ウタ

ウタ


※REDの内容をウタ目線で書いただけ

※なので解釈違いがあるかも

※特に改変したところはないけど、うろ覚えなので台詞や話の順序が違うところがあるかも

※話が飛び飛びになる

※駄文、見にくいかもしれない

↓ から始まります
































私はずっと歌い続けてきた。

フーシャ村にいたときも、シャンクスの船に乗って冒険したときも、シャンクスたちに捨てられてからも、ずっと。


私の歌は皆を、世界を救えるんだ。


エレジアに流れ着いた電伝虫で歌を発信したあのときから、私はそう信じている。確信している。

だって、私の歌を聞いてくれた皆は、とっても嬉しそうに笑うんだ。私の歌で、笑顔になってくれるんだ。だから私は、ずっと歌い続けるよ。この世界にいる皆の為に。

だから、皆が嫌なことはなくしてしまいたい。

広い世界には、辛い現実があるって知ったんだ。戦争、犯罪、海賊。この世にはそういう、平和じゃないものが沢山ある。そしてそれに伴って、犠牲者も沢山いる。

それなら、争いをなくせばいいんだよ。

正義を象徴する海軍にはできないけど、皆の救世主の私には、それができる。私の持つウタウタの能力を使えば、皆が幸せで平和な世界が創れる。

でも、私の能力には限界がある。私が眠ったら、ウタウタの能力は切れて、私の世界は途切れてしまう。

そんなのはダメだよ。平和な世界が存在しないなんて有り得ない。だって私がいるんだから。

きっと皆を、平和な世界に連れていってあげるんだ。そしてずっと、その世界で、永遠に。

皆が私のファンなら、争いなんて起こらない筈。もし起こっても、その人を捕まえて叱ればいい。そうすれば平和だね。衣食住だって困らせない。私の世界の中からなんでもできるから。

そうしたらきっと、皆が幸せになる。

肉体が死んだって構わない。だって大切なのは心だから。幸せだって、楽しいって思うのは心。私の世界の中なら体だってなくならないから、何の心配もない。

だから安心してね、皆。そろそろ叶うから。やっと出来るんだ。新時代が!!!



「そろそろ帰らなくちゃ」

「今まで続けてきたことだってあるし…」

「ウタちゃん、やり過ぎだよ」

「ついていけないよ、ウタ」



…なんで?


皆、この世界が欲しいんじゃなかったの?

皆言ってたじゃん、ずっと私の歌を聞いていたいって。何にも縛られない、平和な世界が欲しいって。そんな世界があればいいなって。

大丈夫だよ。悪い海賊も、海軍も、天竜人のおじさんも、もう邪魔するものは何もないんだ。もちろん仕事だってしなくていい。遠慮なんてしなくていいよ。皆が望んだ世界は、ここにある。

それなのに、なんで?なんでこんなに否定的なの?

ここにずっといたいって人もいるのに、いたくないって人もいる。これじゃ、皆で争っちゃう。そんなの嫌。そんなの、新時代じゃない。

私はもうネズキノコを食べたから、ここから逃げ出すことなんて不可能なの。だから皆で、この楽しい世界で永遠に居続けようよ。

そう。この、楽しい、世界で…


そうだ、楽しければいいんだ!!

ここが何処よりも楽しい場所なら、皆が現実に戻りたいなんて考えなくなる!!そうしたら皆の意見も1つになって、争い事なんてなくなるよね!!!

それなら早くそうしなくちゃ。楽しい楽しい世界にしなくちゃ。

そうだ!可愛くてキレイなものって、自然と心が楽しくなるよね。だからきらきらの湖を創ろう。体がぬいぐるみみたいな可愛いものになれば、きっと心もウキウキするよ。そうすれば話せないから、争いなんてきっと起きない。これって凄い名案じゃない?

皆を水で包み込んで、息が出来ないのは苦しいから全員ぬいぐるみにして。ほら、皆可愛くなったよ。

うさぎ、ねこ、いぬ、アメとか、ソフトクリームもいいね。ほら皆、もっともっと楽しんじゃおう!!


