カルバノグ2章読了後、カヤのバレンタインイベント妄想
「お疲れ様です、先生」
“お疲れ様、カヤ”
「いやぁ、大変そうですね、バレンタイン」
「生徒を呼び出してはあっちこっち飛び回って……お身体の方は大丈夫ですか?」
“まあ、何とか”
「動き回ってるから太る心配はなさそうですけど……博愛も行き過ぎると自分の首を絞めますよ?」
「その点は先生の大きな美徳ですけど、同時に大きな欠点でもありますからね」
“でも、生徒の好意を無碍にするわけにはいかないよ”
“せっかくみんなが真心こめて用意してくれたんだからさ”
「…………本当、気を付けてくださいよ?」
「先生に何かあったらキヴォトスは……ハイ、とても悲惨なことになると思うので!」
“き、気を付けます……”
“――――ところでさ、カヤ”
「はい? 何でしょうか……」
「ああ、私からのチョコですか? 用意してませんよ?」
“えっ!? 用意してくれてないの!?”
「だって先生が飽きるほどチョコを貰うことになるのは分かってますし……ねぇ」
「先程申し上げた通り、食べ過ぎは生活習慣病の元です。先生の健康を損なうわけにはいきませんから」
「無論、先生が他の生徒から貰う分には止めませんが……限度ってものがありますからね」
“そ、そんなぁ……”
“カヤからのチョコ、食べたかった……”
「……………………」
「まあ、『チョコは用意していない』というのは本当です」
「ですが、まあ、その代わりということで。少々お待ちいただけますか?」
“? うん、いいけど”
(カヤが部屋から出て行った)
(数分後、カヤが2つのマグカップを持って部屋に入ってきた)
「先生がお好きなのは角砂糖2個にコーヒーフレッシュ1個、でしたよね」
「はい、こちらどうぞお飲みください」
“コーヒー、淹れてくれたの?”
「給湯室に自費でコーヒーメーカーを置いてますので、それでちょちょいと」
「豆にも挽き方にも拘ってみました。先生のリアクションが一番よかった淹れ方です」
「個人的にはチョコにかなり合うと思うのですが……お口に合ったら幸いです」
(一口飲んでみる)
“わっ、すっごい美味しい!”
「昔からこれは得意でしたので。そう言っていただけると嬉しいです」
「あ、言っておきますけど溢さないでくださいね? コーヒーのシミが白衣に着いたら悲惨ですよ」
“分かってる! ありがとう! 本当にありがとうカヤ!”
「……そこまで喜ぶようなことですか?」
「まあでも、秘書として、そこまで喜んでもらえているならば」
「それは……ええ、とても嬉しいです」
『お手製コーヒー』
カヤが手ずから淹れてくれたコーヒー。豆の産地から挽き方に至るまで拘りの逸品だ。
何の豆を使っているのか、どんな淹れ方をしているのか。それはカヤしか知らない。
ただ確かなのは、この1杯のコーヒーは共に歩んだ長い月日の賜物だということだ。