろうと言うある種の必然性を感じていた
「なんだお前さんも覇王色持ちなんですかい」
ウルージは少し目を開き笑みを浮かべる
「な‥なんだ‥‥この感覚は‥」
「リク王様!大丈夫ですか!?」
シアターから伝わる覇王色の余波に当てられた何人かは気が遠くなってしまった。
それは映像の中でも同様。衝撃に男は耐えられず泡を吐きながら倒れてしまったのだった。
キッドが扉を開けるとミシミシいいながら扉が開いた。
(相変わらず変わんねぇなここは)
昔と変わらない時間が止まったような空間
キラーに男の確保を任せたキッドは亡きドルヤナイカを抱えて3人で遊んだ基地に来ている
一同も映像の中で何回も見ていて見覚えのある光景だ
しかし、キッドの意図は分からず一同は困惑している
するとキッドは人が入るくらいのちょうどいい大きさの宝箱を見つけ、中にドルヤナイカを入れた
「なるほど、棺代わりですか‥私もこんなことをしていましたねー。ヨホホホホ」
かつてのルンバー海賊団の亡き仲間たちの遺体を、適当な物を棺に見立てできる限りの人数をそこに入れていたことを思い出したブルックは懐かしい思い出にしばし浸る。
「‥‥」
「キャプテン?顔色悪いけど大丈夫?」
「‥あぁ、問題ねぇよ」
思わず自分の入っていた宝箱とその上に血まみれで横たわるコラさんが脳裏に浮かび、ローは思わず顔をしかめた。
そしてキッドはポケットからある物を取り出す
それをドルヤナイカの指に付けたことで周囲に一瞬ざわめきが起こった
「‥!!あれって!」
ベビー5が思わず声を上げる。それは最近自分も貰い、大切に指につけている
ー指輪だったからだ
きけ…
一同に今際ののドルヤナイカの言葉が蘇る
『今日…伝えるつもり……だったんだ』
『私…は、、お前のことが……ずっと…好きだった』
‥なんて悲しいことなのだろう。その日結ばれるはずだった二人。爆発がなければ今頃はきっと‥
二人の幸せそうな未来と、指にはまる指輪の光景が見えた気がした
「ドルヤナイカちゃん‥」
サンジの憐れむような、悔しそうな悲しい声が響いた
会場はお通夜のような沈黙の雰囲気で支配されていた
それを破ったのは‥‥キッドだ
『ドルヤナイカ!!お前のことがガキのころからずっと好きだった!』
彼の突然の独白に一同は驚いたが、真剣に映像を見入る
『今日伝えるはずだったがまさかお前に先に言われるとは思わなかったわ…おれは何も言えなかったけどお前はもう、いねぇから‥約束だけさせろ』
途中で涙を流しながらも必死に言葉は紡がれていく
「ヴィクトリア‥」
よかったな。お前は引くほど愛されてるぞ
それこそ好きだった女の名前を船につけるくらいヤベェ奴だ!そう思いながキラーはヴィクトリアに心の中で手を合わせた。
『おいキッド!ヴィクトリアが殺されたってのはホントなのか!?』
『まずは事実確認がしてぇんだ!』
ヒートワイヤーの二人はキッドに詰め寄っていた。
その光景を見てヒートとワイヤーは気まずくなる。
この映像を見た後だとより自分たちの行動の残酷さに気付いてしまって情けなくなった。
「‥‥頭‥この時は」
「おいやめろ」
ヒートがあまりのいたたまれなさにキッドに謝罪をしようとするとキラーに止められた。仮面で表情は見えないはずなのにやけに熱の宿った目で見られている気がして、二人はなにかを悟り、何もなかったかのように再びスクリーンに視線を戻した。
映像は進みキッドは三人に衝撃を与える言葉を口にしていた。
『ボスはおれたちが楯突いてることに気づいておれたちを消そうとしてるらしい』
……!!
