ウタvsミス・ダブルフィンガー
「「残念ハズレ」」
北門からアルバーナへと入ったウタとゾロのコンビは追って来たMr.1のペアと対峙する。
「ハメられたわねMr.1。この調子じゃあ本当にあの中に王女が居たのかも怪しいわ。」
「…まいったぜ。」
「ねぇ。聞いた?ゾロ。Mr.1だって。BW社のトップペア。私たち、当たり引いたみたい。」
「あァ。相手にとって不足は無ェ。」
ゾロは3本の刀を構え、ウタはマイクを取り出す。3つの棒に分けられていたそれは一瞬の間にマイクスタンドになった。対してMr.1のペアは何も構えず立ち位置だけを調整する。
「何も構えない…もしかして私たちなめられてる?」
「そんなわけねェだろ。何かタネがある筈だ。おい。男の方は貰うぞ。」
「了解。連携されたら不利だしね。」
そうゆうとウタはマイクスタンドを構える。途端にその先端から刃が飛び出る。そしてそれを、地面に突き刺すと同時にスタンドの中断から生えてくるスピーカー。
「あんまりこうゆう使い方はしたく無いんだけどね。"活発なる子守唄!!【ビバーチェ・ララバイ】"」
一瞬だった。鍛えられた歌姫の発する声はマイクスタンドに取り付けられた指向性スピーカーの力でソニックブームとなりMr.1のペアへと襲い掛かり2人は双方向に躱す。そして、その隙を逃す程"海賊狩り"は甘く無い。
「"虎狩り!!"そっちは任せたぞ!」
受け飛んで行ったMr.1をゾロは追いかけていく。その場に残ったのは2人の女性。
「確かにいい判断だけどあなたが負ければそこまで。Mr.1がいない間に彼と連携して来た方が良かったんじゃなくて?」
「大丈夫だよ。わたしもゾロも強いから。」
ミス・ダブルフィンガーの挑発にウタはマイクスタンドを引き抜きながら不敵に笑って返す。
大上段からウタはその槍(マイクスタンド)を振り下ろす。それをダブルフィンガーは受け止める。一瞬の硬直。そして、ミス・ダブルフィンガーの肘の当たりからトゲが伸びてくる。
「ッ!?危ないなぁ。歌姫の顔に傷がついたらどうしてくれるのよ。」
ウタはすんでの所で躱し距離を取る。少し遠目で見ればそのトゲが人体としておかしい所から生えてるのが良くわかる。つまり、
「悪魔の実…」
「正解。私は『トゲトゲの実』を食べた棘人間。体のどこからでもトゲを出す事ができるのよ。」
ウタの呟きに対しミス・ダブルフィンガーはまるで見せつけるように身体中からトゲをだしてみせる。
(何処からでも予備動作無しでトゲが出てくるなら近接戦闘は不利…だけど)
ウタは槍を構え突進し前面に突き刺す。
「"急速な練習曲!!【プレスト・エチュード】"」(リーチなら私の方が上!!)
その華奢な体からは想像もつかない速度でウタは突撃する。
(助走も狙いもバッチリ!これなら!)
「いい攻撃だけど、少し直線的すぎるんじゃ無いかしら。」
しかし、完璧に見えた突きは容易く止められる。そして、ミス・ダブルフィンガーは一歩踏み込む。これで射程内。
「"スティンガーフィンガー!!"」
顔面を目掛けて飛んでくるトゲの手をウタは掴まれてるマイクスタンドの中段を分離し下に体を落とす事で回避し、そのままミス・ダブルフィンガーの腹を目掛けて思いっきり蹴りを入れる。蹴られたミス・ダブルフィンガーは突き飛ばされ今度はミス・ダブルフィンガー側から距離を取る形になった。
「「……」」
距離を取った両者の間にはさっきまでのお喋りが嘘だったかのような沈黙が流れる。ミス・ダブルフィンガーは手に持ったマイクスタンドの中段を再利用されないように自らの後ろに投げ捨てる。それに対しウタはマイクスタンドを上段と下段のみで組みなおし短めの槍を再構築する。そして、マイクスタンドの中断が地面に落ちると同時に2人は互いに向かって駆け出す。
「"シー・アーチンスティンガー"」
髪をトゲにし回転をかけ突っ込んでくるミス・ダブルフィンガーを右半身を前面に出す事で受け止める。腕に細い痛みが何本も走るがそれすらも織り込み済みだ。急所も守った。そして、その短くなった槍を大上段に構え、
「"重々しい受難曲!!【グラーヴェ・パッション】"」
振り下ろす。コルボ山の三兄弟について行き獣と戦う事で身につけたその筋力は歌姫の細腕からは想像もつかない威力となる。街の壁さえ容易く貫くダブルフィンガーのトゲを砕き、その脳天に重撃が入る。その一撃を受けてミス・フィンガーは気絶した。
アルバーナ北ブロックメディ議事堂表通りの戦いーー勝者ーーウタ