オーダーメイド

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ふたビビ×鰐 

胸と尻が育ってきつい鰐



白くしなやかな腕が男の広い背中をなぞり、ベストを伝い厚い胸部にするりと回る。大胆に開いた胸元へと差し込まれた手のひらに、優しく性感を煽るように弾力のある肉を揉み上げられ、低く呻く声は甘い熱を帯び始めていた。そして、


「待って、あなた───やっぱりバストアップしてる?」


手の中にあった"たわわ"が崩れ落ち、砂の山と化した男が吠えた。


「誰のせいだと思ってやがる!!!」





最近、服がきつい。

まさか太ったか?多忙とはいえ、健康管理は怠ったつもりはない。鏡の前に立つ自身の身体は鍛え上げられた筋肉の下でしっかりと引き締まっている。引き締まってはいるが、記憶よりも妙にメリハリが効いたフォルムになっているような……?

───これ、胸と尻だけがピンポイントでサイズアップしてねェか?

鏡面に映る己の顔がみるみる渋面を浮かべた。


「こんなバカみてェな話があるかよ……」


くそが。砂になってベストを着せたドレスシャツに潜り込む。長年片割れを補い続けた右手はボタンを留めるくらいは器用にこなすが、ここ最近は存在を主張しシャツを押し除ける胸部が邪魔で普通に着るのが面倒なのだ。

コートを着込み、葉巻の煙を燻らせる。オールバックは綺麗にキマって靴もピカピカ。よし、完璧だな。気合を入れてドアに向かって振り向いた。



バツンッ!!



ボタンがスローモーションで飛んでゆく。効果音を付けるならバインッ!といった勢いで、布の檻から解き放たれた胸がまろび出るのを見てしまった。


「…………仕立て直し、か」


煙が目に染みるぜ。





今日も今日とてアラバスタには身の程知らずの海賊共が押し寄せる。

その場から殆ど動くこともせず、接近した海賊から機械的に刈り取るように鋭い砂の刃をクールに閃かせる砂漠の英雄にアラバスタの民は熱狂した。


「……おれァ、今猛烈に機嫌が悪い。そして早急に済ませなきゃならねェ用事もある。ちょっとでも粘ろうなんざ思うんじゃあねェぞ、さっさと死にに来い」


うんざりしたように髪を掻き上げ気怠く煙を吐き出すと、胸を逸らし気怠く見下した。

そこで目の前の脅威が去り、心に余裕の生まれた人々は気付く。あれ、いつも鉄壁にガードされてる場所、ガバガバでは?


「クロコダイルさん、おっぱいデカくねェか……?」

「バカ!!!声に出すな!!!」

「でも"……!揺れ"た……!!」

「腕振ったときたゆんっていった……」


「………………」


枯らしてェな〜……こちとらパツパツのケツが気になって仕方ねェっつうのにこの愚民共がよ……!

早くテーラーの元に駆け込みたい。衣装総仕立て直しの費用はあの王女に請求してやろうか。





「……で?そのむちむちを恥ずかしげもなく露出して歩き回ったっていうの?」

「言われるような露出はしてねェし、おれの身体は恥ずかしくなんかねェ……」


そもそも、そもそもだ、


「大体なァ、こうなったのも全部……!」


───おれは王女様におっぱいもケツもいじめられたせいでこんなむちむちになってしまいました。


「全部、なによ?」

「いや……」


ふと、いつかの酒場で騒いでいた女共の会話を思い出す。

"なんか〜カレシに揉まれすぎてェ、おっぱいおっきくなちゃったみたい〜触ってみる〜?"

"やだ〜!"

くっだらねェと当時の己が横目で呆れていたあの頭スッカスカの下品な女と、今、全く同じ状況に置かれている。血の気がザッと引いて、噛み付く気力も失せてしまった。


「普段暑苦しいくらいにガードが固いから安心してたのに……なんなの急に、慎みを持ってくれない?」

「……オッサンの海賊に……何言ってんだよ……」

「……自覚が足りないみたいだから教えてあげるわ」

「ア、おい……!やめねェか……っ」





───そこで冒頭に戻るわけだが。



「"私に揉まれた結果、大きくなって入る服がなくなったので仕方なくボタンを開けていた"」

「んあー……」

「へ、へぇー……ふぅん……やっぱり確かに最初の頃を思い返すと、ぎゅっとしたとき手から溢れる感じが……お尻もプリッとしてる……やだ、育ってる……」

「ン……その手付きやめろよ……コブラが泣くぞ……」


居た堪れない。もうここらで引き上げたい。今日のおれは全然元気じゃない。

帰りたい気持ちを込めて王女を見つめる。分かるだろ、哀れと思うならもうこの話を終わりにしてくれ。


「ええ、分かっているわ。あなたのここが胸板なんかじゃなくて乳房なんだって、分からせてあげるつもりだったのに。既にこんなに持て余して辛かったわね……もちろん責任は取ってあげる。何せここまで立派に育て上げたのはこの私なんだから!」

「何も分かっちゃねェし何でそんなに晴れやかなんだよお前……」


王女はこんな状況じゃなかったら愚民共が一生ついて行きます!と泣いて喜びそうな、凛と大変頼もしい表情で胸を張った。と思えば何処となくねとりとした視線でこちらの全身を舐め上げる。


「衣装も心配しなくていいわ。シックで禁欲的かつセクシーなデザインがいいわね……帰りに測らせるわ」

「そこだけ叶っちまったか……」


あれよあれよと天井を見上げて、ドレスシャツとベストから乳房だけ丸出しにした酷い格好でひたすらに揉まれ舐られて、そこがいかに恥ずかしい部位なのかを教え込まれた。これを思い出して他人の前で露出するのを躊躇うようになったらどうしてくれる。あぁ後ろが責任を取って欲しい欲しいと疼いて堪らない。だがリップサービスすらしてやるものか、今のおれは元気がなくてマグロなんだよ。唇を噛んで身を委ねた。


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