『もうバレてんなら躊躇する必要もねぇ…明日ボスを消しに行く!』
「えええ!?」
「いくらなんでも早すぎんだろ‥!ユースタス屋!!」
「なにコイツ!!ルフィか!!!」
しかし次の瞬間一同はさらに驚愕した
彼の即断即決な姿もそうだがそんな突拍子もないことを口にしたのにも関わらず、全員が笑っていたのだ
『当たり前だ!』
『任せとけ!!』
『面白くなりそうだな!』
全員の気持ちが一つになる。
「ウウッ‥お前らスーパー男らしい友情じゃねぇか‥!!感動するぜ‥!!」
「いやお前は常に泣いてたじゃねえか」
フランキーの涙を拭いてやりながらウソップが冷静に突っ込む。フランキーの周りだけ明らかにティッシュの山ができていた
「シシシッ!やっぱ楽しい奴らだなーこいつら!」
「まぁな!おれたちの絆は世界一だぜ!!」
ワイヤーが胸を張るとすぐにルフィが
「なっっにぃ!?絆はおれたちのほうが上だ!!」
と言い返す
「ハァァァ!?おれらの方が上に決まってんだろうが!バカ猿!!」
「おい待てお前ら!おれの海賊団の方が上だ!!!」
ローも参戦しだし三馬鹿が始まりだしたことに慣れているものは皆ため息をついた
「あれ‥レオ、あの果物はなんれすか?スマイルの仲間なのれすか?」
「違うにきまってるじゃないれすか!あれは悪魔の果れすよ」
「‥!そうれすか!!よかった‥」
スマイルを作らされたたくさんの仲間たちを思い出したマンシェリー姫はレオからの答えに心底安堵した。
キッドは自分の部屋に眠るある物を手に取り眺めていた。
それは昔この島で競売にかけられていた悪魔の実『ジキジキの果』だ。
この実に強烈に引かれたキッドは珍しく金をかけまくってこの実を勝ち取ったのだが悪魔の実を食べたものは海に嫌われると言うことを知り食べることなく自分の部屋で今まで保管してきた。
だがこのデメリットを受け入れてでも明日のために強くならなくてはならない。
「‥‥」
その姿に昔の自分が重なったレベッカはぼんやりとしていた。あの時の自分は本当に必死だったな‥あの時、、ずっとキュロスのことを思い出せていなかったら‥
今までで何回も思ってきたことだったが、そう考えると思わず体が震えてしまう。ホントに‥ありがとう、ありがとうルーシー‥
レベッカは映像を騒ぎながら見る太陽を優しい目で見つめた
「おい、ユースタス。お前こんな所にいたか?」
何やらスクリーンの視点はキッドではない別の人物に切り替わっているようだ。彼は高い建物の巨大な窓から何やら大勢の人がいる場所を見つめている。すると急いでいるような足音が聞こえてきた
『ボス!大変です!4つの町をしきっている奴らが反乱を起こしました!!奴らボスの首を狙っているようです!』
「4人‥もしかしてアンタらのことなんじゃないの!?」
「おいユースタス屋‥まさか無策で突っ込ん」
「でねぇよ!!バカにすんな見とけ!」
しかし彼‥名をつけるとすればボスは大勢の人に特に驚く様子はない。フゥーと息を吐いた後に彼は窓辺に近づき
『そうか……4人に伝えなくてはな。残念だと』
銃を取り出した。
すると彼は銃を構え狙いをキッドに定めた。五秒後彼の瞳は赤く光りまとのような形が瞳の中に浮かんだ
「「なんだあれ!!かっけぇぇぇぇ」」
「ちょっとあなたたち!恥ずかしいですよ!」
「ガキかてめぇら!‥だがありゃあ何の能力だ?」
叫ぶG5に一喝を入れながら考えるスモーカーに答えるが如くボスの声が流れる。
私は『マトマトの実』を食べた悪魔の実の能力者。
5秒以上見つめたものは的になり10秒間その的への攻撃は必中する‥
「じゃあこれ‥やべぇんじゃねぇのか‥!?」
能力の詳細に驚く人たちを代表するかのようにボニーが叫ぶ。一同がヤバいと気づき始めた頃にはボスはもう引き金を引く直前だ。
「おいおいおい!ヤバいじゃねえか!死んじまうよ!!」
『一回は‥君の友達の命で見逃してあげたのになあ…さらばだキッド』
そういった瞬間ボスは銃をキッドに向かって放った。
バンッッ!!
