ウソロビ現パロ 序章

ウソロビ現パロ 序章



ロビンの友達は本とその中にある知識だけだった。学年の成績は一番だったが昼休みも放課後も図書室で本を読んでは家に帰る毎日だ。だから友達なんていない。そもそも必要ない。知識を詰め込みいい大学に行き、いい会社に就職し、年収を稼ぐのが一番の幸せだと信じている。だからこそ海水浴だの、青春など、部活動など正直言って微塵も興味がない。恋バナなんて、いったい何のメリットがあるのやら。その結果、周りの人の悪口も言われて傷つく以前にどうでもいいというのがロビンの本音であった。

いつも本を読んでいるが本を読む場所はその日の気分によって変えている。ある日は人気のない屋上へあがる階段。夕日の日差しが気持ちいい体育倉庫の裏。そして受験にそなえ3年生が引退し、部員が一人しかいない美術室など。その日は美術室で本を読もうと決めていた。その時ふと周りの絵が気になり見ていたところ一つの画が目に留まった。


それは一人の人物像であった。金髪の女性がワンピースを着てベットの上から外を眺めている絵だ。ロビンはこれまで絵のことを正直見下していた部分があった。なぜなら本物を正確に描写したいのであれば写真よりも手間も精度も劣っているからだ。かといって抽象画になれば同じ絵であっても作者によって評価が変わるなど珍しいことではない。そのような所詮画家の権威の象徴にしかならないものになんの価値も見いだせなかったからだ。それっぽい評論家がそれっぽいことをいうだけで周りの人間は無意味に持ち上げ、子供の落書きとしか思えないような物を大きな声で褒めたたえているのがなんとなく気に食わなかった。


だがこの絵だけは明らかに違う。作者が誰かもわからない。写真にはほど遠い正確さ。正直な話ただ正確に模写するだけならこの画より上手く書けている絵は多く存在するだろう。ただ下のコンクール入賞の文字を見るとこの学校の学生の何の権威性もない絵であることはわかった。 しかし、その絵からは魂というか情熱というか明らかに何かが違った。美術の授業で嫌々ながら恥ずかしがりながら描かれた人物画とは違う、優しさや芯の強さのようなものが。すこしでもこの女性のことを表現したいという想いが伝わってくる画であった。いつの間にか本を閉じ手元に置いてその絵をじっと見つめていた。コンクール入選とあったが、個人的には他の絵を見ずともこの絵をそのまま優勝にしてもよいのではないかと思ってしまうほどだった。

すると扉がなんの前触れもなく開き、一人の少年が部屋に入った。

「ん…?誰か来てんのか…?ってニコ・ロビンか!?」

この少年の名前はウソップ。クラスの人気者であり、よく騒動の中心にいるルフィという同級生とよくつるんでいる。ちなみに彼女持ちであり、その相手はクラスでも上位レベルの美少女であり、医学部のある大学への模試もA判定の模範生、実家は資産家のスーパーお嬢様のカヤである。この学校において学力は中の下、運動神経は中の上といったごくごく普通の青年だ。嫌、厳密には絵などの手先の器用さに関してはこの学校1位なのは間違いない。そのため文化祭や体育祭でのデザインやスローガン作成の現場隊長を任され、合唱コンクールでは指揮者を任されるほどの男だ。


これがロビンとウソップの物語の始まりであった。

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