カントラ男が麦わら屋に失恋して誘い受けする話1

カントラ男が麦わら屋に失恋して誘い受けする話1




「ほら、ここに挿れてナカに出したらそれで終いだ。ヤってみろ」


そう言って、自身の有り得ない部位をくぱ、と開いて、目の前の男に見せつける。元同盟相手の船長……麦わら屋は、目を見開いて固まっていた。



おれはもともと男だ。だがとある一件により女の身体にされてしまい、覇気で治そうとした結果、局部だけが女のまま元に戻らなくなってしまっていた。意味がわからねェ?おれもそう思う。でも、その惨状を目の当たりにして真っ先に思いついたのは、どうしようもないことだった。


惹かれている相手がいた。おれの大恩人の本懐を遂げてくれたその男は、建前上の目的である四皇討伐まで果たしてくれた。そう、男なのだ。その男をそういった意味で好きだと自認した時は流石のおれも冗談だろ、と思いたかった。でも、冗談なんかじゃなかった。四皇二人を討ってから再び航海するまでの間に何度も何度も顔を合わせながら考えた。おれはこの男に相応しくない。麦わら屋はおれが見てきたどんなヤツらよりも自由な男だ。海賊王になると豪語するだけあり、今では四皇の一角にもなった。そんな男はその自由さからか、窮屈を嫌う。そんな男に、恋人なんて出来るわけがねェ。たとえ出来ても、あの男の自由さを許容できる相手じゃないと無理だ。そんなの、おれには出来ねェ。おれの立てた計画は毎回無視するし、勝手な行動ばかり取る。思い通りにならない奴ほど面倒なものはない。なのに、どうしてだろうな。気付けば目で追っていた。好きに、なっていた。コラさん、おれ、また誰かを愛せるようになったみたいだ。ただ、その想いが遂げられるのかは全くもって別問題だが。と言うよりも玉砕確定だが。

自分の身体を見てみる。見るからに男。バッキバキの男。身長だって、麦わら屋よりも約20cmは高い。しかも上半身にはこれでもかと言うほどの刺青。はっきり言おう。こんな男に好かれてるとか、同じ男なら萎えるどころか引く。一生会いたくないレベルで引かれる。この話はこれで終わりだ。

……そう、上手くいかないのが感情という厄介な代物だ。そんなので諦められたのなら、こんな苦労はしない。結局おれはワノ国を出るまで、相手にはそんな風には思ってませんと言わんばかりに何とか取り繕って、別の航路を旅立った。


その先で、こんな身体になってしまったのだった。


正直、何故ここだけ治らないのかは全くもってわからねェままだ。医者としては治せないことに悔しさしか湧かないが、自身の身体をスキャンして調べてみると、面白いことがわかった。

まず、この身体は卵子を精製していない。その機能全体にストップがかかっているような感じだった。中途半端に出来上がった器官なので、この部分が起動することはまず無いだろう。つまり、生理や妊娠の可能性は0である。それならむしろ急所が減って楽なのでは?と思い始めた。

次に、性感を感じることが出来る。これは何度か触診をしてわかったことだが、女性の感じる部位を刺激することにより、同じような性感を得ることが出来る。ハマると怖そうなのであまり触れてはいないが、性行為をするにあたって分泌液等も問題なく出ることがわかった。ここまでわかれば、それでいい。


海賊とは本来、欲の塊だ。欲しいから手に入れる。欲しいから奪う。そんな欲が、自分でも気付かぬうちに芽を出していた。おれの功績はすべて、コラさんの功績だ。コラさんにとって恥になるようなことは絶対にしない。でも、だけど、

コラさんから貰った心が育んだこの感情を、最初から無かったことにするのは、耐えられなかった。



その後、麦わらの一味と再会したのは本当に偶然だった。

途中物資の補給で寄った島に、アイツらが後から来たのだ。だからおれは悪くない。

麦わら屋から食事に誘われて、半ば無理矢理連行されたのも、おれは全くもって悪くない。

酒場で飯を食べている中で、突然好きな相手がいると言われて、ヤケになり昼間からアルコールを摂取してしまったのも、おれは悪くない、はずだ。

だから、


「どうしたトラ男? 酔ったのか?」

「……あぁ。そう、みたいだ……少し、休んで行かないか?」

「休む?」

「近くに、宿がある。そこで少し休みたい」


船に戻ると、クルーのヤツらが心配するから。そう伝えると、麦わら屋はわかった!と疑うことなくノコノコと付いて来た。

麦わら屋の、好きな相手。誰だろう。あの海賊女帝だろうか。女ヶ島で見た限りではあちらもその気だったようだし、お似合いなんじゃないだろうか。うん。海賊女帝なら、この男にも相応しいだろう。


だから、いいよな

コイツの初めてくらい、おれが貰ったって


「トラ男?気持ち悪いのか?おれ、下で水貰って……」

「行くな、麦わら屋」


宿の一室に入って、麦わら屋を巻き込みながらベッドに倒れ込む。そんなおれを見て麦わら屋は心配してくれた。優しいな本当に。だからこんな男の演技に騙されるんだ。いや、思ったよりも酒を飲んでしまったので半分は演技では無いのだが。ベッドから出てロビーに行こうとする麦わら屋の服の裾を必死に掴んで呼び止める。すると男は振り返っておれを見た。