「きゃぁぁぁ!怖いれす‥!!」
「大丈夫れすか!?マンシェリー姫!」
大体の人は発砲音に慣れているため驚かなかったが、必中となるマトマトの力の方に興味や驚きが
必中となった黒い弾丸はキッドの心臓一点に向かって進み彼の心臓を撃ち抜く……はずだった。
『……な、なぜだ?どうして当たらない!?』
心臓へあと少しで届く距離でその弾丸は止まってしまった
「えええええ!?止まったぁあよかったぁぁ!」
チョッパーの泣き喜びほどではないが止まったことにほとんどの人が安堵していた
キッドは余裕の笑みでボスに向かって視線を向ける。
「なるほどな‥ユースタスの能力か」
ベッジは納得したように呟いたことで気づいていなかった何人かも気づいた
『残念だったなクソ爺…!この弾丸返してやるよ!反発!!』
そう言った瞬間弾丸はボスの方へ向かってもの凄いスピードで飛んでいき窓ガラスを割り彼の脳天をぶち抜いた。
「えええええ!!?」
『あああああああ!!!?』
ボスの悲鳴が辺りへ響く状況の理解が追い付かない。
「ボス!!?なにをされたのですか!!?」
(なぜだ…なぜ、、私の能力が封じられた?)
自分のマトマトの力を破るだけでなくなぜ自分に帰って来たのかそしてある答えが導き出される。
『まさか…お前も食っていたのか……悪魔の実を…!』
絶命したボスが最後に見たのはキッドの最高に悪い笑顔だった。
あまりの展開に沈黙が生まれた映画館だったが
「うおおお!頭‥最高すぎるぜ!」
「おれたち一生付いてきます!」
今はキッドの一味が歓声を上げ、最高に盛り上がっている。
その姿に自分の船員を重ねた多くの船長たちは微笑ましい気持ちになっていた。
「はっ当たり前だろ!ワンピースまで‥いや地獄まで一生付いてこい!」
再び歓声が上がったキッド海賊団をクロコダイルは鬱陶しげな見ている。
なにが海賊王、なにがワンピース‥大海賊白髭然りこの海には化け物みてぇに強い奴がうようよいやがる。
身の程をわきまえず突き進んだ者の結末はー破滅だけ。
そう分かっているはずなのにクロコダイルにはこの光景がひどく遠く、輝いて見えた。
『そんなああ!!…ボスが殺られちまったああ!』
その言葉に一気にざわめきと悲鳴が広がる。
『落ち着けお前ら!!数はこっちが上だ!数で押しきるぞ!!』
敵はその言葉でかろうじて士気を取り戻し突撃してくる。
『命知らずな奴らだ』キラーがスイッチを入れると鎌が回転し始める
「おぉ!キラーの戦いまで見れんのか!」
キッドの目がキラキラし始めキラーは内心幼子を見ているようなほっこりした気持ちになる。
助走をつけると
『斬首爪!!』
キイイインという音と共に敵を討ち取った
「へぇ‥やっぱり強ぇな。今度一戦やりてぇな」
流れるような斬撃にゾロは感心していた
「鎌が回った!?ロボみたいだな!チョッパー!」
「おれもあれできるかなー!」
チョッパーとウソップは目を輝かせて歓声を上げたことにキラー以上に満足気な顔をキッド。
その姿に誰もが相棒っていいよな‥と心の中で呟いていたのだった
『ヒイイイイ!!なんだこいつら強え!』
キラー、ヒート、ワイヤーの連携技に敵はどんどん打ち取られていく
「すごいなこの人たち‥参考にしないと!」
コビーはヘルメッポとの連携技の参考にでからように頭の中でメモを取りまくる。どこまで行っても勤勉だ
『行け!相棒!』
『任せろ!』
そういった瞬間キッドの体に大量の武器が集まり始める。
『おれたちの武器が!』
『なぜ吸い寄せられるんだ!!?』
その間にも鉄は生き物のように集まり形を成す。その姿はまさに魔神。
「「「「うおおおおお!!ロボだああああ!!!」」」」
男達は目を輝かせて歓声を上げている。その盛り上がりは鑑賞会最大と言っても過言ではないだろう(女性陣除く)
『食らいやがれ!!磁気魔神(パンクロットン)!!!』
ボスのいた建物のさえも押し潰す大量の鉄の腕で叩きつけられた
『こんなの…まるで怪物じゃねえか!!』
『こ、降参だ!!助けてくれ!!』
圧倒的な力の差により敵は壊滅状態に陥いった
(ドルヤナイカ…見てるか?この戦い‥おれたちの勝利だ!)
