ウエディングならケーキだけ欲しい

ウエディングならケーキだけ欲しい

フルバは良いぞおじさん「フルバは良いぞ」


ギャグ

キャラ崩壊

クロスギルドが比較的仲良しな印象




扉を開けるとそこは結婚式場だった。


「あっ、クロ」 


嘘である。


嘘だが目の前の光景は本物だった。

クロコダイルが自分の部屋に戻るとそこには真っ白なベルラインのウェディングドレスに身を包んでなにやら作業をするキャメルがいた。

細く絞られた腰からフワリと鐘型に広がるレースに決め細やかな花が刺繍された透けたロングスリーブが美しく見る人が見れば感嘆の声をあげただろうが弟の背後には宇宙が広がるばかりだ。

「ちょうど良かった」

「なにがだ?! なんのつもりだ!」

「クロを待ってる間暇だったからね。依頼主から頼まれていた服の調整をしてたんだよ。体格が同じだとこういう時便利だね」

「アニキは男だろ」

「依頼主は男だからね」

「⋯⋯⋯⋯なんだそれは」

「クロ、私には守秘義務というものがあってね。クロでもこればかりは喋れな」

「興味ねェんだよ今すぐ着替えろ」

む!という顔をしてキャメルはドレスの裾を少し持ち上げる。

「クロに興味を持たれないなんて⋯⋯ダメなのかなこの服。キレイじゃない? ドレス頼まれたのは確かに初めてだったけど自信あるよ今送った写真は依頼人から反応良かったし」

「送ったのか?!」

「最終工程入る前に着たらどんな感じか確認したいって言ってたからね。とりあえず後ろだけ撮って見てもらったけどもうちょっとバッスルを」

「前を送った瞬間兄弟の縁を切ってやるからなっ⋯⋯! 向こうにも削除しろと伝えろ」

「秘密組織みたい」

「ふざけたこと抜かしてんじゃねェ」

クロコダイルが部屋に入ってから数分も経っていないというのにどっと疲れが出ていた。

──こんなもの誰かに見られたらたまったものじゃない。アニキだけでなく間違いなく巻き添えくってこっちまで変態扱いだ。

「じゃあクロが代わりに見てくれる? ブイネックでロングスリーブの組合せなんだけど希望された鈴蘭のディテールどうかな。変なところない?」

早く脱げ。と言いたいのをぐっとこらえて答える。

「ああ分かった分かった

ガチャ

キレイだから

「⋯⋯」

バタン

とっとと着替⋯⋯⋯⋯」

「そういえば後で戦おうねって約束してたんだった。今の鷹の目だよね?」

「ああそうだな鷹の目だな! 良いから脱げ! 今すぐ!!」

「どうしたのそんな慌てて」

「追いかけて誤解解くのを我慢してアニキに時間割いてやってるのが理解できねェようだな? 良いから

ガチャ

脱いで

「うわ⋯⋯」

バタン

なんなんだ今日は!!!!」

「わあびっくりした」

「誰だあいつ呼んだのは!」

「そういえばこの書類置きっぱなしだったけど大事な物じゃない?」

「ああおれだよ⋯⋯カバジに頼んだのおれだ⋯⋯」

「なにか良く状況が飲み込めないけどクロ忙しい? またにしようか」

「わざと言ってるのか? 脱ぐだけの事もできないのか?」

「クロは知らないだろうけどこういうのって馴れてないと脱ぎにくいんだよね。ブライダルインナーも着てるし」

「インナー」

「ウェディングドレスの下着の事でね。今着てるのは一回練習で作ったやつだから依頼人は着ないよ安心してそこら辺本格的にやりたいって言われてガーターとかちょっと気合いいれたら」

「下着」

「聞いてる?」

情報の洪水に頭が痛くなるがなんとか耐えた。クロコダイルにはここを片付けても今から大バカは一人だけだとキチンと説明する使命があるのだ。耐えねば社会的な死が待っている。

「手伝うから⋯⋯早く脱げ」

「着る時はショコラに補助してもらったからね助かるよ後ろに回ってもらって良い?」

「ああ⋯⋯」

「まず後ろにリボンあるからそれを外してから留め具を外してね」

「これか」

リボンを外したその瞬間三度目の扉の開閉音と共にバギーが入ってきた時クロコダイルは冷静だった。その証拠に

『なんでとっとと施錠しなかったんだ』

と反省できたし直ぐ様扉を閉めたバギーを追いかける事ができた。的確で冷静な判断である。

「てめェは今ここで殺す」

「変態が! 兄貴にドレス着せる変態が追ってくる!!! いや違う! 大丈夫だおれ黙ってるから安心してくれ!」

「殺す」


ちなみにクロコダイルを待ってる間アルビダも部屋に寄ったので最早何もかも手遅れなのを知るのはキャメルのみだった。


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