私の世界なら全部が叶う。

音符が乗り物や悪者を捕まえる縄にだってなるし、お酒や食べ物が欲しいならいつでも出せる。ぬいぐるみだって幾らでも出してあげる。

もちろん、平和だって叶うんだ。これまでにどんな人も実現出来なかった平和さえ、私なら実現出来る。この能力で、平和が叶うんだ。

海賊も何も、邪魔するものが誰もいない、新時代が創れるんだ。

そう、昔からずっと夢だった、新時代が、やっと……




────『……何これ』

『シャンクスの麦わらぼうし!!』

『ヘタ…』

『おれたちの“しんじだい”のマークにしよう!!! それやるよ!!』────




…新時代に、ルフィは、海賊は、いらない。

海賊はろくなものじゃない。

弱い人から何もかもを奪う。それが例え、家でも、街でも、その人の大切な思い出でも、命でも。何だって奪ってしまうんだ。そんな邪悪な存在は、平和な新時代にはいらない。

いらないんだよ、シャンクスは。私の創る新時代にはいらない。だから、今更来たってもう遅いんだ。

ルフィが殺されるから来たんじゃなくって、私の歌を聞きに来た?だから何?小さな私をここに捨てた癖にさ。

もう遅いよ。私は止まらない。

……だから、邪魔しないで。

海賊とか海軍とか天竜人とか、そんなのどうでもいい。新時代は皆同じで、身分とかそんなの無い平等な世界なんだ。


私は歌うんだ。もう決めたよ。

この廃れた楽譜には、破滅の謡が書かれてる。コレを歌えば魔王が目覚める。きっとエレジアは再び滅びる。もしかしたら世界も終わるかもしれない。

それでもいいや。

もう私のファンは皆私の世界にいる。だから肉体が消えたって構わない。ついでに私を邪魔しようとする海賊も海軍も皆いなくなってくれるんなら、万々歳だね。

そしてそのまま私はこのキノコで死んで、永遠の平和が、新時代が完成する。

ほら、完璧。これでいいんだよ。これで新時代が完成するなら、死んだって本望だね。

大丈夫。新しい世界でもうまくやっていける。だって全ては私の想いのままなんだから。

これでやっと、全てが終わる。

やっとこれで、全てが始まる。




「かつてここを滅ぼしたのは、トットムジカなんだ!!!」




…知ってたよ。

私なんでしょ? 私が全部悪いんでしょ?

────お前がいなければ──お前のせいで──ウタのせいで──あの子の歌は、世界を滅ぼす────

あの、電伝虫の映像に乗っていた言葉。

分かってる。私がエレジアを破滅に追いやったんでしょ? 私のせいで沢山の人が苦しんだ。沢山の人が犠牲になった。全部、全部、分かってる。

でももう戻れない。私はもう止まらない。

せっかくここまできたんだから、私は創るよ、新時代を。




「ほら、ウタ!! 聞いたか!!? やっぱりシャンクスは────」




そうやって、無邪気に手を伸ばす。あの頃と全然変わってない、子どものまま。どうせなら、昔よりずっと強くなったその拳で、殴ってくれたほうが良かったのに。

もうどう思われたっていい。全部壊れてしまえ。そうやって、全てが壊れて変わってしまえばいい。

それでもいいよ。それでも、心はここで生き続けるから。


ルフィの心からの笑顔を、私は笑顔で壊す。ルフィの体を確実に射止める赤い線を、私はただ見つめていた。

そして気付いた。

ああ、なんだ。

私、“ウタ”が嫌いな海賊と、何も変わらないじゃん。冷徹で残酷で、自分の野望の為なら何もかもを壊す。相手に少しの希望を残して、最後に笑顔で、その微かな希望を粉々に砕く。

そんな海賊と私は、同じだったんだ。





「ほら、ウタ。ネズキノコの解毒薬だ。これを飲んで眠ればまだ間に合う」


魔王は倒された。エレジアも世界も壊れてない。

でも、私の世界は混乱していた。人はいなくなってないけど、現実のここも混乱中だった。

私のライブを見に来てくれたファンの皆が、海軍の人たちに襲いかかっている。身動きを取らない海賊の皆もいれば、容赦なく返り討ちにする海軍もいた。


…これが、私が創り出した世界?


皆が争って、傷つけ合って、血を流す。

違うよ。私が創りたいのは、こんなのじゃない。私が創る新時代は、もっと平和で、もっと穏やかで、こんな、こんなのじゃないんだ。

こんな状態のまま、私は眠るの?私のせいでこんな世界になったのに、なんにもしないで、キノコの毒から一人だけ助かるの?

ダメだよ。そんなのはダメだ。そんなのは“ウタ”じゃない。

ウタは人々を救う救世主だ。

歌声を皆を虜にして、辛い現実を忘れさせる。そんな夢のように幸せな時間を皆にあげる。それが私。それがプリンセス・ウタ。

私は、ウタは、皆を救う救世主で、歌姫で、それから、


「私は赤髪海賊団の音楽家、ウタだよ!!!」



私がウタなら、ここで呑気に眠ってる場合じゃない。皆を救う救世主の名の下に、私は歌う。

私が死ぬことになったって構わない。寧ろ本望だよ。皆の為にいなくなるなら、それでもいい。だって、大切なのは心でしょ!!?