キッドの信念、覚悟が伝わる言葉に全員が息を飲む
「‥‥」
情けない。スモーカーはこの腐敗した国を海軍が放置していた事実とそれを正したのが海賊であるという事実に海軍を恥じた。それは他の奴らも同じなようでたしぎも顔に少しの悔しさが浮かんでいる。
(恥じたのはおれだけじゃねぇ‥おれたちで海軍を少しでも変えるんだからな)
そう思いながら己の拳をスモーカーは握りしめた。
キッドは瓦礫の一番上まで登り叫んだ。
『ざまあねえな……お前らの時代は終わりだ!!』
この宣言によりこの島の長い間にわたる支配は終わりを迎えた。
『…なあお前ら これからこの島でしたいこととかあるか?』
ここは勝利を祝した宴会の会場
キッドの問いかけに突然どうしたんだとふざけながらも3人は考えた。
『おれは特にはねぇ……ボスも倒しちまったしな』
キラーの意見に他の二人も賛同した。
『だがなぜこんなことを聞くんだ?まさかお前…』
『相変わらず察しがいいなおれは…海へ出る!』
「はぁぁぁあ!?」
「そんな急に!?」
思わずシャチとボニーは叫んでしまった
突然次の日に海に出ます、なんて言われたらこの反応をしてしまうのもしょうがない。
それは当時のキラーも同じだったようで
『ファッ!?!?本気か!?なぜー』
そう言いかけてキラーの目に写ったのは真面目な顔でこの島を見るキッドの姿だった。キッドは3人に姿勢を向け直す。
『お前らも見てきただろ…おれはこんな狭い世界に一生いるなんてごめんだ!おれはもっと自由に生きてぇ!!』
その顔には幼少期を思い出させる無邪気な笑顔が浮かんでいた。
『ゴールドロジャーの宝を手に入れる冒険なんて最高に楽しそうじゃねえか!たとえ命を失ってもおれは『世界』を見てぇんだ!!』
「‥‥なんか、ルフィみてぇだな」
「「「「「「「同感!」」」」」」」
「なんかキャプテンにも似てるよねー!」
「「「「「「「同感!」」」」」」」
麦わらの一味とハートの海賊団から全く同じ感想が聞こえてくる。
「「「なんだお前ら!!!」」」
3船長は見事に声をハモらせ喧嘩を始めそうになった所を保護者(ナミ、ペンギン、キラー)に止められたのだった。
「ハッハッハッ!やはり船長とは皆同じ生き物なのかもしれんな!」
在りし日のタイのお頭を思い出し、ジンベエは豪快に笑った。
その後キッドは3人を海へ誘い、全員がキッドに乗った。
『ハッ!やるからにはワンピースを目指すんだからな‥覚悟はあるよな!!?』
『『『当たり前だ!』』』
『よし!じゃああいつらにも宣言しないとな‥!』
キッドは下の広場に集まる全員に向けて叫んだ。
『お前らーー!聞け!!おれたち4人は!海賊団を結成し海に出る!出航はー』
あれ?なんかこの感覚‥やらかしそうな気配だな。
麦わらとハートの一味のクルーは何かを察する。
辺りのざわつきをものともしない大きな声でキッドは続けた。
『明日だ!!明日の昼までにこの船を用意しろ!!』
『『「ちょっと待て!!!!」』』
キッドは自分のデザインした船の絵を下に落とし満足気に酒を飲み始め、3人にボコられた。
「やっぱり船長ってみんなこうなのね」
ナミが思わずため息をつく
「お前のとこも大変なんだな、殺戮武人」
「まぁな‥だがお前の所も結構自由じゃないか?」
「そうなんだよなー!キャプテンいっつもおれらを連れずに放浪をー」
「「おい!止めろ!!」」
お互いの船長のあるあるを話し始めた二人をキッドとローは必死に止めた。
ホントこいつら‥敵同士なの分かってんのか?
