エネル戦&オマケ

エネル戦&オマケ


「俺は打算的な女が嫌いでね」

 その言葉と共に放たれた閃光が、ロビンの頭を一瞬にして貫く。

 雷鳴の残響が場を支配する中、崩れ落ちる彼女の体を、飛び出したゾロが抱き留めた。

「女だぞ・・・!」

「・・・・・・見ればわかる」

 怒気を滲ませゾロに対し、それがどうしたとばかりに平然とした表情で神・エネルは答える。

 刹那、エネルの背後に回り込んだウタが、横薙ぎに槍を振るいエネルへ切りかかる。だが当のエネルは振り返りもせず、手にした杖でその攻撃を受け止めてみせた。

「クッ!?」

「フム、なかなかに素早い。そして」

 杖を回し槍ごとウタを跳ね除けつつ、正面から迫ったゾロの刀までも杖で受け止めるエネル。その表情は依然として余裕に満ちている。

「こちらもいい腕だ」

「イカレてんのかてめェは!!」

 尚も追撃するゾロだったが、その刃の悉くを交わし、エネルはひらりと宙に飛び上がった。

「燃焼砲【バーンバズーカ】!!」

「ヤハハ・・・雷光【カリ】!

 その瞬間を狙い放たれたワイパーの燃焼砲【バーンバズーカ】の業火を、猛烈な雷の光熱で掻き消し、悠々とエネルは地に降り立つ。

「まだわからんか。お前たちの扱えるエネルギーなど、私にとっては無に等しいのだ」

 雷光【カリ】によって放たれた光と振動がまだ微かに体に響いているにも関わらず、こちらを睨み付ける眼光の衰えない三人に、エネルはあからさまに呆れてみせた。

 「やれやれ・・・これから共に〝限りない大地〟へ旅立とうと言うのに、何もそう殺気立つこともあるまい」

 「誰がそこへついてくって言ったんだ」

 「そうだよ、ふざけないで」

 反論した青海の海賊二人を、エネルは感情の籠っていない目で見返す。そんなエネルに、ウタはさらに語気を荒くした。

「さっきから聞いてれば好き勝手言って・・・!

 神様だかなんだか知らないけど、アンタ!国を一つ滅ぼすっていうのが、どういうことか分かってるの!!」

 様々な感情の籠ったその言葉。だが目の前の男は、それらが意味を為すような相手ではない。

 「ヤハハハハ!青海の、歌姫といったところか、娘。貴様は大いに勘違いしている。

 分かる、分からぬではない。『許される』のだ、私にはな」

「!?」

「そんなに行きたきゃ、何もしねェで独りで行けよ」

 刀を構えなおし、一瞬ウタとアイコンタクトした後、ゾロが再びエネルへと突進する。

「俺たちはお前の言う〝夢の世界〟に興味はねェ!」

ウタの姿をエネルの視界から遮るように進むゾロ。その後方で、ウタは槍をマイクスタンドに切り替える。

(エネルはゴロゴロの実、つまり〝自然系〟。なら、今の勝機はこれしかない・・・!)

 脳裏に過るのはローグタウンでの一幕。たまたま路上ライブ中に目撃した、ケムリンことスモーカー大佐がアイスを持った少女とぶつかった場面。その後スモーカーからおひねりを貰ったり、海賊だとバレておひねりを返せと追いかけられたが、それは余談だ。大事なのは、飛び出してきた女の子がスモーカーにぶつかったということ。

(意識外からの攻撃なら〝自然系〟にも当たる可能性はある。だったら、私の〝ウタウタ〟の能力でエネルの意識をウタワールドに引っ張れば、その間は攻撃が効くかもしれない!)

 危険な賭けだが、やるしかないと意識を集中する。アラバスタまでの航海で身に付けた「歌を届ける相手を絞る」能力。通常よりも体力の消耗は激しいが、ここでエネルが倒せるなら、いくら消耗しても関係ない。

 目標をエネルに絞り、息を吸い、声を出そうとして——


「1000万ボルト・・・」

「え・・・」


 突然、ウタの目の前に光が現れた。

放電【ヴァーリー】!!!


 ガクリと、ウタの膝が地に着く。

「歌声がトリガーになる〝超人系〟か。考えは悪くはなかったが」

 エネルの声と、ナミとゾロが自分の名を叫ぶのが微かに聴こえる。

「雷よりも早く、声を出せると思ったのか?」

 そしてウタの体は、完全に地へと崩れ落ちた。


 

 

 

 

 









オマケ「ア~アア~~」天丼


「・・・ウン!アァ~~~・・・

 ウウン!!」

 万全の準備を整え、ゾロは勢いよく飛び出した。

「アーーアアーーー・・・」

「それは何、言う決まりなの?」

 メリー号が供えられた祭壇の上から、蔦を使って陸へと飛び移るゾロに、ナミは冷静に突っ込んだ。

「仕方ないよ、ナミ。男の子っていうのはああいうものなんだから」

(こんな感じで大丈夫だろうか)と頭を抱えるナミの肩を、ウタが優しく叩く。

「だからこそ、私たちがしっかりしないとね!」

「ウタ・・・!」

 キリッとした表情で語るその姿は、確かな年上の威厳を纏っていた。そんなウタの姿を見て、ナミの心は打ち震える。

「おい、お前らも早く来い!」

「今行くねー!」

 そうなのだ。普段はルフィたちと一緒に元気にはっちゃけている彼女だが、実際には自分よりも年上の女性なのだ。こういった状況であれば、男どものあほな行動に冷静にツッコミをしたり諫めたりしてくれる可能性だって——。


「ア~~アア~~~!!」

「ウタ?」

 あるわけなかった。

 ゾロよりも遥かに周囲に響く美声を発して陸へと渡るウタを見ながら、ナミ二度目のツッコミは虚しくアッパーヤードの空気に溶けていった。

  

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