体なんて、最初からどうでも良かった。私が例えここで終わろうとも、皆をここで救うんだ。私の歌で、皆を。




「いつかきっと、これがもっと似合う男になるんだぞ」




そう言って帽子を返してあげる。私にとっても大切な、シャンクスの麦わら帽子を。ルフィの顔は見えない。もうきっと、私が見ることもないだろう。

ルフィはバカだけどバカじゃないから、多分わかってると思うんだ。私はもう、そんなに長くないって。

私はやるべきことをやった。

皆の為に新時代を創ろうとして、ウタの為に海賊を嫌って、魔王を呼び出して、壊して、皆の為に、歌った。もう悔いなんて何もない。思い残すことも何もない。

後はただ、ゆっくりと、私の体を蝕む毒に、身を任すだけ。

シャンクス、ベックマン、ホンゴウさん、ルウ、ライムジュース、それから沢山の私の「お父さん」たち。

私のことを、娘だって言ってくれた。嬉しかったな。

ヤソップを見たとき、ルフィの友達に似た人がいたことを思い出した。見た目はそこまで似てないけど、なんか、雰囲気とかが似てる人がいた。

そう言いたかったけど、中々上手く声が出てきてくれなくて、ただヤソップに向けて笑うことしかできなかった。

あ、そうだ。いなくなる前に、ファンの皆に何か言わなくちゃ。

“ウタ”としての何かを。

でも、何を言えばいいんだろう。皆を新時代に連れてく為に、魔王までをも呼び出した私が、何を言えるんだろうか。分からない。

……そうだ、その為に歌があるんだね。

歌は何でも伝えられるから。

最後に皆に送る歌。それならやっぱり、これがいいよね。




────この風は どこからきたのと



なんだか声が上手く出せないけど、それでもきっと伝わってると信じよう。歌の力は偉大だから。

歌詞だけに全てが詰まってる訳じゃない。だから歌い方一つで、何もかもが違ってしまう。

繊細で難しくて、でも成功したら皆が幸せになってくれる。そんな歌が、私は大好きなんだ。




────ただひとつの夢 決して譲れない



私は、私が歌うこの歌で、皆を救いたかったんだ。辛くて苦しい現実から、私の歌を望む全ての人を、救いたかった。

私が新時代を創る夢は叶わないけど、それでもせめて、ここまで私の歌を聞いてくれた皆に、恩返しをしたい。私の歌で。




────いつだって あなたへ 届くように 歌うわ



この“あなた”って言うのは、私のファンの皆のことで、ルフィのことで、シャンクスたちのこと。

真実を知ったあの日からずっと、シャンクスに会いたいって思ってたんだ。それから、海賊を嫌いになってごめんって、お父さんでいてくれてありがとうって、言いたかった。

そのかわりに、歌で伝えたい。私の想いの全てを。




────私が消え去っても 歌は響き続ける









































ここからはウタもシャンクスも出てこない会話文もないただの蛇足です

短いです!

面白くもなんとも無いですが、良ければどうぞ!

────────────────────────────────















































レッド・フォース号の甲板に、あかとしろの二枚の羽根が落ちる。羽根たちは風に乗って、ふわりふわりと宙に漂った。

風のゆくえは分からない。風がどこへ行くのかなんて、この世の誰も分からないだろう。

だから、その羽根がそのまま天高く舞い上がり、二つの髑髏を見下ろしているのにも、誰も気付くことはなかった。

あかい羽根は、左目に三本の傷がある髑髏を。しろい羽根は、麦わら帽子を被った髑髏を。まるで微笑むかのように、ゆらりゆらりと見下ろしている。


そして途端に、風は止む。波の音も消えて行く。無音がその場を包み込んだ頃、その二つの羽根はおちて行って、静かに、水面に辿り着く。

広大な海は二つの羽根を浸食して、自身の中へと、羽根を誘う。水に浸された羽根はもう浮かない。暗い深海へと身をおとすのみ。光の届かない、海の底へと。

やがて再び、風が吹く。

水に閉じ込められた羽根を救わないまま、水面を撫ぜるだけの風。今度は二つの船の背中を押すように、吹いた。

帆に印した髑髏をはためかせて、船は進む。羽根が沈んで行くように、船もまた、止まることなく進んで行く。

羽根が海に捕まった場所に、もう船はいない。羽根を置いて、船は進む。想いを持った人たちを乗せて、どこまでも進む。

その先に、誰かが信じた“新時代”が待っている。

新時代を約束した麦わら帽子を乗せた彼の船は、これから沢山の景色を見る。信じられないくらいに美しい景色も、絶望も、奇跡も知るだろう。

彼の船は、千の海を、太陽のように越えていく。そんな輝かしい意味合いも込めてつけられた名前。それをこの船はもう話さない。

彼女の世界はなくなったのだから。

きっとこれから、船長は創り出す。彼女が成し得なかったことを、やり遂げる。彼なりの方法で、彼なりの考えで。



──── 新時代は この未来だ



どこからか、音貝に記録された音声が響く。

世界中を魅了したその歌声は、誰も真似できない、唯一無二の代物だ。彼女が消え去った今でも、彼女の歌はこの世界に響き続けている。

彼女の想いは終わらない。彼女を知る誰かが受け継ぐ。彼女の意思は、生きている。



────世界中全部 変えてしまえば



世界は変わっていく。もう誰にも止められない。受け継がれる彼女の意思も、時代のうねりも、彼女らが信じ続けた夢も、全部、止めることなどできないのだ。

人と人との繋がりは、歴史にこそ残らないが、世界を変えうる大きな力となる。その力の中心には、いつも麦わら帽子がそこにあるのだ。主を変えて、時代を超えて。

ヘッドフォンはそこにはないけれど、彼女の名はきっと歴史に残るだろう。世界の歌姫として。



────変えてしまえば…



風が吹く。船が進む。

羽根はもう決して光を見ない。それでも時間は過ぎて行く。人は動いていく。時を刻むにつれて、世界は変わっていく。

新しい時代が、始まる。

Report Page