「トラ男、無理すんなって。すぐ戻るから」

「頼む、行くな。ここにいてくれ」

「水飲まなくていいのか?」

「いい。だから、こっち」


本音を言うと欲しかったけど、それ以上に、お前が欲しかった。手の届かない太陽のようなお前が、欲しくて、でも手に入らないから、だから、


「……麦わら屋は、さっき言ってた相手とどうなりたいんだ?」

「は?トラ男何言って……」

「お前、童貞だろ。ヤリ方わかるのか?」

「酔ってんだろトラ男、そんな話やめろって。やっぱりおれ水貰ってくる」

「教えて、やろうか?」


酔っ払いの話なんて聞きたくないのか、麦わら屋がおれから離れようとする。それが許せなくて、熱の籠っているであろう目で相手を見る。麦わら屋は案の定目を見開いて固まっていた。


「なに、言ってんだよ。トラ男」

「……お前が言ったんだろ。好きなヤツがいるって」

「言った、けど」

「相手に床が下手で幻滅されたくないだろ?だから、おれで練習してみろ」


おれがそう言うと、麦わら屋が両手をぎり、と握り締める。そりゃそうだよな。練習相手でもこんな男、嫌だよな。でも悪ィな。ここまで来たらもう逃がしてやれねェ。未だに固まっている麦わら屋を尻目に、ベッドの上でスキニーを脱ぎ始める。


「おいトラ男、何して……!」

「ほら、見てみろ麦わら屋」


下着に手を掛けて、意を決して下に降ろす。そこには、有るはずのものが無くて、無いはずのものが有った。そんなおれの姿に麦わら屋はまたも硬直する。そりゃそうだ。男の象徴とも言えるものが無ェんだから。


「と、らお……女だったのか!?」

「……んなわけねェだろ。最近こうなったんだ」

「何をどうやったらちんことキンタマが消えんだよ!?大丈夫なのか!?痛くねェのか!?」

「痛くはねェ。それよりほら、見てみろ」


恥ずかしさは勿論、ある。年下相手にこんな格好するなんて、と。でも、今しかチャンスが無いのなら、どうしても、欲しかった。長い脚をM字に曲げて開き、湧き上がる羞恥心を総無視して、指を使い閉じていた割れ目のナカを見せる。くぱ、と開いたそこからは、くちゅりと小さな水音がした。ヤバい。麦わら屋に見られて、もう濡れてる。これじゃ本当に、変態だな。


「ほら、ここに挿れてナカに出したらそれで終いだ。ヤってみろ」

「……や、やだ!そーいうのは良くねェ!やめろよトラ男!」

「…………そうか」


そりゃあ、そうだろうな。おれも無理があるとは思う。でも、ここまで頑張って誘ってみてこの玉砕っぷりは、暫く立ち直れないかもしれない。お前の童貞でおれの処女、貰って欲しかったのにな、と鋭い痛みを訴える心を何とか押し留めて、脚を閉じる。


「わかった。じゃあどこかで発散してくる」

「……は?」

「悪かったな麦わら屋。久々の陸で少し溜まってたんだ。適当に相手捕まえるから、麦わら屋は船に戻っていい」


本気で拒絶された時の為に予め考えていた言葉を紡ぐ。発散なんて、するわけない。適当な相手なんて、嫌に決まってる。でも、こう言っておけば麦わら屋ももうおれに関わることを辞めるだろう。ズキズキと胸の奥が痛む。失恋したんだからそりゃそうか。ごめんなコラさん。アンタがくれた心を傷付けて。下着をもう一度履こうと、腰を上げようとした、その時だった。


「ぁ、えっ?」

「やめろよ、トラ男」


どさり、とベッドに倒される感触。おれの上には、麦わら屋。あれ、何で、何が、どうなって、


「むぎ、」

「他の男のとこになんか、行くなよ」

「……だって、お前は相手してくれないんだろ?」

「おれが相手したら、トラ男は行かないのか?」


行くも何も、元々そんなつもりはない。お前が部屋から出て行ったら一人女々しく泣いてやろうかなくらいには思っていたが。麦わら屋が自慢のゴムの腕を伸ばして、両手をギリリと一纏めにされる。結構な強さで縛られてしまい、これでは身動きが取れない。


「おい、麦わら屋、離せ……!」

「嫌だ。離したらトラ男どっか行っちゃうんだろ」

「……お、まえが、相手になるなら、行かない」

「本当か?」

「……本当、だ」


おれがそう言うと、麦わら屋は少し考えて、拘束を外す。手首には巻き付いた腕の痕がしっかりと残っていた。


「……悪ィ、痕残っちまった」

「別に、いい。早くするぞ」

「……わかった」


何で急にヤる気になったのかはわからないが、好都合だ。そのまま流れに身を任せて、貰ってしまおう。奪ってもらおう。お前の大切なモノと、おれの不必要なモノを。



続く

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