カリの正体
カルナが死んだ。
アルジュナに殺された。
「なあ兄貴のことを守ってくれないか?」
「旦那を?」
「兄さんはカルナが死んだことと、俺らの弟たちがカリにやられたことですっかり意気消沈してしまっています」
「そうだな……」
カルナの死体と、戻って来なかった百王子。
そして嘆くドゥリーヨダナのことを思い出して思わず怒りが湧いてくる。
「俺らはなぜカリがこんなに出没して民衆を虐殺しているのか探ってみるつもりだ」
「俺らが離れている間、兄さんのことを頼みたいのです」
「そういうことなら宝玉がある俺の方がいいんじゃないか?旦那も弟の方が……」
「……弟の仇を討ちたいんだよ」
「それに民衆の虐殺も見逃せません」
「お前なら兄貴を任せられる」
「カリもアナタが居る場所には近寄らないでしょう」
「だからお願いだ。兄貴のことを守ってくれ」
「……分かった」
「ありがとう。優しいアシュヴァッターマン」
「……悪いな。アシュヴァッターマン」
「行ってきます。アシュヴァッターマン」
「分かった。旦那やお前らの妹のためにもちゃんと帰って来いよ」
「……分かってる。じゃあなアシュヴァッターマン」
「……アイツらは?」
「カリがなぜ発生しているのか調べに行くそうだ」
「そうか。そうか……」
そしてアイツらは戻って来なかった。
ドゥリーヨダナが負けた。
ビーマが卑怯な手を使って旦那を倒した。
「旦那……」
無惨な姿になった旦那に近づいて抱き起こそうと手を伸ばす。
「……え?」
──その額にはまるでカリのような角が生えていた。
『俺らって悪魔なんだぜ』
「ああ」
ああそうか。
「あああああ」
何が旦那を守れだ。
「あああああああああああああ!
巫山戯るなよあのろくでなしの嘘つきどもが!」
アイツらがカリだったんだ!
「アシュヴァッターマン……」
「……旦那?良かった、生きて」
「お前が生きていて、良かった」