エフの妹の話

エフの妹の話



「えっ!?エフって妹いるの?」

「うん。2人いるよ。私は1番上」


地味に衝撃の事実なんですけど。相変わらず口の端にお菓子のカスをくっ付けている同室の新たな情報に口をあんぐりと開けた。


うっそぉ…全然そんな風には見えなかった。確かに見た目は大人びているけど、きょうだいがいるっていう雰囲気では無い。普段はぼんやりしてて…そうそう、一人っ子気質っていうのかな。もしきょうだいがいるなら、お兄さんがお姉さんかと思ってた。クリスエス先輩やスペ先輩のようなタイプの全然違う先輩たちから可愛がられてるし、私も色々と世話焼いちゃってる部分あるし可愛がられ気質っぽい感じある。


「なんか、結構びっくりしてるね」

「そりゃ、もう。予想外過ぎて。ひとりっ子かと思ってたもん」


私が姉さん姉さんと隙あらば語っている(自覚はある)のに対し、エフは家族のことを全く話さない。だって、お互いデビューして数ヶ月経った今日ようやく弟と妹がいるって教えてくれたくらいだもん。友達の家族のことって、何となくこちらからは聞き辛いし。

エフの妹かあ…どんな子なんだろうな。


「妹たちとは一緒に遊びに行ったりするの?」

「うん。一緒に服買いに行ったりするよ。私が実家に帰るときには服選びとかヘアアレンジとかやってほしいってよく強請ってきてさ、結構甘えん坊」

「え〜いいじゃん。可愛い妹さんたちだね」


エフにしては珍しく口元が緩んでる。仲良いんだ。


エフってぼんやりしてて、他人にあまり興味無さそうに見えるけど、思い返してみると意外と面倒見いいんだよね。

後輩と一緒に併走しているところたまに見る。トレーニング中とかギャラリーが応援しにきてたりするし、この子、意外と年下にモテるのかもしれない。口の周りにお菓子のカスつけまくってるけど。


「意外だけど、確かにアンタ面倒見いいもんね」

「そうかな。でも、年下の子と一緒にいるのは楽しい。タイちゃんはしっかりしてるから最初妹か弟いるのかと思ってた」

「うそ、初めて言われた」


私に弟か妹かあ…。あまり考えたことなかったけど、実際にいたら、うん、結構いいかも。


「あっ、私の2番目の妹ね、今度のファン感謝祭に来てくれるんだって。紹介するよ。タイちゃんにも会いたいって言ってた」


甘えん坊で「おねえちゃん!」って言いながらエフにべったりな妹を想像して私は微笑ましく笑った。



後日、「紹介するね。妹のペリファーニア。」と少し照れくさそうにするエフの隣に、とても年下とは思えない背丈の黒髪ウマ娘がペコリと頭を下げている目の前で「DNAってすごいな…」と遠くを見つめることになることを、今の私はまだ知らない。


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