『エピソードオブRED』

『エピソードオブRED』


いつもの日常のはずだった。

四皇の首を狙う海賊を、一味全員で相手する。

それだけのはずだった。


「気をつけて、確か億声も数名いる海賊団よ。」

ロビンの忠告に、ルフィ達がよりやる気を出す。

負けてはいられない。私も少し本気を出そう。

己のものとなった、魔王の旋律を響かせる。


『ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ』


己の周りに黒い渦が現れる。

この渦から、己に魔王の力を身にまとう…はずだった。


「……あれ?」


妙だ。

渦が激しさをどんどん増していく。

何かがおかしい。

「ちょっと、どうなってるの!?」

「ワ、分カラネェ!オ前何シタ!?」

「あんたに分からなくて分かるわけ無いでしょ!!」

己の中の魔王と口論してる間にも、どんどん黒い渦が力を増していく。

「な、なにこれほんとに…!」

一味のみんなも、敵の海賊も、何だとばかりにこちらを見ている。

そんな中、一人こちらに手を伸ばしてくれた。


「おい、ウタ!」

「ルフィ…!」

なんとか渦から手を出し、ルフィの差し伸べたそれを掴む。

…だが、渦は消えることなく…やがて、意識を失った。

〜〜


ドサッ

「あぶっ!!」

黒い渦に飲み込まれたと思ったら、いつの間に叩きつけられる。

どうやら中に放り出されて落ちたらしい。

…だが、運がいい。

どうやらサニー号のようだ。

既に戦闘の音はない。もう終わったのだろうか。


「もう…さっきのなんだったの…。」

そう言って体を起こすと、妙なものが目に入る。

何故かウソップとチョッパーが変な顔してる。

「…?どうし」



『エエエエエエエエエエエエ!!?』


「な、なんでプリンセスウタが!?」

「え、え、え!?夢見てるのかおれ!?」

「……ん?」


何だその反応は。

人を有名人みたいに。


「どうしたお前ら…って、UTAちゃん!?本物!?」

「何々…って、嘘、UTA!?」

「何じゃ騒がしいのォ…」

次々と一味のみんなが集まるが…みんなの視線が違和感を感じる。

「えーと、みんなどうし」

言いかけたところで止まる。首元に突きつけられた閻魔を見る。

「おい、お前どっから紛れ込んだ?」

ゾロがこちらを睨んでいる。

完全に不審者を見ている目だ。

「あの、これなんのいたず」

「マリモなにUTAちゃんに向けてんだおろすぞォ!」

「上等だエロガッパ!」 

突っ込もうとしたら先にサンジが突っ込んでいった。

いつもの光景だが…なんなんだこれは。


「ねえ、みんなほんとに…」


「なんだ?どうした?」

騒ぎを聞きつけたのか、特等席から最後の一人…船長ルフィがやってきた。

「あ、ルフィ!これなんのいたずらなの!?…ルフィ?」

ルフィなら答えてくれると思ったが…なんだかルフィまで呆けている。


「あー!お前ウタだろ!」

「え?は?…そうだけど……?」

そりゃそうだろうと頷くと、いきなり伸びてきた手に抱きしめられる。

「ウタァ!久しぶりじゃねェかお前!」

「ちょ、わぷ!」

いきなりなんなのだ今日は。

みんな様子が変だ。


「おいルフィ!お前プリンセスウタとなんで仲良いんだ!」

「え?ウソップなんでウタ知ってるんだ?」

「ルフィ、彼女は今最も世界で愛されている歌姫なのよ?」

…ん?

「ヨホホ。私が言うのもなんですが、彼女の歌は別次元です!…なぜライブ目前の彼女がここにいるのかは分かりませんが。」

……んん??

「アウ!結局なんでルフィは知り合いなんだ?」

「だってこいつ、シャンクスの娘だもん!」


『えええええええ!!!?』

………んんん???


「…ねえトットムジカ…これって…」

「…アー…」

己の中の魔王は少しためて…とんでもないことを言い出した。


「…コレ、オレモオ前モ…別ノ世界来タンジャナイカ?」

 

「はああああああああ!?」

…声に出さず、己の心で叫んだ私を褒めてやりたかった。


to be continued…

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