ウソロビ学パロ1
※スレの設定借りている
※学園っぽいがそうでもない
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おう、折角だから何か食っていけよ。サンジのその男に向けられたとはおもえない優しい言葉にウソップはホイホイ釣られてしまった。何せ画材の値段がますます上がる世知辛い世の中、まだ中旬だというのにお小遣いの残りが危うい。
彼が放課後バイトをしているバラティエは何を注文してもすべてが美味い(あの金髪に言わせれば「クソ当然」)ので、ウソップはメニューをペラペラ捲りながらどれを選ぼうか迷っていた。旬の魚を焼いた御膳は流石に育ち盛りとはいえ夕飯が入らなくなるだろうか。
この後、たっぷりニコ・ロビンとの関係を追及されるとも知らずに彼は贅沢な悩みに時間をかけていた。まだ家族連れや仕事帰りの会社員が来る時間帯でもないので四人掛けのテーブル席を贅沢にウソップは使っていた。
その歩道に面した窓越しに誰かがこつ、こつ、と丸めた指でノックするような音が聞こえた。
「あれ?……ロビン?」
(そっち行ってもいい?)
ジェスチャーでそう告げられ、考えるまでもなく頷いていた。学校帰りと思わしき制服姿のロビンは珍し気にレストランの中へ入ってくると、辺りを見回した。いつも誰か友達と一緒のウソップが一人というのは中々見られない光景で、しいていうなら美術室に限定されていた。
ロビンはいまだメニューと睨めっこしているウソップに口元を緩め、彼の正面の席に腰をおろした途端顔を曇らせた。よく考えてみれば、彼が一人だと思うのは早計だった。誰かと約束をして、その相手を待っているのが一番ありそうな線だ。
「ごめんなさい。迷惑だったかしら?もし誰かと約束しているなら……」
「いやいや、サンジのバイト先なんだここ。あいつが仕事落ち着いたら多分来るから、それまで暇してるんだ」
「なら、よかった」
どうせあいつの奢りだからよ、ロビンも好きな物注文しろよ。ウソップにもうひとつあるメニューを手渡され、彼女も美味しそうな料理の数々に目を瞬かせた。通りがかることはあったが、自分で入ろうとする発想すらなかった。
無難なケーキセットにするとウソップに伝えれば、すぐさま店員を呼んで口頭で注文を伝えた。どうやらウソップの友人であるサンジという人物は忙しいらしく、厨房にかかりきりのようだ。
オーナーと思わしき嗄れた怒声も聞こえているので、だいぶしごかれているのだろう。注文した品が届くまでの間、おしゃべりなウソップの饒舌さが嘘のように控えめだった。
「……何をしているの?」
「あ、悪い。こういうとこくるとナプキンとかで何か作りたくなるんだよなー。ほら、お花」
「あら素敵」
本当に何も考えることなく、まるで魔法や手品のようにするすると紙製の一輪の花ができあがった。片手間に仕上げたとは思えないほど精巧なつくりで、花びらの一枚一枚もくっきりと分かれている。それを差し出されたロビンは嬉しそうに受け取った。
友人とくると子どもっぽいことするな、なんて呆れられることもある。なのに彼女はウソップのてのひらに視線を落とし、優し気に目を細めて続きを待っている。その眼差しがどこかくすぐったく、ウソップは気を紛らわせるように長い鼻の下を掻いた。
「おう。待たせたな……てめェ!抜け駆けしたな!」
「ギャー!サンジくん誤解だー!」
どこか甘めいたウソップとロビンのひとときは、厨房から飛び出してきた同級生のせいで数分と持たなかった。