ウタと愉快な饅頭達との出会いinインクワールド

ウタと愉快な饅頭達との出会いinインクワールド

投稿するあにまん民

「・・・ここは何処なの?何処なのよ!」

 彼女は世界の歌姫ウタ。

 彼女は自らの新時代計画を実行する一週間前に此処、変なスタジオに訪れた・・・いや、転移したと言った方が良いだろう。

 ウタ自身こんな場所には嘗て船に乗って居た時──赤髪海賊団に属していた時も、歌姫として活躍する時も縁など無かった。

 ・・・そもそもこのスタジオは彼女とって何から何まで異質過ぎた。

 家具も調度品もスクリーンも映写機も、全てが彼女が知る物よりも遥かに未来的な物ばかりであり、更にはそこに存在する物全てがインクの様な何かで汚れている。

  それを見て彼女はそのインクであると思われる、形容しがたい≪それ≫に恐怖しながら、とある事を思い出していた。

 ────悪い子は黒い化物に連れ去られてしまうと言う御伽噺。

「違う!私は悪い子なんかじゃない!皆を救う為に新───」

『───彼女の歌声は、世界を滅ぼす!』

「────っ!」

 急いで頭を振り、頭を落ち着かせる。

「・・・こう言う状況こそ、冷静になれ。シャンクス達もそう言ってた」

 そう自らを落ち着かせた・・・その時。

 ウタの立っている地面がインクに染まって、否、飲まれいく。

 ウタはそれに恐怖しながらも、何故かある掃除用具入れの様な物に本能的に隠れる。

(・・・何で私はこんな頼り無い物に隠れようとしたんだろう?助けてよルフィ、シャンクス。一人は怖いよぉ)

 そう思いながらも息を潜め、頼り無い物の中に隠れるウタ。

 その中で見たのは変な人の様なシルエットとインクで象られた──悪魔としか言えない何かだった。

「・・・」

 言葉が出ない、いや出せない。

 恐怖で身が竦み、動けなくなってしまった。

 変に声を出せば自分が次に狙わ───インクのシルエットが此方に向いた。

 そして此方に近づこうとする。

 ・・・しかし、インクに飲まれ、消えて無くなってしまう。

 インクの化物───指し詰めインクデーモンは此方へ視線を向けるも壁をすり抜け、何処かへ消えて行ってしまった。

「・・・もう行った、のかな?」

 恐る恐るウタは外へ出る。

 ・・・・何故か外へ出なければまならない様な気がしてならない、そう本能が告げている様に思える。

 ウタには何故かそれが自分の為になると言う確信があった。

「・・・これは、何?」

 出て少し歩いた先で見つけたのは・・・何らかの銅像だった。

 それを不思議そうに眺めていると・・・突然頭が痛くなり、存在しない筈の記憶が頭に流れ込んで来る。

『──お前は邪魔だ!俺の正当な復讐の邪魔をしおって、ベンディは俺の道具だ、誰にも渡さんぞ!・・・あ!良い事を思いついた。お前の記憶を封じてループし続け、新たなアリスエンジェルにしてやろう・・・きっと楽しいぞぉ!』

 ・・・そう憎たらしく、憎悪すべき相手の言葉の記憶を思い出し、生きる意義を見失ったウタ。

 ────もう何もかも捨てて楽になっちまえ。

 ────娯楽が音楽しか無い世界に救いはあるのか?

 ────お前は現実から逃げ様としているだけの臆病者だ。

『『『変化を受け入れて、お前なんか成って果ててしまえば良いんだよ!!!』』』

・・・脳内にあふれる言葉が留まる事無く、ウタを蝕む。

『お■■の■■代■■ーク■■■■!!』

 何か、掛け替えの無い何かを忘れていそうになっていると思い左腕のアームカバーを見てみるも────そのアームカバーには何も書いて無くて、全て黒一色だった。

 インクは例外無くウタの心を殺さんと迫り、ウタにはそれを振り解く気概も無い。

 どうやらインクはウタの心が死んだ時、完全にインクで染め上げようとしている様だ。

 そんなウタの身体にインク───狂った社長の妄執が生み出した、歪んだデストピアに囚われた嘗ての被害者達が、其方側に彼女を引き込まんと絡み付いていく・・・。

 ウタはそのまま────

「───取り込むのはちょっと待てー!」

 その声と共に何故かウタに纏わり付いていたインクが消えて無くなってしまう。

「・・・ヘンリーさん」

 そう自分の肩を掴んで支えてくれているインクのシルエットをした怪人物───ヘンリーはのっぺら坊としか言い様の無い顔ながら、優しく頷き、ウタの背中を擦る。

 そこでふと気付く、

 ──ヘンリーは喋れ無いのだと。

 喋っている内容は全て最初のループの焼き直しであり、自分とは筆談でやり取りしていた筈だ。

 ・・・ではあの声は?

 ウタは徐ろにヘンリーの真後ろへ視線をよこす。

 そこに居たのは、

「ウタちゃんが、何とかしなきゃ・・・でも何をすれば!」

「ちょっと魔理沙!ウタちゃんが、ウタちゃんが!」

「ちょっと待て、霊夢!私は何でも知っている訳では無いんだ!飽くまで知っている事・・・ん?もしかして私達が見えるのかだぜ?」

「・・・はぇ?」

 ・・・一頭身の饅頭達だった。

「およ、私達が見えるのかね?コホン、私はみんなのアイドル☆シュガーだじぇ!チミは何時か世界の歌姫の座を懸けてこのシュガーちゃんと勝負するのだ!」

 白黒の吸血鬼の様な自称アイドル。

「貴方の様なエセアイドル擬き如きがウタさんに勝てる筈が無いのに何をほざいているのやら。・・・・あぁ、申し遅れました。私はフランドール・スカーレットと言います。気軽にフランとお呼び下さい」

 自称アイドルに瓜二つな金髪。

「何だとパツキンの癖に!それに何がウタさんだ!お前もウタちゃん呼びだった癖にぃ!」

「余計な事を言うな10t饅頭!」

「何おぅ!」

 ・・・何故か喧嘩を始めた二人を尻目に名前を呼び合っていた二人の名前を確認するウタ。

「えっと紅白の方が霊夢さんで白黒の方が魔理沙さんだっけ?」

「えぇ、私がコズミックカワイイ☆ゴーストドリームの博麗霊夢よ」

「・・・・・」

 突然変な自己紹介をされ固まるしか無いウタ。

 そんなウタを見て白黒饅頭──魔理沙はため息をこぼす。

「まぁ、何だ。一先ずは自己紹介をさせて貰おうか、私はこいつ等の保護者的立ち位置に居る霧雨魔理沙だぜ。・・・取り敢えず情報交換と洒落込もうなんだぜ」

 ──この出会いがあの忌々しい責任押し付けクソ社長に対する、ありとあらゆる意味での反逆の狼煙となるのだが、この時のウタ達には知る由も無かった。

 因みにヘンリーにはシュガー達の事は視認出来ないが結構前のループでベンディ共々ウタウタの実の能力の餌食となった事があるので、それの影響で妖精か精霊の類が見えているのだろうと考えている。

 ・・・・流石にウタに見えている者達が一頭身の饅頭だとは、気付かないヘンリーおいたんのなのであった。

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