ガラスの靴なんてありはしない
様スレ
遠い昔の夢物語
遠い異国の恋のお話
家族に虐げられていた少女が、苦難を乗り越え王子の元へ嫁ぐありふれた物語。
現実にはガラスの靴も、カボチャの馬車も、魔法使いだっていやしない。
いや、一つだけあったな。
魔女と呼ばれる存在が。
煌びやかに飾られた会場で、美しい白いドレスに身を包んだ本日の主役。ミオリネ・レンブランは、花婿の隣で穏やかな笑みを浮かべている。
いつもの、こちらにどこか敵対心を向けるような顔ではなく、そんな表情もできるのかと感心する。
恋とはかくも人を変えるものなのだろうか。
横に座る花婿は、緩んだ頬をさらに緩ませ、愛おしげに花嫁を見つめている。
お熱いことだ。
厳かに進む式の中、微かに聞こえる嗚咽の音。向けた視線の先には、涙で顔をぐしゃぐしゃに濡らした魔女の娘。スレッタ・マーキュリー。
かつての花婿がいた。
(略)
もっとも、プロスペラにとってエアリアルはカボチャの馬車などではなく娘であり、スレッタ・マーキュリーにとっては大切な家族なのだろうけど。
(たぶん略)
あるのは厳しい現実と、一握りの甘美な運だけだ。