オモチャの兵隊さんとの出会い
三毛猫ルカのとある島での出来事の人ホビルカIF妄想SS
先行潜入√ [三毛猫のぬいぐるみ②]
ホビルカ前日談その2
◆◆
〔ひとまず場所を移動しよう、この姿のままじゃ能力も使えない〕
様々な仮説がルカの頭の中をグルグル駆け回る、今はフワフワの綿しか詰まっていない頭がズキリと痛む気がした。
いつ敵に見つかるかわからない。周りを警戒しながら考えていると
「おや?見かけない顔だ。新入りかな。」
声のする方へ顔を向けると、銃を手に持った、片足のオモチャの兵隊が立っていた。ルカがドレスローザに着いてから彼を見かけない日はなかった。この街ではいつも騒ぎの中心で、ルカが巻き込まれかけたのも一度や二度ではない。
〔──!兵隊さんぼくだよ!今はこんな姿だけど猫のときに撫でられたこともあるんだよ!〕
いつも筆談で使っているノートが無いため、全身を使い身振り手ぶりで必死に伝える。
「な、なんだどうしたっ!?わかった、わかったから落ち着きなさい。」
ルカの勢いに押され兵隊さんがたじろぐ。
「ふむ…その様子だと私はキミと会ったことがあるようだ…。──申し訳ない、覚えていないんだ…」「契約で喋れなくされたのか…?」
兵隊のオモチャがボソリと呟く
(けいやく…??)
ルカが喋れないのは元からなので首を振って否定する。
〔あぁ…もう。ジェスチャーだけじゃ上手く伝わらない。ぼくのノートどこにいっちゃったんだよ!〕
伝達方法が限られているため、うまく意思疎通がとれず、声の出ない自分に苛立ちを覚える。
ルカは紙とペンがほしいとジェスチャーで伝えると、兵隊さんは「書くものが欲しいのか?…少し待っていなさい」と言い残しその場を離れた。
待っていると兵隊さんが「こんな物しか用意できなかったが…。」そう言いながらしわくちゃな紙とペンを渡してくれた。
◆◆
ありがたく紙とペンを受け取ると急いで文字を書き殴る。
ぬいぐるみの姿では上手くペンが持てず、ヘロヘロとした歪な文字が並ぶが、そんなことを気にしている暇は無い。ルカは必死に文字を綴った。
【おうかしちぶかい、トラファルガー・ロー、弟ルカ←ぼく。少女にぬいぐるみにされた。けいやくってなに? こうじょう探すために来た。ドレスローザでなにがあったの? 国王ドフラミンゴわるいやつ!復讐しにきた!!!】
慣れない体で文字を書くのは重労働だったが、必死に書き上げた。
今ルカが持ちうる情報と知りたいことを書き殴った紙を兵隊さんに見せる。
「__っ、これは!!」
オモチャの兵隊は紙とルカを交互に見比べ息を呑む、少し考えるそぶりを見せると、「…わかった、信じよう。君にはいろいろ聞きたいこともある。ここでは誰に見つかるかわからない、案内するついてきなさい。」
ルカのあまりに必死な様子と、紙に書かれた内容を詳しく聞くためオモチャの兵隊はルカをつれ花畑へと向かった。
◆◆
兵隊さんに連れられて入り組んだ路地を抜け、人目を避けときに野良犬に追い回され、やっとの事で花畑へ辿り着いた。
秘密の入り口から地下へ降りていくと「隊長!お帰りなさい!」「お客さんれすか?」「猫さん!かわいい~」
〔うわぁ!〕
ワラワラと小人がルカの周りを取り囲む。
〔妖精さんこんなにたくさんいたんだ…〕
数日前レストランの裏口で腹ごしらえしている最中に、一度だけ目にしたことがあった。人間の前には姿を現さないって聞いたけど、あの時は猫の姿だったから気付かれなかったのかな?
「さぁ座ってくれ、少し…昔話をしよう。」
兵隊さんに促され席に着く。
ぼくが座ったのを確認すると兵隊さんはドレスローザに起こったことを語り始めた。
◆
「──オモチャにされた我々は人間だった頃の事を全て憶えているが…周りの人々はすっかり忘れてしまう」
「大切な者を忘れたことにも気づかない…これは我々オモチャ同士でもそうなのだ」
【だからぼくのこともわからなかったんだね】
「ああ…。それとキミの兄であるトラファルガー・ローも、他にもいる仲間も…」
〔兄さま達がぼくのことを憶えていない…?〕
ぼくがいま人の体だったなら冷や汗が噴き出していただろう。
いまのぼくには兄が自分を忘れている事実を "受け止める" 事は出きても "受け入れる" 事は出きなかった。
◆
「少し休憩しよう、整理する時間も必要だろう?」
兵隊さんは立ち上がり「すまない用事を思い出した。わたしは少し席を外す、ゆっくり考えるといい。」とその場をあとにした。
兵隊さんの口から語られた、余りに惨い惨状に息が詰まる。ルカはその場から動けないでいた。この国を襲った悲劇、話を聞いただけのぼくでもどれだけツラく苦しかったのか容易に想像ができる。
「大丈夫れすか?」
ひとりの小人が微動だにしないルカを心配して声を掛けてきた。彼はレオと名乗り一枚の紙を渡してきた。
「情報部隊が手配書の山から見つけたれす。」
手渡されたのはルカの手配書だった。
「七武海の弟なんて凄いれす!ルカが仲間になってくれたらとっても心強いれす!」
興奮気味に話すレオを見てルカの胸がチリチリ痛んだ。
こんなに純粋で勇敢な小人の仲間がいまも何処かで苦しんでいる。
「ルカも不思議な力があるんれすか?ぼくは縫いつけるのが得意れす!」
「どうです!」ジャーンと音が聞こえそうなほど得意げに目の前で机を縫い付けてみせる。
それを見たぼくはあることを思いついた。ぼくは体のハートマークと手配書の名前を交互に指しながらレオに伝える。
「え…?んー?ああ!お安いご用れす!」
レオは首をひねりすこし思案したあと、ピンときた様子で胸を叩き返事をする。
すると見事な早業で胸元のアップリケに"LUKA"と文字を刻んだ。
手で文字を撫でる…。
これで覚悟は決まった。
なんとしてでも自分の体を取り戻す!
〔ぼくはハートの海賊団副船長、トラファルガー・ルカ、兄さまの弟!〕
やつを…ドフラミンゴを許してはいけない。コラさんの代わりにぼくが───!!
兵隊さんが戻ってきたら頼み込もう
──ぼくもこの国のために戦わせて欲しいと
シーザーを連れた麦わらの一味とローがドレスローザに着くまであと1日