色々あったが
ーこうして大海賊ユースタス"キャプテン"キッドとその一味キッド海賊団は今ここに結成したー
『そういやキッドの頭ー船の名前はどうするんすか?』
翌日の完成した船を全員が見つめていた時に部下の一人が尋ねる。
『この船の名前?決まってんだろ』
キッドは珍しく静かなほほえみを浮かべながら言う。
『"ヴィクトリアパンク号"あいつのおかげでボスを倒す覚悟ができたからな‥あの時のことを忘れないでいたい』
「おい!お前も船に名前をつけるタイプだべか!!」
「あぁ!?あの気色悪い船と一緒にするな!!」
海賊万博でのあのヤバすぎる船と同じにされたことにキッドすばやく反論した。
ほとんどは内心共感と重すぎるだろ‥!の半分ずつの感情でこの映像を見ている
ルフィは麦わら帽子、ローやナミは恩人モチーフのタトゥー、サボは兄の形見の悪魔の果。
この館内には大切な人に対して並々ならぬ感情を抱く物が大勢いるのだ。
その言葉に彼にとってのヴィクトリアの存在がどれだけ大きかったのか全員が理解し全員これ以上詮索することはしなかった。
『よしキッド‥そろそろ出航の時刻だ』
『そうだな‥おいお前ら!!船に行くぞ!』
その言葉を皮切りに4人は船に荷物を入れて乗り込んだ。
『いい航海日和だなー!‥"お頭"?』
その光景にローは自分の幼馴染で海賊になったばかりのころ重ねた。自分も驚いて、荷物を落としてしまっていたこともあったなー
ヒートのなれない呼び方に少し戸惑うキッドだったがやがてふっと笑い
『おれらの船出なんだ‥当たり前だろ!』
そして思いっきり息を吸い叫ぶ。
『野郎どもーー!!出航だぁぁぁぁ!!!』
『おおおおお!!!』
船は波に揺られながら進み始める
『お頭ー!!お元気でー!』
『いつでも帰ってきてくださいーー!』
涙を流しながら手を振るたくさんの人に4人はてをふる
『お前らぁぁ!元気でなぁぁ』
『ふっ‥野郎の見送りなんて嬉しくねーよ!お前ら!泣くんじゃねぇ!』
『お前も泣いてんじゃねぇかキッド‥』
『うるせぇ!!』
「ほー?出航で泣くとは涙脆いなユースタス屋?」
「しっしっしっ!おれ出航で泣かなかったから格上な!」
「はぁぁあ!?どういう理論だお前ら!」
ルフィとローの煽りにキレつつもキッドの脳内には出航の記憶が鮮明に浮かぶ。自分の原点にまた触れて
(やっぱりおれは‥こいつらと海賊王になってやる!!)
そう誓ったのだった。
***
ユースタス"キャプテン"キッド 幼少期編ー完ー
その字幕が表示された後、画面は真っ黒になった。
「‥お?これで終わったか?」
サボは扉の開閉を確認してみるがまだ扉は開かない。
なぜなのだろう その答えはすぐに知れた。
「は〜い!みなさん!!今回の映画の一幕はお楽しみいただけましたかぁ?」
「てんめぇは!!おい!さっさと鍵を開けやがれ!」
自分の過去を晒されて色々な感情が渦巻いているキッドは叫び声を上げる。
「あははは!怖いですねぇ‥私はこれで終わりだなんで、一言も言っていませんよぉ?」
その言葉に館内にざわめきが広がる
「ももももしかして‥おれたち永遠に‥?」
シーザーは青ざめながら震えている所にナミが冷たい視線を向けた。
「あんたはずっとここにいなさい!人間のクズ!それで?まだ私たちは見ないといけないわけ?」
「はい!次にご覧頂くのはー」
「麦わらのルフィの過去。タイトルは「不完全な太陽」どうぞお楽しみください」
その言葉を境に映写機はカラカラと動き出し始めた。
まるで映像を巻きながら作っていくかのように。