ウソロビ学パロ2

ウソロビ学パロ2


※スレのネタをお借りしている

※ワンピ学園とはまた別

 折角キレイな爪しているから何か塗ったらどうだ、まさか女友達ではなく彼からそう言われるとは思っておらず心臓がコトリと動いた。友達の多い彼は休み時間も誰かと一緒なので声をかけられず、こうしておしゃべりを楽しめるのはどうしても放課後の部活の時間に限られる。

 姿自体は見かけるのだが、中々それが会話の糸口に繋がらない。「ルフィ!カレーパンはおれのものだ!」と野生の猿のような動きをする彼の友人と購買部まで疾走していたり、「移動教室なのにゾロのやつがいねェぞ!」と校舎中を大捜索していたり、ロビンは遠慮してしまいどうしてもすれ違ってしまう。

 だから、こうして約束せずとも必ず彼と会える場所が校内に存在しているのは助かる。試験が近づいているので普段の美術部の部員も姿がなく、誰にも邪魔されることなくウソップを独り占めできる。そう思考が傾いた瞬間、彼女の顔色はまるで熟れたリンゴのように真っ赤になった。

「おれの話聞いてるか?それとも何か塗っちゃいけない理由があるとか……」

「いいえ、別に理由はないわ。塗っても構わないんだけど」

「よし!じゃあおれさまに任せとけ~!」

 いつもの軽い調子で彼の制服のポケットからでてきた小瓶は、よくデパートのコスメ売り場やドラッグストアの一角に鎮座しているマニキュアであった。ネイル、と今は言うのかしら。ロビンは興味深げにそれらを見遣る。

 父親の古着をリメイクしたり、掘り出し物はないかとフリマに行ったり、彼はなにかとお洒落だ。本当は時間かけたいんだが、今日はお試しなと告げるとウソップは集中モードに突入した。芸術家である彼が一旦真剣になると誰も止められない。

 ロビンはいささか緊張したまま指をだし、彼の分厚く少し日焼けした手のひらに優しく受け止められた。すぐさま指先に移動した視線が、しげしげとどんな色合いにしようか閃くのを待っている。

「こう見るとロビンの指先は細いなァ~ちゃんと食べてるのか?」

「もちろん」

「好きな色あるか?それともおれがロビンに似合うと思った色使っていい?」

「任せるわ」

 声と指先が震えないようにずいぶんその台詞は冷たく響いたかもしれない。けれども、彼は気にすることなく彼女の爪を素晴らしいものにしようと気合いをいれた。蓋をはずし、刷毛でちょっとずつ塗っていく。

 本当はもっと丁寧にやりたいが、そうすると今夜落とされるのが惜しくなってしまう。校則上、色のついたネイルは禁止されているので本当にこの時間だけの、期限付きのネイルだった。

 それでも、ロビンは胸がどぎまぎして仕方なかった。絵のモデルをした時、彼の真剣なまなざしに晒されて指先が張りつめていたが、今回はまた理由が違う。ウソップが視線を落としているのは愛用のスケッチブックではなく、自分の指だ。

(スケッチブックばかり見ているときはちょっと面白くなかったけど……)

 単に彼の視界を埋め尽くしているのが自分ではなく白紙だから、なんて子どもっぽいのだろうとロビンは心の中でくすっと笑ってしまう。今は自分の両手が彼の視界いっぱいに広がっている。それだけでもう満足だった。

 マニキュアを塗る時間はものの数分で終わりを告げてしまい、手先の器用なウソップは最後に息を吹きかけて乾かすと厚い唇を緩めた。

「できた。やっぱりロビンには薄紫が合うと思ってたんだ」

「ずいぶん慣れているのね?他の子にもしてあげるの?」

「あ、ナミとか時々頼まれることもあるけど」

 今度たっぷり時間あったらロビンの爪にお花、咲かせような。他の女子生徒の名前が挙がるとわかりやすく自分の胸の奥にあるわだかまりのようなものが膨らむ。なのに、ウソップはそれを一瞬で晴らしてしまった。短時間で美しい色合いを爪に施せるのと同じくらい、ロビンには不思議に思えた。まるで魔法使いみたいだ。

 今度こそ心の中ではなく、現実で笑いがもれた。お花を咲かせる。そのワードチョイスが可愛らしくて、是非次はそれでお願いするわとロビンは約束した。らしくもなくウソップと「指きりげんまん」をして。

 


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