カタキウチ

カタキウチ


「─────おっそい!!!カズサの奴何してるのよーーーー!!!!!」


オシャレな雰囲気とBGMが流れる喫茶店で、ヨシミの絶叫が響いた。

「カズサがここのスイーツを食べよう、って誘ったのに誘った本人が遅刻するってどういう事なのよーーー!!!!」

「ま、まぁまぁ。ヨシミちゃん落ち着いて・・・」

「・・・ふむ。でも、カズサが遅刻するなんて珍しいね。モモトークにも既読がつかない」

怒髪天のヨシミをアイリが宥め、ナツがモモトークを眺めながら呟く。


「電話しても通じないし・・・カズサちゃん、何かあったのかな?」

「ふっ、もしかしたら楽しみ過ぎて眠れずに、寝坊してしまったのかも知れないね」

「いやいや、そんな小学生みたいな事カズサが──────」







《番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします》

《トリニティ総合学園の○○地区にて、巨体な怪物が現れ──────》

「・・・えっ?」




喫茶店のTVがニュース番組に切り替わり、信じられない光景が映し出される。

黒い巨大な猫の様な怪物が、車や人々を撥ね飛ばし暴れている。

まるで、怪獣映画やモンスターパニック映画の様な光景がアイリ達の目に飛び込んできた。


《現在、正義実現委員会とヴァルキューレが対応していますが。被害は甚大で、ティーパーティーは該当地区に緊急避難勧告を─────》

「・・・な、なによこれ?なんなのよ、一体・・・」

「・・・映画の予告編。と言うわけではなさそうだね」

「・・・み、皆」

震えるアイリの声に、顔を向けると。

アイリは、顔を青ざめさせガタガタと震えていた。







「○○地区って、カズサちゃんが住んでる所じゃ・・・」








─────救護騎士団ですッ!!退いてください!!


─────落ち着いて避難して下さい!!押さないで!!


─────お母さーーーーん!どこーーーー!!!


─────しっかりして!○○ちゃん!!○○ちゃん!!


─────○○にて怪物と接敵!!早く増援に!


「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」

なんだこれは?なんなのよ!

まるで、そこは戦場だった。

逃げ惑う人々、大怪我した人達。

避難誘導するヴァルキューレ。

緊迫した表情で、銃声がする方向へ駆けていく正義実現委員会の生徒。

明らかに異常な光景だった。

だからこそ、余計に嫌な予感が胸をよぎる。


────もしかしたら、カズサは


「考えるな!考えるな!考えるな!きっとカズサは大丈夫!大丈夫!大丈夫!」

自分に言い聞かせるように叫ぶ。

ナツもアイリも必死で走る。


「アイリッ!次は?!」

「そこの角を曲がってそしたら目の前に!!」

転びそうになりながら、角を曲がり













絶望が飛び込んできた。








「・・・あ、あぁ」

「・・・嘘・・・嘘・・・」

私達の目の前には、無惨に破壊されたカズサの家があった。

「まだだ!まだ、決めつけるのは早い!!」

ナツが叫び走り出した。

「ひょっとしたら、瓦礫の下敷きになってる可能性もある!!!」

ナツの叫びに私もアイリも我に帰って彼女に続く。

「カズサッ!!カズサ、大丈夫!!?」

「返事をしてカズサちゃん!!」

「カズサ!返事ができるなら返事を────」



破壊された部屋、四方に飛びった血痕。

ひしゃげたカズサの銃やギター。

ズタズタになったカズサのパーカー


私達の目に飛び込んできたのは、そんな光景だった。



「「「ああぁぁぁぁッ!!!!!!!!」」」

涙が瞳から溢れて止まらない。

胸が張り裂けそうな程に痛い。

喉が裂けそうになる程の声量で嫌だ嘘だと叫ぶ。

カズサが死んだ、友達が死んだ、仲間が死んだ。


なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?

何でカズサなの?何で私達の友達が?何で私達の仲間が?

こんな理不尽な事あってたまるか、許せる筈がない。何で何で何で何で何でどうして!!!!















「・・・ミ・・・ン・・・ナ・・・?」

「「「ッ!!??」」」

背後から聞こえた声に、弾かれるように振り向くと、怪物がいた。


真っ黒な毛で覆われた身体、ギラギラと輝く紅い瞳、鋭い牙と爪。

巨大で不気味な猫を連想させる怪物が私達の目の前にはいた。


「・・・タス・・・ケ・・・テ・・・ミ・・・ン・・ナ・・・タス・・・ケテ」


まるで、地獄から響いてくるような低い声で怪物は呟く。助けを求める言葉にも聞こえるが、怪物は今にもこちらに飛び掛かってきそうな様子で私達を見ている。


ズタズタになったカズサのパーカー。

飛び散った血痕、ひしゃげた銃にギター。

その光景がフラッシュバックした。


ドンッ!!!




怪物に向けて発砲した。

怪物は、目を見開いてこちらを見た。



「・・・よくも。よくもカズサを・・・」

「許さない・・・絶対に許さない!」

「私達の仲間を奪った報いを、受けてもらうよ」

恐怖はなかった、むしろ。大切な友達を奪われた怒りと憎悪の方が勝っていた。

無謀かもしれない、ひょっとしたら返り討ちされてしまうかもしれない。それでも、やるしかなかった。









「「「カズサの仇だッ!!!!!!!!」」」

怪物と私達の戦いが始まった。

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