ウタの現状

話は変わって、最近の歌に関して

ウタは最近以前と比べる間でもなく元気を取り戻してきてはいたが、時折とてももの悲しそうな顔をする

多くの場合、海を見ながら、島を離れ行く船を見つめている時、そのような表情をしている

いいや、多くの場合というより、そういった光景に出くわすと大体そういった表情になる

ウタには未だ、あの時の真実を話していない

正直そろそろいいかとも思っているが、気になる問題もあって二の足を踏んでいる

それが、TotMusicaの所在だ

あの強奪事件以降、依然としてその所在はつかめていない

私自身直接その脅威を見てはいないが、島一つを一晩で壊滅せしめるその力は厄介極まりないものだ

仮に今の状態でウタに真実を話したとして

その上で行方知れずのTotMusicaが、何らかの拍子にウタの手に渡るようなことになればどうなるか

真実を知って自暴自棄になったウタが、その力を行使しようとしないとも限らない

その可能性を考えると、できれば奴を我々の手で管理出来ている状態で真実を話したい

そのため、少なくとも現在の所在が判明するまではこの件を保留にする

それが、私とゴードン殿が下した決定だ

…そうそう

実はもう一つ、ウタが表情を暗くするときがある

それが、"父親と娘"、だ…

街中などで父親と娘がともにいる場面を見ると、よく表情が曇っている

…まぁ、思うところも多々あるのだろう、とは言え外で見る分には問題ない

あくまで他人、その場を離れれば見ることはない

…しかし、そういう訳にもいかない場合もある

テゾーロとリーテだ

私の目論見通り、年下で天真爛漫なリーテとの交流はウタの精神に良い影響をもたらした

特に最近はある理由からリーテを我が家で預かることが以前より多くなっている

まぁ預かるといっても、私を含め家じゅうのものが忙しく働いている

なかなか付きっ切りで見ているということは難しい

そんな時にリーテの相手をしてくれているのがウタだ

彼女曰く、リーテのリクエストに合わせて歌って見せたり、本の読み聞かせをしてくれているそうだ

以前いた島－おそらくフーシャ村のある島だろう－では年下の少年と毎日のように張り合い、様々な勝負事で競い合っていたらしいが、今ではウタがほぼ一方的に与える側になっている

そんなウタのことをリーテは実の姉のように慕っているし、ウタもそれが新鮮で楽しいらしく、進んでリーテの世話役を買って出てくれている

だが、テゾーロがリーテを迎えに来ると話は変わる

以前言った通り、リーテやステラを通して二人は接点を持った

が、奴に対する彼女の態度は親しみのあるものとはいえず、大概テゾーロが来たことを知るとリーテに別れを告げさっさと自室に戻ってしまう

ウタがテゾーロを避けていることは奴自身気付いているようで、パパが何かしたんじゃないかとリーテがご立腹なことも含め大分気にしていた

彼女にとって父親という存在が地雷になりかけている以上ある種仕方のないことかもしれないが、私としても、可能な限りそういった蟠りは解消したい

場合によっては、これがウタとシャンクスたちとの関係改善の足掛かりになるかもしれないしな